【米大統領選】トランプ躍進の影に”プロレス経験”あり?|プチ鹿島コラム

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トランプ躍進の鍵は”プロレス手法”だった
トランプ躍進の鍵は”プロレス手法”だった

 ドナルド・トランプについて、さまざまな切り口が出てきている。

『テレビ熟知 トランプショー』という記事は、朝日新聞(3月7日)。トランプ氏が過去に出演したテレビ番組でのパフォーマンスを《過激に聞こえるが、実際は、少なからぬ人々が抱く「本音」をとらえた言葉だ。》と分析し、過去のこの活動も紹介する。

《選挙活動に重なる姿をテレビで見せたことは他にもある。07年にプロレス団体WWEの「億万長者の戦い」に参加した時だ。》

 朝日新聞は、プロレスに詳しいという「マサチューセッツ工科大のサム・フォード研究員」にコメントさせている。フォード氏は今年2月のサウスカロライナ州での討論会を見てプロレスそのままだと思ったとして、

《ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事への攻撃を重ねたトランプ氏は、会場の共和党支持者からブーイングを受けても表情を変えずに聴衆に非難を返す。「ときに観客すら悪役に位置づける手法です。メディアも悪役にして、かつ利用する手法もプロレスと共通している」》

 この記事の5日前、私も「荒川強啓デイ・キャッチ!」(TBSラジオ)で、「パフォーマーとしてのトランプ」について取り上げた。まさにスーパーチューズデーの結果が判明した日の午後だ。あのパフォーマンスは2007年のWWE「レッスルマニア」での経験も大きいのではないか? という見立て。

 トランプ氏は、世界最大のプロレス団体(WWE)のオーナーであるビンス・マクマホン氏と「負けたほうが頭を剃る」という対決をした。互いに代理のレスラーを立て戦い、トランプ氏は勝った。このときのビンス・マクマホンの顔芸やら舌戦の様子が現在のトランプのパフォーマンスにも影響を与えているようにみえるのだ。

 プロレスライターでアメリカンプロレスに詳しい斎藤文彦さんに尋ねると、顔芸や言動だけではなくビンスの手法にも影響を受けているのでは? という。WWEの特徴はわざわざタブーを破ること。たとえば強者が弱者を殴り、権力者はパワハラをし放題。現実ではゆるされないことが刺激的なエンターテインメントのWWEのリングではゆるされる。

 ところが、いまトランプは現実社会にその方法論を持ち込んでいる。タブー破りに「思想」をかぶせたら「主張」になるというマジックである。そこに舌戦、煽り、顔芸。ハレンチさの中に仕掛けられているある種の本音。斎藤文彦さんはそのように解説してくださった。日本でもっともアメリカンプロレスに詳しい方の裏付けがとれて面白かった。

 私は今回のトランプ現象は「観客論」でもあると思う。大統領選ですら刺激的なエンタメとして見物するムードをつくりあげることに成功したら、そりゃ主役をさらうのはトランプである。ちなみにあの2007年のレッスルマニア。ビンスが頭を剃りあげてトランプは勝ったが、最後の最後に味方だと思っていたストーンコールドにスタナーを食らい、観客は喝采で終わっている。

 大統領選もレッスルマニアも、長い時間をかけて頂上へ向かう。サプライズはまだまだある気がしてならない。

著者プロフィール

putikashima

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)など多数。

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