現役女子アナウンサーの「成人向けビデオ出演強要」の告白が波紋
若い女性たちが成人男性向けビデオへの出演を強制され、奴隷のような扱いで人権被害に遭っている──。3月初旬に認定NPO法人「ヒューマンライツ・ナウ」が発表した報告書が物議を醸し続けている。
■現役女優たちは「実感から遠い」と否定的
報告書によれば、モデルやアイドルのスカウトを受けた女性たちが成人向けビデオに出演させられる被害が増加。違約金などで脅されて過激な性行為を強制され、心身ともに深刻なダメージを負ったり、自殺に追い込まれた事例もあるという。
だが、これに成人向けビデオ業界から反発意見が発生。当事者である現役の女優たちから「無理やり出演させられている人なんて見たことない」「今の業界はとてもクリーン」といった声が上がった。
人気女優・かさいあみさん(28)も弁護士ドットコムニュースのインタビューで「(報告書は)私の実感からかなり遠い」「断るタイミングはいくらでもある」と説明。事前に知らされていないプレイを強制されることはないとしている。また、人気が落ちると過激なプレイを求められると報告書に記されてことについても「やるかやらないかは自分次第です」と断言した。
だが、どうしても世間的にはダーティな印象があるのも事実。その代表例として報告書でも取り上げられているのが、2004年に発生した「バッキー事件」だ。
「暴行系ビデオを中心に制作していた『バッキービジュアルプランニング』が被害女優を意識朦朧にさせて撮影し、全治4ヵ月の重傷を負わせたという恐るべき事件でした。過去にも複数の女優に対して事前の説明なく『男優が集団で暴行し、女優が撮影中止を懇願しても水中に沈める』といった過激な撮影をしていたと判明し、代表や監督らが逮捕された」(業界関係者)
しかし、これは10年以上も前の事件。似たような事件が続発していたという話はない。であれば、当事者たちの「今の成人向けビデオ業界はクリーン」という主張が揺らぐことはない。
だが、ここにきて「被害に遭った」という女性がメディアに現れたことで、さらなる波紋が広がっている。
■過去に”出演”の女子アナが被害告白
被害を訴えているのはフリーアナウンサーの松本圭世(26)。テレビ愛知の契約アナウンサーとして活動していた2014年、過去に成人向けビデオに出演していたことが発覚して騒動に。その作品は「素人モノ」と呼ばれるものだったが、松本は服を着たままで実際の行為はしていなかった。
それでもアナウンサーとしては致命的で直後に担当番組から姿を消し、契約満了とともに退社。現在はフリーとして復活を目指しているが、たった数分の映像で人生の歯車が狂ってしまった。
退社後、松本は『東京スポーツ』のインタビューで「騙された」と訴えており、大学生時代に「男性の悩みを聞いてください」と街で声を掛けられたという。ギャラは5000円で書類に名前を書かされたが、何をやるのかは事前に知らされず。大きなワゴン車に案内されるとスタッフ数人が待ち構えており、おかしいと思いながらも逃げられない雰囲気になっていたという。ギャラを受け取らずに帰ったそうだが、映像は使われてしまった。
さらに松本は3月3日深夜に放送されたバラエティー番組『ネクストブレイク』(日本テレビ系)で被害を告白。これが反響を呼んで「やっぱり被害はある」という論調が強まっているのだ。松本は自身のTwitterでも「わたしはAVを批判したいわけじゃないんだよ」と前置きしつつ「正攻法じゃないやり方で誰かが傷つくのは違うんじゃないかな」と思いを綴っている。
たとえ一部であっても被害があるのなら業界は重く受け止めなければいけないが、この論調が高まっていけば成人向けビデオが迫真の内容であればあるほど「本当に騙して暴行しているのでは」と疑われることになりそうだ。
成人向けビデオの人気監督・ヘンリー塚本氏は過激な作風で知られるが、必ず作品の最後に女優・男優が全員でダンスする謎のシーンが挿入される。これは作中でハードな展開が繰り広げられようとも「みんな本当は仲がいいんだよ」とアピールする意図があるといわれている。人権団体の批判に端を発したこの騒動、まだまだ決着を見そうにない。
- 佐藤勇馬(さとうゆうま)
個人ニュースサイト運営中の2004年ごろに商業誌にライターとしてスカウトされて以来、ネットや携帯電話の問題を中心に芸能、事件、サブカル、マンガ、プロレス、カルト宗教など幅広い分野で記事を執筆中。著書に「ケータイ廃人」(データハウス)「新潟あるある」(TOブックス)など多数