「2人出産が仕事より価値」発言がなぜ炎上しているのか分からない|やまもといちろうコラム
山本一郎(やまもといちろう)です。そんな酷い花粉症というわけでもないんですが、なぜか目が痒いです。
ところで、先日来不穏当な発言のように一部切り取られて報じられ炎上してしまう事件は相次いでますが、いわゆるコンテクストを無視して「普通に聞いたらそういう意味じゃなさそう」なのに総攻撃を受けるケースというのは、見ていて物悲しいものを感じます。
というのも、問題になって報じられている内容を見ると「ああ、そういう立場の人が、そういうことを言っちゃいかんだろ。それが本音だとしても心にしまっとけ正直者が」となるわけですが、ネットで騒ぎになって出ている全文とか読むと、180度違う話を言ってたりするんですよね。
今回はまさにその典型であって、なんでこんな穏当かつ無難な発言が炎上しているのか、またその炎上のさせ方を巡って校長解雇とかいう話になっているのか良く分からんわけです。報道のときはみんなびっくりしたけど、中身をちゃんと読めば違う印象になるものであれば、むしろ教育委員会とかはこの校長を守らなければいけない立場だと思うんですけれども、どうなんでしょうか。
「2人出産が仕事より価値」発言全文 学校HPに一時掲載 校長「誤解招かないよう掲載」
大阪市立茨田北中学校(鶴見区)で、寺井寿男校長(61)は産経新聞の取材に「市教委の対応や報道を受け、一部だけを切り取られて誤解を招かないよう掲載した」と言っているようですが、まあ確かに一部だけを切り取られて誤解以外の何者でもないように読めます。
そして、その顛末はこれです。
問題視した市の教育委員会とありますが、具体的に、どの委員がどういう問題視の仕方をしたのかと思うわけなんです。全文は公式の学校HPから削除されているので、こちらから読んでいただければと。
大阪の中学校長「女性にとって最も大切なことは子供を2人以上産むこと」(発言詳報)
「大炎上」校長発言に「どこが悪いの?」と擁護論も 「キャリアより出産」めぐり賛否
うーん、何度読んでも「仰るとおりです」としか思えない内容です。すいません、いまこれからでも、しっかり勉強します。
■余裕が消えた日本社会
それにしても、保育園の「日本死ね」問題もそうですが、なんかこう、一度起きていることを受け止めて、考えてから全体の判断を下す、というような「余裕」「遊び」がなくなって、目に入ったフレーズだけでみんな一斉に脊髄反射してしまうのはご時勢なんですかね。よく分かりませんが。
うちの場合は子供が3人いるので、幼稚園と義理両親の協力とお手伝いさんの雇用という力技で乗り切っている途中ですが、それだってその根幹には夫婦で時間の限り協力し合う、優先順位を家族との時間の過ごし方も含めた幸せを追求する、という大前提があって初めてできることだと思うんですよね。
さらには、高等教育無償化の話があってみたり、少子化対策があったり、その裏側では地域経済の崩壊から高齢者激増で社会保障費が大変なことになるという、これから貧しくなっていく日本への対処が根幹なわけですよ。
よく目の前に突然問題が発生して、ヒステリー起こす人がいるじゃないですか。あるいは、ゲームがうまくいかなくなって、いきなりコントローラー投げる人。社会全体が、そういう感じなんじゃないですかね。
ヤケになってもしょうがないんで、目の前の問題をしっかりと見据えて、一歩一歩解決していくしか方法はないのだ、と思いますがどうでしょうか。
著者プロフィール
ブロガー/個人投資家
やまもといちろう
慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数
公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)