【永田町炎上】”選挙マニア”に成り果てた田母神閣下のバカさ加減

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Photo by Luke,Ma
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【朝倉秀雄の永田町炎上】

 世の中には趣味か道楽か知らないが「選挙マニア」と呼ばれる奇態な人種がいる。およそ当選する見込みがないのに、とにかく片っ端から選挙に立候補して落選。世間の物笑いになり、供託金を没収されて大損している連中だ。まあ、一種のパラノイア(偏執狂)の類であろう。

 そんな「閣下」などと呼ばれ、「極右」の連中が主催する講演会などに引っ張りだこなのをよいことに「俺は世間から高く評価されている」といい気になり、分もわきまえずに立候補した挙句、約61万票しか取れず見事に落選。その際、田母神俊雄と一緒に逮捕された選対本部の事務局長の島本某が「選挙を頑張ってる人たちにお金を払いたい」と主張し、運動員の貢献度に応じた現金の配布リストを作成。田母神の了解の下に運動員5名に対し280万円を配り、島本某自身も200万円を懐に入れたという「運動員買収罪」である。

■「浮世離れ」した公職選挙法の規定

 だが、およそ選挙であれなんであれ、労働力やサービスを提供すれば、それに見合った対価を払うのは当たり前の話だ。「選挙はボランティアが原則だ」というのは浮世離れした綺麗事に過ぎない。

 だいいち世の中に「タダ働き」しようなどという酔狂な人間は滅多にいない。にもかかわらず、公職選挙法はかなり現実離れした法律で、選挙従事者への報酬の支払いは「労務者(ポスター貼りや葉書の宛名書きなど)」「事務員」「車上等運動員(いわゆる『うぐいす嬢』)」「手話通話者」にしか認めていない。実は筆者が仕えた8名の議員のうち2名がアルバイトの学生運動員に報酬を支払い逮捕。政治家人生を絶たれている。

 学生たちだって選挙の手伝いで学費や生活費を稼ぐつもりなのだから、それを「タダでやれ」というのは、いかにも酷というものだろう。

■ほとぼりが冷めた頃に払うのが常識?

 とはいっても、現に法律が存在する以上、候補者や選対幹部には「工夫」がいる。選挙に手慣れた者なら半年くらい経ち、ほとぼりが冷めた頃を見計らってそっと渡すのが常套手段だ。その意味では、選挙期間中や直後に支払ったという事務局長の島本某や田母神は迂闊というか、いかにもマヌケ過ぎよう。

 もっとも田母神は、東京地検の事情聴取に対し、いっぱしの政治家気取りで「私は指示も承認もしておらず、違法との認識はなかった」などと自らの関与は否定していたようだが、実行行為者の島本が「田母神から事前に了承を得て現金を配った」とゲロしてしまっているのだから、そんな言い訳は通用しない。

 笑えるのは、その程度の分別しか持ち合わせていない田母神が同年の12月の衆議院総選挙に東京12区から立候補し、いわゆる「小沢ガールズ」の一人にして小沢一郎の政策秘書の小原某と茨城県水戸での「お泊まりデート」を週刊誌にスッパ抜かれた「スキャンダル女王」の青木愛にまで競り負け、39233票しか取れず(青木は40067票)、4名中最下位で「大恥」をかいたことだろう。それでも、もし逮捕されなければ、今夏の参議院選にも立候補するつもりだったというのだから畏れ入る。

 そんな田母神だが、平成19年3月、第一次安倍内閣で航空自衛隊の制服組トップの第29代航空幕僚長に抜擢されたが、一見、苦み走ったその顔の造作からいかにも日本の安全保障にとって頼りになる人物のようにも思えるが、よく観察すると、実に滑稽な雰囲気の「変なオジサン」にしか見えない。

 稲田朋美自民党政調会長は国会審議で「憲法学者の7割が自衛隊を違憲と考えている」として安倍総理に憲法改正を迫ったが、そんな微妙な位置づけにある自衛隊の最高幹部は常に社会的立場をよく弁え、節度ある言動を採らなければならないはずなのだが、田母神は日頃から「東京裁判は誤りであった」とか「南京大虐殺があったと思いこまされている」とか「最初から核武装しないのは、バカげている」などといった過激な発言が多く、同僚の自衛官たちは「いつか失敗するのではないか」と案じていたらしい。

 案の定、現職の航空幕僚長の身でありながら平成20年10月31日にはアパグループなる民間企業が募集した『真の近現代史観懸賞論文』に「日本は侵略国家であったのか」と題する論文を応募。入選はしたものの「政府の公式見解と違う」と問題になり、幕僚長を更迭され、不本意な退官を強いられている。

 度重なる選挙への挑戦は「腹いせ」に「政治家になって政府に一泡ふかせてやろう」との報復のようにも思えるが、捜査機関のお世話になるようでは単に人騒がせなだけであろう。

■日本の安全保障は大丈夫なのか?

 何より危惧すべきは「無法国家」北朝鮮による核実験やミサイル発射、中国による力による現状変更などますます緊迫する安全保障環境を考えると、田母神のような過激化な思想を持ち、選挙法違反で捕まるような愚かな人物を最高幹部にするようなバカげた体質の自衛隊で果たして国土や国民が守れるのかということだ。

 いずれにせよ「原爆投下しょうがない」発言で更迭に追い込まれる久間章生や「政界渡り鳥」と言われるくらい要領がよく、「いざ有事」ともなれば、トンズラしてしまいそうな小池百合子などをよりにもよって防衛大臣にするなど、とにかくこの国の防衛の高級指揮官人事はどうかしている。

文・朝倉秀雄(あさくらひでお)
※ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中。
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