老人は安楽死するのがいい?小林よしのりの過激主張に賛否渦巻く

デイリーニュースオンライン

単行本「修身論」より
単行本「修身論」より

 漫画家で評論家の小林よしのり氏(62)が5月15日、自身の公式ブログで「下流老人の解決方法」と題した記事を公開した。同記事のなかで安楽死の規制緩和について「若者の迷惑にしかならない老人は安楽死するのが一番いい」などと主張しており、読者を中心に物議をかもしている。

■真っ先に規制緩和すべきは安楽死?

 高齢者の4人に一人、900万人が貧困に落ちている日本社会で、生活保護並みの収入で生活する"下流老人"。そんな下流老人について、小林氏が"安楽死のススメ"とも読み取れそうな持論を展開した。

 小林氏はまず「高齢者だけ生活保護の受給者が伸びている現状は異常」「国民の1900万世帯が貯蓄0になっていて、自分で中流と思っている人も、実はすでに下流に落ちている」と述べて、年金制度も医療制度も破綻しかけて「自分で稼がねば生きる資格がないという実態のようだ」と分析。日本の経済社会の低迷ぶりに警鐘を鳴らした。

 その上で今後、貧困にあえぐ下流老人、孤独死が待つ老人が増えると予想して、「真っ先に規制緩和すべきは安楽死」「国民としての役割を果たし終えて、若者の迷惑にしかならない老人は安楽死するのが一番いい」と主張している。

 そんな小林氏の過激にすら思える主張に対し、巷では反対意見が目立つ。一部では「本当に酷すぎて言葉がない」「固有の生を生きる個人というものにいささかも意識が向かわず、老人をただ老いた人と見る。かつ自分以外の基本的人権は簡単に打ち捨てても構わないと考えているようだ」「安楽死は病気の苦痛から自らや家族が望む死だ。社会や他人が『迷惑』と執行するのは殺処分と言う方が相応しい」と強く非難する声も少なくない。

 日本には現在、苦痛を伴う末期患者の延命治療などをやめる安楽死、人間の尊厳をもったまま命を絶つ尊厳死の二つに関する法律が存在しない。とくに他人が積極的に関与して行なわれる安楽死は法的に認められておらず、1991年に東海大学で末期がんの患者を安楽死させた担当内科医が殺人罪で起訴されたケースもある。

 一方、海外では2014年11月に末期の脳腫瘍を患ったアメリカ人女性のブリタニー・メイナードさん(29)が、医師の薬で尊厳死を遂げた。ブリタニーさんは亡くなる前に、安楽死・尊厳死を合法とする「死ぬ権利」法が定められているオレゴン州に移り住み、安楽死を選択することをインターネット動画で発表。日本国内でも賛否を巻き起こした。

「小林氏が今回強い反発を受けている要因の一つは、高齢者の見方。"労働力"の視点から見れば小林氏の理屈は合っているかもしれませんが、人間性から見れば倫理感に欠けると読者に判断されたのではないでしょうか。いわば『血も涙もないアイデアだ』と思われたのでしょう」(報道関係者)

 近年は漫画「ゴーマニズム宣言」シリーズなどで数々の社会問題に切り込んできた小林氏。今回の安楽死問題では、世間を納得させる回答を示すことができるのだろうか。

文・橘カイト(たちばな・かいと)
※1979年島根県生まれ。編集プロダクションを経て、フリーに。週刊誌などで芸能関係の記事を執筆。また、民俗学などにも精通し、日本のタブーにも数多く取材。主な著書に『真相!禁忌都市伝説』(ミリオン出版)ほか多数。
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