中国、伊勢志摩サミットを「時代遅れの金持ちクラブ」と皮肉る|やまもといちろうコラム

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伊勢志摩サミットは時代遅れの金持ちクラブ!?(※写真はイメージです)
伊勢志摩サミットは時代遅れの金持ちクラブ!?(※写真はイメージです)

 山本一郎(やまもといちろう)です。時代遅れで古風な名前の男です。

 ところで、中国が参加していないサミットをDISって憂さを晴らすという外交的には定番のほのぼのニュースを提供しており、ほっこりしました。

中国、サミットに不快感=「時代遅れの金持ちクラブ」

 中国国営の新華社通信が出した論説ですので、日本における大本営発表よりもはるかに政治的な意味合いの強いメッセージが発射されたといっても過言ではないんですけれども、心の中で思ってて別に言わんでも良いことを対外的に言ってしまうのは何か別の思惑でもあるのかと感じてしまうんですよね。

 平たい話が、中国自身もサミットに入って自国の権益の主張も含めた、利害調整の枠組みに入れるべきだという話なんでしょう。ただ、過去にオブザーバー参加があった程度、財務相会議や安全保障関連の対話の座組みに入ることはあっても「時代遅れの金持ちクラブ」には、中国が入れない事情は別にあるのではないかなと思うわけであります。

 おりしも、ブルームバーグが中国でのAAA級という、もっとも信頼のおけるはずの債券をキャッシュフローで確認してみたところ、57%がジャンク級の投資不適格債券であったという結構衝撃的な報道を行ったばかりです。もはや、中国経済は充分に大きくなり、それに対する中国政府の自信が深まる一方で、公共投資や海外へのインフラ事業への傾注からバランスシートの「質」重視に転換する必要があるという、日本のバブル経済がきた道を中国経済が10倍の規模で辿っているとするならば、この時事通信が懸念した「中国経済の減衰」も肌身で危機感を覚える次第であります。

ブルームバーグは述べ、中国の最高の定格社債と同様の特性を持つジャンク債の57パーセント

■足元を見られず裁く方法はあるのか

 さらにややこしいことに、欧州議会は中国に対して「市場経済」国であるという認識を否定する決議まで出されております。それも、圧倒的な反対という、日本からみれば、欧州経済はその成長性維持のため、中国市場の成長に随分世話になった部分もあるんじゃないかとか、市場経済という意味では人治的ではあるけど充分に中国も弱肉強食の世界じゃないかという議論もまたあるわけですが、ともかく市場経済国ではないぞということだそうです。

どこまで中国の市場経済から?

 経済が急速に成長して踊り場に差し掛かると、周辺の国が一気に「バブル潰し」に動くのは、どうやら昔も今も変わらないようです。危機意識の高まりや、不況へ転落する前に経済をデカップリングして、少しでも波を被るのを避けたいという気持ちが高まってしまうのかもしれません。

 そういう少しずつ避けられていく動きに気づかないのは当事者本人でありまして、関税引き上げなど締め付けもあって一時期ほどではないものの、爆買いと呼ばれる現象からリゾート地の買占めまで、言われてみればかつて日本経済も絶好調のころ、海外各所でやらかした記憶が鮮明に残るやらかしを思い出すわけであります。

中国が観光施設“爆買い” 進むチャイナタウン化 住民に危機感「中国人の街ができてしまう」

 ある種のアレルギー反応もありつつ、これからも旺盛な訪日需要があると見越して、政府は民泊解禁に舵を切っているわけですけど、このあたり、足元をすくわれないようにうまく裁くには、どういう方法が日本に残されているのだろうかと、じっと手を見る日々なのであります。

 時代遅れでも、生き残っていかなければなりませんからね。いろいろ考えて日々を暮らしていきましょう。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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