男性に自由を奪われた「籠の鳥」~チャイコフスキー『白鳥の湖』と森鴎外『雁』 (1/2ページ)

デイリーニュースオンライン

『マシュー・ボーンの『白鳥の湖』2010年版』(ワーナーミュージック・ジャパン)
『マシュー・ボーンの『白鳥の湖』2010年版』(ワーナーミュージック・ジャパン)

 皆さん、バレエはお好きですか? バレエといえばフワフワのチュチュを履いた美女と、王子様のような美男が人間離れした動きで踊るところを想像する人もいるかもしれません。チケットが高いので舞台で見る人はあまりいないかもしれませんが、なんとなくキラキラしたイメージがあると思います。実際にライヴで見てみると、演出にもよりますが男女ともに凄い筋肉で意外にエネルギッシュだったりもしつつ、それでもロマンチックな夢の世界ではあります。今日はチャイコフスキーの『白鳥の湖』にどういうわけだか森鷗外をからめつつ、バレエについてちょっとした小咄をしようと思います。

※当記事は「本音情報サイト-messy /メッシー」の許諾を得て、同サイトから転載しております。

バレエの功罪

 バレエは、性差別的なところが鼻につくと言われることがあります。愛に殉じる可憐な女性の話が多く、とても異性愛中心的です。女性キャラクターは男性の勝手な理想や欲望を体現するような存在で、清らかで純粋な美女か、ちょっと頭の良い場合は悪巧みに熱心なファム・ファタル(悪女)ばかり。多様性が無く、既存のジェンダーロールを強化するようなステレオタイプにはまっているとしばしば指摘されています。バレエはもともと女性が足を出して踊るかなり色っぽいダンスなので、純情美女でもセクシー悪女でも、男性客に媚びるようなお色気アピールが組み込まれやすいとは言えるでしょう。

 しかしながら、古くさくて性差別的だとそっぽを向いてしまうのは早計です。物語はともかくダンスを見ているだけで美しい演目はたくさんあります。ヒロインも皆が単純なわけではなく、プロコフィエフの『ロミオとジュリエット』に出てくるジュリエットなどは意志の強い女性として演出されることも多いです。革新的な試みもあり、古典の再解釈が得意な振付家、マシュー・ボーンの舞台はとてもオススメです。ボーンは1995年に白鳥を全員男性が踊る『白鳥の湖』でステレオタイプな白鳥像をひっくり返してセンセーションを巻き起こし、その後も『シンデレラ』や『眠れる森の美女』など、古くさいお姫様ものと思われるような演目をあっと驚く新演出で上演しています。今年の夏にはビゼーの『カルメン』を翻案した『ザ・カーマン』の映像が映画館で上映されるそうですので、興味がある方は見てみてください。

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