ネット著名人は知名度不足?荻上チキ、津田大介らの揺れる”下半身事情”|やまもといちろうコラム
山本一郎(やまもといちろう)です。私もトランクスを脱ぐと下半身が揺れます。
ところで、昨今は論壇系の人たちで女性問題を起こす話が立て続けに出ていて、興味津々と言った状態であります。私自身は何事も無い平和主義者ですので、自家発電して漏洩することもなく枯れ木のように日々を風に吹かれて過ごしておりますが、身の回りのネット系でちらほら名前を目にする人や、興味を持って書き物を読んだ著者がやらかすケースを見ると、さすがにちょっとビビります。
一番「えっ」と思ったのは、荻上チキさん(34)の不倫問題が『週刊文春』(文藝春秋)に暴露され、生々しいLINEでの男女の会話まで晒されていたため、なんだろうと思ったわけです。もちろん、ベッキー騒動のようになんか不自然な漏洩の仕方をしたというよりは、荻上さんに捨てられた女性側が関係者を通じて持ち込んだんだろうなと思われるネタだったため、その望まれぬ禁じられた恋の結論がこんなところで活字となって昇華したと思うと興奮します。
荻上さんにとって不幸だったのは、彼自身や周辺が思っているほど、荻上さんの知名度が高くなかったことが割れてしまったことです。これが乙武洋匡さん(40)だった場合は、文字通り連日テレビで報じられ、関係者証言から夫婦間の話の顛末、果ては盛大に行われるはずであった誕生日パーティーに関する情報からその後の離婚騒動まで、延々と話題に上るほどの破壊力だったことは記憶に鮮明に残ります。
せめて離婚さえ乗り越えられれば、まだまだ乙武さんが果たせる社会的な役割も大きかったであろうし、待っている人もたくさんいるでしょうから是非頑張って欲しいと願う一方で、それまでの乙武さんのイメージとの落差がかなり鋭角だったことが彼の存在感の大きさを教えてくれたように思います。
■不倫騒動で露呈した知名度の低さ
一方、荻上チキさんの不倫騒動については、ネタとして明らかに不貞の中でもかなりショッキングな部類であるにもかかわらず、テレビなどで報じられることはありませんでした。それまでの荻上さんのイメージからLINEでの語らいの落差たるや、乙武さんに匹敵するものかなあと感じつつも、テレビ側が荻上さんの話題を取り上げなかった理由が「地味だから」「ディレクターが荻上チキを知らなかった」という物悲しいものばかりで、話題にするにはカロリー不足だったことが白日の下に晒されてしまったわけであります。
この手のネット著名人が、有名だと思っていたのにカロリー不足というのは結構類例があり、今年3月に同じく離婚協議が女性誌に報じられた津田大介さん(42)も、やはりテレビなどの情報番組で離婚騒動を取り上げられることはありませんでした。
「他人の下半身事情などどうでもいいだろ」と思う一方で、犯罪的な性癖のようなものを暴露されてしまった事例もあります。『日本会議の研究』で話題になった作家の菅野完さんは、『週刊金曜日』に思い切り性的暴行未遂の話を被害者証言つきで掲載されてしまうという破廉恥事案が発生しています。
『日本会議の研究』の著者として知られる菅野完 @noiehoie が、市民運動に参加する女性への性的暴行により訴えられている件が、明日発売の週刊金曜日で報じられる。今後、この件を考慮に入れない彼の言説への言及はすべて無意味となる。 pic.twitter.com/xBFCVHxsjs
— 佐藤剛裕 (@goyou) 2016年7月14日
しかも、日本会議について特集をしていた『週刊金曜日』をその菅野さんがTwitterなどで取り上げたりしていて、なんだろうと思うわけであります。もちろん、菅野さんも「僕が一方的に悪いので」と書いている以上、これ以上の騒動にはならないのでしょう。
週刊金曜日の日本会議特集、鈴木邦男の当事者コメントはさることながら、能川元一さんの歴史修正主義批判と、現役神職の証言が出色。これは読んだ方がいい。 https://t.co/1SsqFXdPtS pic.twitter.com/HCcB0dMMTw
— 菅野完 (@noiehoie) 2016年5月27日
悩ましいのは、彼らの下半身問題と、彼らが行う言論活動のクオリティとはまったく相関がないという点です。モノを書いて人に読んでもらって影響を与えて仕事としている人にとって、作家と同じくあくまで書かれたもの、論じたことそのものが商品のすべてである以上、人格と切り離して考えるべきで、女性問題は彼らの評論への評価に本来は影響させてはいけないと思うわけです。
その一方で、私自身もそうですが、不倫や不貞はそもそも好きではない人間にとって、お互い納得の上での性格不一致などでの離婚は理解できても、不倫ですったもんだというのはちょっとなあと感じるところはあります。少なくとも、私は一生そういう方面で何かをすることはないでしょう。やはり家内や子供を愛しているし、一緒になって成長していこうという気持ちは私はとても強いので、そういう家庭を築ける努力をすることで、人間としての成熟を図っていきたいと考えるほうです。
それゆえに、彼らの書いたこと、論じたことの品質の高さと、家庭の事情や性癖といったもので滲み出す別のものとがかけ離れていたとき、どうしても混乱してしまうわけですね。自分の家族や愛する人とあれこれ起こしてなお、論じてて大丈夫か、みたいな。かくいう私も、山本家の権力構造をうっかり披露してしまう対談がそのままネットに出てしまったりと、悩ましい日々を送っております。もちろん家庭円満でストレスがないほうが私はいいと思っているので、誰かから何を思われようがどうでもいいんですが。
「悪者になるな」奥さんの一言/やまもといちろう夫妻の生活(1)
やはり、話題となって騒がれるのは、なるたけ本業においてが望ましいなあとしみじみ思いながら、次のゴシップは誰なんだろうとぼんやり日々思っております。
著者プロフィール
ブロガー/個人投資家
やまもといちろう
慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数
公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)