理解困難なのに面白い?話題沸騰中の『シン・ゴジラ』を徹底分析 (1/2ページ)

デイリーニュースオンライン

「シン・ゴジラ音楽集2016」より
「シン・ゴジラ音楽集2016」より

『シン・ゴジラ』見てきました! クオリティ自体の高さもさることながら、圧倒的な情報の洪水で、二度、三度と見ても楽しめる映画だと思います。以下、ネタバレありのレビューとなります。

■情報の洪水による面白さの創出

 本作は表現方法がまずスゴイ作品でして、政治家、官僚、科学者が専門用語を混じえながら延々と早口で喋りまくります。さらに場所や肩書きを示すテロップがバリバリ入りまくり、視聴者の情報吸収力を無視して、情報が洪水のように溢れ返ります。

 これは普通に考えると当然悪手です。普通の作品はまず分かりやすさを大切にしますし、キャラクターたちが難しい会話をした後は、「つまり~~なんだな?」といった分かりやすいまとめを挟むなどの工夫をするものです。

 しかし、本作はそういった手加減をまるで無視して突き進み、たまに「つまり」が入っても、「つまり」以下の内容までが難しかったりします。明らかに理解させる気のない内容や、聞き取らせる気のない早口の箇所もあります。

 というわけで、普通に考えると悪手なのですが、この作品ではそれが独自のグルーヴと化して成立しています。専門用語の羅列がリアリティを生み出し、一つ一つのセリフの内容は理解困難であっても、「それっぽい空気」は確かに醸成されているのです。

 そしてなんだかんだ大人であれば、理解困難といえど、頑張れば理解可能な範疇の台詞の応酬ではあります。ここからは筆者の感覚的な仮説になるのですが、こういった理解困難さと、お構いなしのスピード感は、視聴者側の脳味噌が強制的にクロックアップされると思うのです。

 すなわち、高速で流れる理解困難(だけどギリギリ理解可能)な情報過多に晒されることで、それを順次理解してやろうと私たちの脳味噌が通常以上に活発に働く。その脳味噌の超過した働きが「面白い」という感覚を生み出しているのではないかと考えます。「面白い」という感覚は煎じ詰めるとよく分からないんですが、こういった脳みその挙動も、おそらく「面白さ」を感じさせる要素なのではあるまいか。

 ともあれ、こういった形で「面白さ」を生み出し、作品として成立させている。『新世紀エヴァンゲリオン』でも行われていた手法だと思いますが、普通に考えると悪手のはずのこれを、表現手段の一つ、監督の独自の個性、武器として確立させているのは、やはりスゴイと言わざるをえない。

 でも、この手法、脳みそをフル稼働させても付いていけない人も当然いるはずで、筆者も中学生の時分であれば無理だったと思うし、文化的背景の異なる外国人にもキツイと思います。そういった人たちがこの手法をどう評価するのかは興味深いところです。

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