「同僚の娘を貯水タンクに沈めて殺害」…北朝鮮で多発する凶悪事件の動機と背景 (1/2ページ)

デイリーNKジャパン

「同僚の娘を貯水タンクに沈めて殺害」…北朝鮮で多発する凶悪事件の動機と背景

ここ数年、北朝鮮で凶悪事件が多発している。北朝鮮当局は、決して明らかにしないが、多少の尾ひれはあろうと、こうした事件は人の口から口へと伝わり、必ず外部に漏れ伝わってくる。

下士官が怨恨の末

先月末、軍隊内で起きた金銭トラブルで、無関係の人が巻き込まれ殺害されるという悲惨な事件が起きた。

北朝鮮は、軍事優先の「先軍政治」をスローガンに掲げている。軍隊は優遇されていると見られがちだが、決してそうではない。規模が大きく、維持にコストがかかるが、生産手段を持たない朝鮮人民軍(北朝鮮軍)は、経済復興を目指す金正恩体制の大きな足かせとなりつつある。

現場の軍部隊では、自力で維持費を稼ぎ、物資を調達しなければならない。もちろん、そこには彼らの取り分も含まれている。両江道(リャンガンド)の国境警備隊に所属する、ある上官と下士官も、密輸や脱北幇助などの国境利権を貪っていた「裏ビジネスパートナー」だった。

そこそこもうけていたようだが、金正恩党委員長の「国境警備を強化せよ」という鶴の一声をきっかけに、裏ビジネスは停滞。金の切れ目が縁の切れ目というが、二人の関係に暗雲が立ちこめる。

そして、立場上、分が悪い下士官は、どんどん追いつめられ、上官を殺害することを決意。しかし、本人ではなく家族に手をかけてしまった。娘を貯水タンクに沈めたと伝えられているが、よほどの恨みつらみが溜まっていたようだ。

家族巻き添えといえば、数年前にも保安員(警察官)が庶民の報復に遭った際、妻子まで惨殺される事件が起きている。閉塞感が漂う歪な官僚社会ゆえに、凶行に及ぶ際、抑えつけられていた鬱憤が吹き出して、このような惨劇につながるのかもしれない。

北朝鮮の一般社会でも、凶悪事件は後を絶たない。

悪徳ヤミ金業者を刺殺

急速に資本主義化が進む今の北朝鮮では、ほとんどの住民が何らかの商売をしなければ生活がなりたたない。商売をするためには「元手」が不可欠であり、それを調達するのが北朝鮮版ヤミ金だ。ヤミというと、聞こえは悪いが、あくまでも北朝鮮当局が認知していないだけで、銀行のように「融資」をする役割を担う。

しかし、なかには悪徳ヤミ金業者も存在する。

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