子どもの脳の9割は「6歳まで」に完成!だから大切な毎日の食事
『人気管理栄養士が教える 頭のいい子が育つ食事』(小山浩子著、日本実業出版社)は、育脳から認知症予防まで、あらゆる視点で食のアドバイスを行っている管理栄養士による新刊。
これまでにも食に関する興味深い著作を数多く送り出してきましたが、今回は「育脳」がテーマ。「毎日のごはんが、子どもの脳をつくる」という点に着目しているのです。
■脳が大きく発達するのは6歳まで
「頭のいい子になってほしい」という思いは、親なら誰もが持っているもの。そこで、小さいうちから子どもの教育に熱心に取り組んでいる方も少なくありません。
ちなみに脳の発達という観点からいうと、これは効果的なことなのだそうです。人間の脳はお母さんの胎内にいるときからつくられはじめ、もっとも大きく発達する時期は「生まれてから6歳まで」。
つまり、頭のいい子をつくるため、赤ちゃん期、幼児期に脳に刺激を与える「育脳」はとても大切だというわけです。
■脳も食べものでつくられている!
ただし、かしこい脳を作るためには、学習などの外からの刺激だけではなく、脳細胞がすくすく育っていくための材料も重要。
栄養を内側から与えてあげる必要があるということで、具体的には、いい脳をつくるための栄養をきちんととることが欠かせないわけです。
成長期の子どもは、大人以上に栄養が大切。それは、いまさらいうまでもないことかもしれません。しかし、そこで忘れるべきでないのは、骨や筋肉だけでなく、「脳をつくっているのも食べもの」だということ。
でも著者によれば、そのことを意識している人は驚くほど少ないのだそうです。
■基本は3歳ごろまでにできあがる
脳の成長の時期は、たいへん早く訪れるものだといいます。
脳の神経がつくられはじめるのは、赤ちゃんがお母さんの胎内にいるとき、だいたい妊娠2カ月目ごろから。
そして生まれてからは猛スピードでぐんぐん発達し、3歳ごろまでには大脳、小脳、脳幹という基本構造がほぼできあがるというのです。
脳は、目や耳などの感覚器官から入ってくる情報を受け取って分析したり、記憶したり、思考や感情、行動を生み出したりする、とても高度で複雑なネットワークシステム。
そして脳の中心となっているのが、重さの85%を占める大脳で、左右2つの脳半球に分かれています。脳半球にはそれぞれ、前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉の4つの葉があり、たくさんの働きを分担しているわけです。
■脳の場所ごとで大きく異なる役割
額のすぐ後ろにある前頭葉は、記憶、注意といった基本的な作業の他に、計算したり意思決定をしたり、問題を解決したり、社会的行動などの作業に関わったり、その人のパーソナリティやコミュニケーションスタイルをつくっています。
皮膚を通じた感覚的な情報(気温、触感な土)や、空間的情報(大きさ、距離など)の処理に関わっているのが、前頭葉の後ろにある頭頂葉。
そして側頭葉には海馬や扁桃体があり、記憶をコントロールしたり、長期の記憶を保管したりするそうです。音声情報や嗅覚情報を受け取ったり、解釈したりするのもここ。
このように、脳はそれぞれの場所で決まった役割を果たすようになっているため、関連する情報はそれぞれの場所へ運ぶ必要があるわけです。すなわち、それが脳の活動。
そして、そうした脳活動を素早く、確実に行うためには、脳内のネットワークシステムである神経細胞がしっかりと密に張り巡らされていることが重要。
■よく働く脳をつくる食事が大切!
しかし、ここにとても重要なポイントがあります。脳の神経細胞がもっとも発達するのは、3歳までだというのです。
そして、6歳で大人の脳の90%にまで成長し、12歳にはほぼ完成。つまり脳の成長期は、お母さんの胎内にいるときからはじまって、赤ちゃん期~幼児期がピーク、小学校卒業までにほぼ終了するということ。
いってみれば、将来かしこい人になれるかどうかは、この時期の脳の発達にかかっているというわけです。
だからこそ、この時期にしっかりとした、よく働く脳をつくるための食事を子どもにつくってあげることが大切だということ。それこそが、本書を通じて著者が投げかけているメッセージなのです。
*
こうした基本的な考え方に基づいた本書では、「乳児期・離乳期」「幼児期(1歳半〜5歳)」「小学生(6歳〜12歳)」「中学生(13歳〜15歳)」とそれぞれの時期に合わせ、その年代にとって必要な脳をつくるための食事が解説されています。
レシピはもちろん、冷凍食品の活用法なども紹介されているため、基本的なことを理解できるだけでなく、とても実用的な内容だといえます。
お子さんをかしこく育てるために、手にとってみてはいかがでしょうか?
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※小山浩子(2016)『人気管理栄養士が教える 頭のいい子が育つ食事』日本実業出版社