煽りとビジネスの危険な関係|やまもといちろうコラム (2/2ページ)

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■ウェブメディアにおける信憑性の低下問題

 外部識者を交えて再発防止策ですか…。それよりは、廃刊して仕切り直しをしたほうが誠実にみられるのではというレベルの、結構重篤な問題じゃないかと思うのですが、問題の記事を入稿したとされる契約記者が本当に実在するのであれば、これは実名を秘匿し庇う必要もなく、また担当編集者や編集長も事実関係を確認しチェックをしていたのであれば、それは編集部全体の問題としてどう責任を取るのかというところにならざるを得ません。

 そんな話も踏まえて、株式会社サイゾー代表にも「どうすんすか?」と連絡を取ったところ、NHKを窓口にして中傷の対象となった女子学生に直接の謝罪ができるよう相談をしているとのことでしたので、近日中に追加で推移に関する発表はあるのではないかと思っております。誠意ある対応や申し出はしっかりされたうえで、事実関係の開示をしていただければなあとかなり本気で願うところです。

 また、自分のことは地上数万km上空にある棚の上に上げて申し上げるのも憚られるところですが、タイトルで釣って記事の中身がゴミという記事が横行した結果、PV至上主義的な風潮は、そろそろ考えないとなあと思うところであります。業界の現実論でいうならば「それで儲けなかったらウェブメディアなんて利益出せないよ」と言いたいところなのでしょうが、やはり線引きするべきところは確実にあります。

 実際には取材すらしていなかった記事が駄目なのはもちろんですが(今回はここですでにアウトですが)、読者の読みたいものを読ませるためにタイトルを過激にして釣る仕組みが洗練され過ぎたため、無料で読めるネット記事の信頼性がウェブメディア全体で低下しっぱなしなのかなと思っておるわけです。

 では商業誌でそれがなかったかと言われると、もともと業界の中にもあったジレンマであるとされております。

田崎健太、山本一郎がエアインタビュー問題に喝! 捏造が常態化するメディアの闇に切り込む

 翻れば、ネットがここまで出てくるまでの間、読者からの批判に直接さらされてこなかった新聞や雑誌、テレビなどでも捏造情報は過去にも何度も繰り返され指摘され続けてきたとも言えましょう。そして、いろんな正論や指摘を受けて、大新聞と言えども過去を振り返り、襟を正す機会を得たとも言えます。

 事実関係を正確に伝えるべきメディアに、何らかの政治的ポジションによるバイアスがかかると、読み手からの検証が不可能な部分に捏造が入りやすい構造は、やはり職業倫理として人にものを伝える、知らせていくことを生業にする人間は超えてはならない領域であるとして弁えておく必要があるのでしょう。

 世の中にはいろんなタイプの欺瞞はあるのでしょうが、メディアにかかわる人間として、事実に基づいて正しく伝え、それに立脚して考えや物事の見方を伝えていく、みたいな王道を歩んでいきたいものであります。

 ステルスマーケティングの事例もそうでしたが、一連の話で申し上げるならば「バレなければ何をしてもいいや」的なものの線引きはかなりしっかりと引いていただかないと、いずれ同じことが起きると思います。もうこれは、ウェブで発言をする人すべてに言えることかなといった感じですね。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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