最も魅力に欠ける街は名古屋?そんな調査結果にあえて反論|プチ鹿島コラム
この夏は名古屋がアツかった。「中日ドラゴンズの谷繁監督が休養?じゃぁ落合GMの責任はどうなんだ」というスポーツ新聞の論調ではない。名古屋そのものについての話題である。
『「行きたくない街」は名古屋 市自ら調査、つらい結果に』(朝日新聞・8月30日)
この記事が先週話題となった。東京23区、札幌、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、福岡に住む20歳から64歳を対象にネットで調査したもの。名古屋市が自ら調査したら、「最も魅力的に感じる都市」で最下位、「自分が住んでる年に友人・知人に訪れることをすすめたいか」という「推奨度」でも最下位だった。
しかし、私が見逃せないと思ったのは「名古屋を連想するもの」という質問項目である。1位「名古屋城」、2位「なごやめし」、3位「中日ドラゴンズ」、4位「コメダ」、5位「スガキヤ」と、食に関係するものが3つも入っているのだ。どう考えても名古屋は食べ物が自慢ということではないか。
この「なごやめし」はとても興味深い。たとえばエビフライ。タモリさんが80年代に「名古屋の人はエビフライをエビフリャーと呼んで食べる」とネタにして一躍「名古屋=エビフライ」となった。
《当時、エビフライは名古屋名物でも何でもなく、「何いっとんだが」と怒っていた。しかし現在、したたかな名古屋人は「負のイメージ」を逆に利用してる。》(週刊ポスト「名古屋ぎらい」9月9日号)
ネタにされたことをきっかけに名物にした。エビフライはどんどんデカくなっている。オリジナリティを生んでいる。最近の注目は台湾ラーメンだろうか。この夏、名店「味仙」は東京にも進出した。
《元々、名古屋の今池にある「味仙」本店の台湾人コックが名古屋人の口に合うよう開発したラーメンを"台湾ラーメン"と呼ぶようになった。台湾にはない、名古屋のオリジナルです。」》(週刊ポスト・同)
あんかけスパゲティ、小倉トーストなどにも同様のオリジナリティさが漂う。カニとかフグとか、最初からそこにあって客が呼べる素材とはちがい、なごやめしの特徴は創意工夫を重ねて「名古屋オリジナル」にしてしまう。なごやめしはニッポンの技術発達ぶりを象徴してないだろうか。見てくれでなく「実利」を求める人にはたまらない街である。
なぜここまで名古屋に敏感に反応してるかというと、私、ちょうど先週ライブで訪れたのです。1泊2日でいったのだけど、食べたものが全部美味い。食べ足りなくて帰りたくなかった。エネルギッシュな街。
「行きたくない街」どころかまたすぐ行きたいです、名古屋。
著者プロフィール
お笑い芸人(オフィス北野所属)
プチ鹿島
時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)など多数。