広島カープ優勝で思い出したい”旧市民球場”の記憶|プチ鹿島コラム

デイリーニュースオンライン

Photo by -KOOPS-
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 先日、ナゴヤドームで「中日対広島」の試合をみたら、ビジターにも関わらず球場が真っ赤っかだった。ビジターでこうなのだから今シーズン、広島のホームグランドではどれほどの熱気だったのか。

 私は全国の球場を旅がてら訪れるのが好きなのですが、なかでも広島のマツダスタジアムの快適さはクセになってリピーターになった。もう、どこの球団が好きとかそういうのを超越してずっと通いたくなる天然芝のボールパーク。

 席はどの席からでも見やすいし、さまざまな工夫もされている。「砂かぶり席」はベンチの横、バッターボックスの後ろにある。ベンチの選手とほぼ同じ目線で試合を堪能できる。「バーベキューもできる席」(空間)もある。外野には寝そべって観戦できるシートも。野球だけでなく野球場を楽しめるつくり。

 2009年に開場したこの球場はエンタメを味わううえで最適の場所だと思う。

 その一方で後悔があるのが、旧・広島市民球場での観戦は遂にかなわなかったことだ。無理しても行っておけばよかったとあらためて思ったのが、あるカープファンのエッセイを今年読んだから。

 作家で映画監督の西川美和さんの文章だ。西川氏はマツダスタジアムという地上の楽園が生まれたのは素晴らしいが、反面市街地は少し寒々しくなったと書く。原爆ドームと市民球場が隣り合っていた場所だ。

《米国が落とした原爆の遺産のすぐ傍らで、「ランス!」「アレン!」と赤ヘルを被った米国人選手に屈託もなく市民が声を上げていたのである。そういうなし崩し的でやわらかな平和があった。》(「Number」6月16日号)

 なし崩し的でやわらかな平和。なんというすごい表現だろう。これは広島で「けたたましいラッパの音やら口汚い野次」を日常で聞いて育った人しか言えない表現だ。やっぱり旧・市民球場も体験したかった。

 広島カープ25年ぶりの優勝フィーバーにちなんで「今年読んだすごいエッセイ」について書いてみました。

著者プロフィール

putikashima

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)など多数。

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