実態は単なる出稼ぎ?中国の狡猾な”パンダ友好ビジネス”のウラ事情

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中国人漫画家から見た中国のパンダビジネス (C)孫向文/大洋図書
中国人漫画家から見た中国のパンダビジネス (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 2016年9月4日、IUCN(国際自然保護連合)は野生個体数増加を理由に、中国国内のジャイアントパンダを絶滅危惧種から削除することを発表しました。生息地に対する保護政策などが要因となったようですが、中国側は「まだ楽観できる状況ではない」と公表しています。

■外貨獲得のために保護されるパンダたち

 もともとジャイアントパンダは群生ではなく、個体、あるいは家族単位で行動する動物で、人間側が保護しないと野生環境下では繁殖できないというのが中国側の見解です。そのため保護政策を継続するべきだと主張していますが、僕は中国が必死になってジャイアントパンダを保護する理由は、「動物愛護の精神」ではなく「外貨獲得」のためだと思います。

 1972年、日中国交正常化を記念として、当時の中共政府は日本に2頭のジャイアントパンダを寄贈しました。パンダが飼育された上野動物園には連日多くの観光客が押し寄せたようです。その後もジャイアントパンダは何度か日本の動物園に贈呈されていますが、パンダたちの籍は中国側に所在し日本側が人工繁殖を行うことが禁止されており、保護政策費を名目に日本側が毎年1億円程度の費用を中国側に支払うことが義務付けられています。

 つまり、日本のジャイアントパンダは「レンタル品」なのです。日本側が支払う費用は保護ではなくインフラ設備に使用されているという報告もあります。同様の事情は日本のみならず中国からパンダを譲り受けたほぼ全ての国で発生しており、そのため中国に費用を支払うことを疑問視する声は各国からあがっています。

■パンダビジネスは停止するべき

 多くの中国人も上述の「パンダビジネス」には否定的で、以前僕が数名の在日中国人と会食した際、「狡猾だ」などと口々に批判していました。もともと野生生物のレンタル行為は国際法で禁止されているはずですが、自国の希少生物を貸し出し、毎年多額の費用を徴収する中国の手法は暴力団による悪徳商法を連想させます。知人から日本には「人気がとれる見世物」という意味の「客寄せパンダ」という言葉があると伺ったのですが、宗教団体「法輪功」傘下の反中共メディア「大紀元」は自国のパンダビジネスを「出稼ぎパンダ」と評しました。

 また、経済発展のために環境破壊、乱開発を繰り返す中国が希少生物保護を訴える姿は滑稽に思えます。このまま環境破壊が継続されるなら、ジャイアントパンダの生息地は汚染され再び絶滅の危機に瀕するでしょう。もし中国側が本気でパンダの保護を考えているのならば、乱開発の停止、パンダの生息地となりえるチベット自治区の独立・保政政策などを実行する必要があると思います。しかし、現状はチベット人が神聖視する山を金脈発掘のために爆破するなど、中国は暴虐の限りを尽くしています。中共政府の行為に対する抗議として焼身自殺するチベット人が後を絶ちません。

 知人によると、ジャイアントパンダは日本では非常に人気が高い動物で、動物園には連日多くの見学者が訪れるそうです。しかし、かわいらしいパンダの裏側では中国による狡猾なビジネスが展開しているのです。僕は現中共体制が退陣し新政権が誕生すれば、パンダ保護、そして中国全土の環境良化につながると思います。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)など。

(構成/亀谷哲弘)

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