正恩氏、窃盗兵士に銃殺命令

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正恩氏、窃盗兵士に銃殺命令

今年8月末の台風10号(ライオンロック)により甚大な被害を受けた北朝鮮北東部では、復旧に動員された朝鮮人民軍(北朝鮮軍)の兵士が、一般住民から食べ物を盗むなどの事件が多発。金正恩党委員長が、こうした略奪行為に対して「見つけ次第、即時処刑する」との命令を下す事態になっている。

咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋によると、被災地の住民の間では、兵士による窃盗、強盗事件の多発に不満が高まり「家なんか建てなくていいから、さっさと撤収してくれ」などと言った声が上がっている。

これに対して金正恩氏は「復旧建設中に人民の財産に手を出す現象が発生すれば、その場で銃殺してもいい」との命令を下したというのだ。

正恩氏の指示が功を奏したのか、兵士による窃盗はとりあえず収まった状態だ。しかし、依然として事件が多発しているとの声も上がっている。

住民は畑のトウモロコシや野菜を守るために、寝ずの番に立たざるを得ない。寝不足を解消すべく、動員された復旧工事の現場で、昼休みなどの時間を利用して昼寝をする有様だという。

災害復興に兵士が大勢やってくることは、被災地の住民にとっては「窃盗団の襲来」に等しい。北朝鮮当局は、兵士たちに食べ物も生活必需品も補給しないため、「現地調達」を強いられるからだ。

兵士たちは民家に押し入り、家財道具はもちろんのこと、味噌まで盗んでいくという。被害住民はどこかに訴え出ようにも、仕返しを恐れ泣き寝入りを強いられる。

そんな状況での金正恩氏の処刑命令について、情報筋は次のように解説した。

「金正恩氏は、兵士の窃盗により軍と人民の関係をこれ以上悪化させてはならないと判断し、『銃殺』指示を下したようだ。また、被災地には国連の機関や海外のNGOの視線が集まっているため、兵士の犯罪が明らかになっては都合が悪いとも考えたようだ」

北朝鮮では、90年代末の大飢饉「苦難の行軍」により配給システムが崩壊し、軍隊に食糧が配給されなくなったため、腹を空かせた兵士たちが農場や農家を襲撃し、食べ物を奪う事件が多発するようになった。

問題の根本的な解決のためには、食糧の配給が必須だが、依然として行われていない。水害によるショックに加え、今後の暮らしに不安を覚え、精神的に不安定な人も多い。こうした中、情報筋は次のように述べた。

「時々思い出したように配給をするのではなく、皆が安心できるように定期的に配給をするのが政府の責務ではないか」

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