会社規則でキス強要?中国人漫画家が語る中国の”仰天セクハラ事情”

デイリーニュースオンライン

中国の動画サイトに投稿された衝撃の動画とは (C)孫向文/大洋図書
中国の動画サイトに投稿された衝撃の動画とは (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 2016年10月、中国の動画サイトに会社員風の女性たちが列を作り、上司と思われる中年男性に順にキスをしていくという奇妙な動画が投稿されました。

■規則により社長にキスを行う女性社員

 中国の複数メディアの報道によると、キス行為が行われたのは北京市通州区のビール製造企業で、会社規則に「毎朝9時から9時半までは、女性社員は毎日列を作り、社長のキスを受けなければならない」というものがあったそうです。そのような規則が生まれた理由は社員たちが愛社精神を高め一致団結するためとのことですが、当然、男性社員には適用されていません。

 報道によると、この企業の社長は海外に出張する機会が多く、社員たちに欧米社会ではキスは単なる挨拶行為であると吹き込んでいたそうです。また海外出張の際は、複数の女性社員とネット上でライブチャットを繰り返していたようで、社内は「私的ハーレム化」していたのです。

 大半の社員たちがこのような行為を受け入れていましたが、動画公開後自社の異常性に気づいたようで、二人の女性社員が自主退社しました。当然中国国内でも批判が殺到し、中国製SNS「微博」には「セクハラだ」、「社員を洗脳している」といった意見が書き込まれていました。

 企業主体によるセクハラ行為は中国では頻繁に行われます。2013年、広州省佛山市のあるレストランでは、女性従業員たちの制服が裸にエプロン一枚という風俗店のようなサービスが行われました。しかもエプロンは透明のプラスチック製で、従業員たちは実質全裸で接客を行っていたのです。

 中国は規制が厳しく、メディア上で性的な表現はほとんど行われません。その一方、日本のように職場内のセクハラに対する明確な法律が存在せず、上述の社長のような行為が発生しても逮捕されません。上司からセクハラを受けた女性社員たちは訴えることもできず退職することがあります。さらに女性社長が部下の男性社員にセクハラするという逆パターンも発生しています。

 実は僕自身も職場でセクハラ行為を受けたことがあります。大学卒業後、僕はイラストレーターとして出版社に就職し、ライトノベルの表紙絵を担当しました。配属された編集部の社員は9割方が女性で、しかも女性向けライトノベルを担当しているという性質から、いわゆる「腐女子」が多かったのです。

 ある日、僕が社内食堂で席を探していると、当時30代の女性上司二人に呼び止められ向かいに座ることを強要されました。僕が彼女たちの前で食事をしていると、上司の一人(Aさん)が「今日のオカズはまずいから、かわりに若い男の子を見てよだれの成分を分泌するわ!」と話し、もう一人(Bさん)が「孫くんをオカズにして! ひどい! ぶほほほ!」と嘲笑しました。二人はボーイズラブ小説を担当している編集者で(当時の中国では活字による性表現は比較的規制が緩かった)、僕は彼女たちから卑猥なセクハラ発言を浴びせられるという事実に、激しい不快感を抱きました。

 また、職場には僕の他に「黄」という男性社員がいたのですが、ある日Aさんと「Cさん」という編集部員が「このシーンはこういう展開でしょう!」、「違う! もっともっと激しい欲情的な展開!」などと小説の男性の同性愛描写について議論を行っていました。彼女たちは僕と黄を呼びとめ、「二人は机の上で愛し合いなさい!」、「鑑賞すれば私たちは仕事が進められるわ!」などと発言しました。二人は冗談のつもりだったのかもしれませんが、このような破廉恥な発言は日常茶飯事でした。

 エロ規制大国といわれる中国ですが、職場内のセクハラは野放しの状態で、多くの人々の尊厳が傷つけられています。しかも2016年末から国内の失業率が大幅に上昇することが予想されており、中国の会社員たちは仕事のために泣く泣く上司のセクハラに耐えています。

 その一方、雇用者たちは独裁者のようにふるまい公然とセクハラを行うのです。僕は中国が民主化し、職場内セクハラに関する具体的な法律を制定する日が来ることを望みます。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。

「会社規則でキス強要?中国人漫画家が語る中国の”仰天セクハラ事情”」のページです。デイリーニュースオンラインは、セクハラマスコミ中国連載などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る