金正恩氏の「まごころ薬品」よりヤミの薬を選ぶ北朝鮮庶民 (1/2ページ)

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金正恩氏の「まごころ薬品」よりヤミの薬を選ぶ北朝鮮庶民

北朝鮮で急速に発展する市場経済は、庶民がゼロからつくりはじめたことから「草の根資本主義」とも呼ばれる。市場では、日用品から建材、機械部品までありとあらゆるものが販売される。

国家が運営する市場や百貨店はディスプレイこそ立派だが、値段も高く品揃えもよくないため、庶民たちは見向きもしない。この市場化の波は医療分野にも及び、金正恩氏が意気込みを見せる医療政策さえ飲み込もうとしている。

麻酔なしで手術

北朝鮮の医療環境は劣悪だ。当局が運営する病院は一応は診療はするものの、薬品など具体的な治療に関しては自己負担になる。こうした環境に業を煮やした医師たちは、国営病院を見限って自分で診療所を開く。厳密にいえば「ヤミ医療」になるわけだが、一部の高級幹部を除いて多くの当局者もヤミ医者に頼らざるをえない。

おどろくべきことに「ヤミの中絶手術」まで存在する。

北朝鮮の「草の根資本主義」を支えるのは女性たちだ。彼女たちは生きるために働かなければならないので妊娠出産を避ける傾向にある。そこで、もし妊娠してしまったら、ヤミの産婦人科医を自宅に招いて堕胎手術を行うというのだ。医大生たちは夏休みに入ると、学費稼ぎのためバイト感覚で「ヤミの堕胎手術」に手を染めるという。

そして、北朝鮮の劣悪な医療環境を最も象徴するエピソードが「麻酔なしの手術」だ。病院には麻酔薬がない場合がしばしばあるため、致し方なく麻酔なしで切開手術を行うケースがあるという。聞くだけでも恐ろしい話だが、身をもってこの壮絶な体験をした脱北者によると「自分の血の匂いに吐き気がした」という。

こうした状況を知ってか知らずか、金正恩氏は眼科病院を新しく建設したり、注射器工場を現地指導するなど、彼なりに医療環境を改善させようとしているようだ。昨年10月に「チョンソン(まごころ)製薬総合工場」を現地指導した際は、「解熱鎮痛剤、消化剤をはじめとする常備薬品の品種を増やし、効能をいっそう高める」などと述べながら、医薬品を充実させることに意気込みを語っていた。

そして、平安南道(ピョンアンナムド)順川(スンチョン)市に、薬局3店舗がオープンしたという。

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