プロレス解体新書 ROUND29 〈最初で最後の直接対決〉 猪木が見せた前田への気遣い (1/2ページ)

週刊実話

 新日本プロレス対UWFの闘いにおける世代交代の中で、ファンから待ち望まれながら最後まで実現しなかった、アントニオ猪木と前田日明のシングルマッチ。唯一、両者の直接対決は、前田が海外武者修業から凱旋した若手時代にさかのぼる。その試合で猪木は、意外な一面を見せていた。

 かつてジャイアント馬場は「あいつは対戦相手を使い物にならなくするから困る」と、アントニオ猪木に苦言を呈していたという。
 「馬場にしてみれば、全日のトップ外国人だったアブドーラ・ザ・ブッチャーを引き抜き、短期間で使い潰した新日への不満が相当あったのでしょう」(スポーツ紙記者)

 とはいえ“育成の猪木”としての一面も見逃すことはできない。
 見栄えのするフィニッシュホールドのなかったタイガー・ジェット・シンに、ブレーンバスターを伝授したのみならず、実際の試合の中で猪木自ら練習台になったのがその一例。ほかにもスタン・ハンセンやハルク・ホーガンなど、粗削りな無名選手をメインイベンターにまで育てており、一概に馬場の言葉が正しいとは言い切れない。
 「その一方で、手の合わない相手や不要な選手については、あきれるほどに冷淡な扱いをすることがあったのも事実です」(同)

 国際プロレスなどで活躍したオックス・ベーカーは、同団体では怪奇派のトップヒールとして君臨していた。しかし、新日に参戦すると、猪木は初のシングル対決において、延髄斬りからのレッグドロップで3カウントを奪うまで、わずか3分足らずで試合を終わらせ、ベーカーに一切の見せ場を与えなかった。
 この試合はテレビ生中継で、前の試合が押して残り時間がわずかとなってしまい、その枠内に収めるための処置とされる。とはいえ、その当時は試合途中での中継終了という流れもよくあり、無理に時間内で決着をつける必要もなかった。実績のあるベーカーに対して、この扱いは、さすがに“ひどい”と言われても仕方あるまい。

 身内である所属選手に対しても、こうした猪木の差別的な扱いは見られた。
 「長州力にはシングル対決でピンフォール負けを喫した猪木ですが、藤波辰爾にはタッグでのフォール負けはあるものの、シングル戦ではフルタイム引き分けまで。

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