お金で懐柔する?トランプ次期大統領に対する”中共政府の思惑”

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トランプ次期大統領就任に対する中共政府の思惑 (C)孫向文/大洋図書
トランプ次期大統領就任に対する中共政府の思惑 (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 2016年12月2日、アメリカ次期大統領就任が予定されているドナルド・トランプ氏(70)が台湾の蔡英文総統(60)と電話会談を行いました。1979年の米中国交正常化以降、公式にはアメリカは台湾を国家と認めておらず、今回の会談は異例の事態といえます。

■トランプ氏の就任は好都合だった?

 2016年のアメリカ大統領選の際、蔡総統はトランプ氏の対抗馬だったヒラリー・クリントン氏(69)支持を公言していました。おそらくヒラリー氏が自らと同じ女性政治家であること、同性婚容認などリベラル系の政治方針に蔡総統は共感したと思います。ですが、今回の大統領選でヒラリー氏が当選した場合、彼女が所属するアメリカ民主党は親中体制をとっているため、今回のような会談は実行されなかったでしょう。皮肉にもヒラリー氏が落選したことにより台米関係にとっては好都合な事態となりました。

 今回の件を受け、アメリカの民主党やリベラル系のメディアはこぞってトランプ氏と会談を行った蔡総統の対応を批判しました。それに対しトランプ氏はTwitter上で「台湾は毎年アメリカ製の兵器を購入している。なぜ会談してはいけないんだ?」と反論しました。「商売相手」を重んじるトランプ氏の判断は、いかにも元企業経営者らしいとも言えますが、僕は中共政府に対する徹底した対抗姿勢の表れであることを期待します。

 会談の翌日、中共政府外交部はトランプ氏に対し常套句のような抗議声明を発表しました。また、トランプ氏支持派の中国国民たちは「彼は頭のいい人だが、政治については素人だな」、「認知症の老人だ」などと失望する声をネット上に寄せました。また「蔡英文はヒラリー氏を支持していたのに、今はトランプ氏を祝福するのか?」と蔡総統を批判する声も確認できました。

 実は中国のトランプ氏支持派は民主主義的な思想を持つ傾向があるのですが、そのうちの大半が「台湾は中国の領土」という認識を持っています。そのため台湾を独立国家として認めたようなトランプ氏の対応に対し、反感を持ったのでしょう。

 現在、南シナ海の覇権拡大を狙っている中国にとって、「アメリカの『世界の警察』からの撤退」を公約にかかげるトランプ氏の大統領就任は都合のいい話です。そのため以前から中共の機関メディアはトランプ氏を支持し続けています。蔡総統との会談を受け一時的には批判的な意見を述べましたが、機関メディアの一つ「環球時報」が「トランプ氏は政治経験がないため外交のことをよく知らない。今回の会談はあいさつのようなもので決して外交ではない」と述べるなど、再び擁護的な風潮となっています。

『環球時報』(人民日報社)は「今後、中国政府はトランプ氏と台湾問題について語り合うべき」と述べ、「one more chance」(大統領就任後を期待します)と結論づけました。おそらく、中共政府は元企業経営者であるトランプ氏は利益を第一として政治を行うと考えています。そのため莫大なチャイナ・マネーを使えば懐柔できると予想しているのです。しかしトランプ氏はTwitter上で「中国は南シナ海に巨大な軍事施設を建設していいかとアメリカに尋ねたか?私はそうは思わない!」と書き込むなど、就任前から現職のオバマ政権とは正反対の対中国姿勢を標榜しています。

 政治経験が皆無なトランプ氏がどのような政治を行うか、現在は全くわかりません。ですが僕はトランプ氏が徹底した反中政策を実施し、中共政府の思惑が水の泡になることを望みます。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。

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