キャリア官僚を自殺未遂に導いた「凡ミス」とは (1/2ページ)

新刊JP

『自分の「異常性」に気づかない人たち』(草思社刊)
『自分の「異常性」に気づかない人たち』(草思社刊)

あなたはメンタルが強い方だろうか、それとも弱い方だろうか。

強いと思っている人は、自分がこの先メンタルのバランスを大きく崩すことなど想像できないかもしれない。しかし、メンタルは小さなズレが積み重なって、表面化するころには大きなズレになってしまっているもの。

『自分の「異常性」に気づかない人たち』(西多昌規著、草思社刊)には、精神科医としての仕事を通して出会った、そんな例の数々が挙げられている。

■たった一つの凡ミスから自殺未遂へ

本書に登場する恵一郎さん(仮名)は、省庁に勤めて12年のキャリア官僚とあって、多忙な毎日を送っているが、彼が自殺未遂へと至ったきっかけは、たった一つの凡ミスだった。

仕事が長引いて終電を逃し、タクシーで帰ることも多いという彼だったが、そんな多忙な折、自分が担当している事業の中間報告書で、彼は数字の入力ミスをしてしまう。

学生時代を含めても、その手の凡ミスをほとんどしたことがなかったという恵一郎さんは、課長に指摘されてはじめてミスに気づいたことがかなりショックだったようだ。ミス自体はほんのささいなもので、そのせいで怒られたりということはなかったが、ミスの事実よりも、ミスをした自分に対する信頼が揺らいだことに、本人は大きな衝撃を受けたという。

この一件があってから、ふとした際に「もしかして、ミスをするかも」という不安がよぎるようになった。それにつれて、これまではモチベーションになっていた、責任のある官僚の仕事へのプライドが、自分を押し潰す重苦しいものに変わっていった。

■「あまりに重大なことだと思って、とても人に話せなかった」

さらにこの不安は、深刻なものになっていく。恵一郎さんが属する部署の業務計画がうまく進んでいないこともあって、「あのミスが引き金になって、計画に狂いが生じたのではないか」という妄想が生まれ、まともに眠れなくなってしまったのだ。

もちろん、客観的に見れば彼のミスはほんの些細な、誰でもやる類のもの。すぐに上司が気づいたこともあって、組織にも業務計画にもまったく影響はなかった。

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