映画「太陽の下で 真実の北朝鮮」/許可に2年、撮影に1年 やらせ演出の裏まで見せるドキュメンタリー

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「太陽の下で 真実の北朝鮮」
「太陽の下で 真実の北朝鮮」

北朝鮮、平壌。模範労働者の両親と暮らす8歳の少女ジンミは、金日成(キム・イルソン)主席の生誕記念日「太陽節」で披露する踊りの練習に余念がない。両親は仕事仲間から「優秀な娘を持った」と祝福され、家族は「理想的」な日々を過ごしていた──。

ロシア出身のビタリー・マンスキー監督が、当局の許可取得に2年、撮影に1年かけ、北朝鮮庶民の日常を追ったドキュメンタリー作品。周囲に分からぬようカメラのスイッチを入れたままにし、撮影の裏で「指示」を繰り返す当局者の姿を映し出している。

撮影に合わせて職業が変えられていた

ジンミは面接で少女5人の中から選ばれた。面接で「記者の父、食堂に勤める母、祖父母と一緒に駅近くのワンルームマンションで暮らしている」と話したジンミだったが、いざ撮影に向かうとそこは一等地の高級マンション。高層階で新品の家具に囲まれ、両親と3人で暮らしていた。

平壌の朝。雪が残る寒空の下、大勢の人たちがラジオ体操に励んでいる。徒歩で通学する生徒たちを横目に、「エリートクラス」のジンミは大型バスで登校。人が歩き、バスに乗るタイミングまで、当局の「演出」で計算されていた。

ジンミが通う「エリート校」では、金日成主席の武勇伝が繰り返し教えられていた。日本統治下の朝鮮半島で「日本人と地主を退治した」美談が刷り込まれる。崇高でありがたい授業のはずが、退屈なのか居眠りする少女もいる。ロボットのように忠誠を誓いながら、ちょっとしたところに正直な現実を見せてしまう。

一方、ジンミの両親は撮影に合わせて職業が変えられていた。記者の父は繊維工場の技師。食堂勤めの母は豆乳工場の従業員。二人の働く姿を通し、北朝鮮当局は「優れた技術と素晴らしい労働環境」をアピールする。

マンスキー監督は当局に操られているふりをしつつ、ひそかにカメラを回し続け、やらせ演出で美化される「庶民の日常」を発信する。無垢な少女の涙と、厳しい独裁の現実。意欲的なドキュメンタリー映画だ。

「太陽の下で 真実の北朝鮮」(2015年、チェコ・ロシア・ドイツ・ラトビア・北朝鮮)
監督:ビタリー・マンスキー
出演:リ・ジンミ
2017年1月21日(土)、シネマート新宿ほかで全国順次公開。作品の詳細は公式サイトで。

記事提供:映画の森

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