清水富美加の出家とブラック批判、芸能事務所の透明化問題|やまもといちろうコラム

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写真は「ふみかふみ」より
写真は「ふみかふみ」より

 山本一郎(やまもといちろう)です。バレンタインデーは家内からの愛情詰まったありがたい本命チョコと、いくつか頂戴した恐縮な義理チョコで全日程を終了しました。今年もご協力を戴きありがとうございました。

 ところで、先週来話題になっていた女優・清水富美加(22)の突然の芸能界DISからの「幸福の科学」への“出家”騒動がありまして、ちょうど週頭にテレビに出させていただいたり雑誌のご取材にノンテーマで応える企画があったのですが話はこれ一色でした。というか、日本にとって超重要事項である日米関係を担った安倍晋三首相(62)のドナルド・トランプ大統領(70)訪問とか吹き飛ぶような話になっていて、日本が平和過ぎるだろと思ったりもしたわけですが。

 もちろん話は進行中で、二転三転する情報が乱舞するところではありますが、問題が直撃するテレビ局や芸能界はさすがに清水富美加バッシングに傾きます。「仕事放置して逃走しちゃいかんがな」と坂上忍(49)がテレビで吠えれば、『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)でも井上公造(60)が出てきて芸能事務所側を擁護する発言に終始します。とはいえ、そもそも電通で女性社員が自殺してしまった事件のときには「仕事なんか放り出せ。自分の命の方が大事だ」と公言していた人もいたわけで、いざ自分の身の回りで無茶をやる芸能人を見ると途端に主張が変わってしまうのもむべなるかなと思うわけであります。

 一方、さすがに「幸福の科学」自体はカルト宗教だと指弾されることも多いのもあってか、周辺取材が各媒体で進むようになってくると、一般的な解釈では読み解き方に悩む情報がたくさん乱舞してきます。

レプロ・本間社長守護霊インタビュー

 いきなり出てきたのが、清水富美加の所属する芸能事務所・レプロエンタテインメントの社長、本間憲さんの「守護霊」インタビュー。もうね、タイトル見るだけでお腹いっぱい。凄いことだと思うよ。笑ってはいけないのは、こういう話で人間の人生が簡単に左右されてしまうところです。お金が動いているし、新進女優が広告塔に使われるとなれば、ネタのインパクトよりもそのネタが持つ意味を考えて真顔になるレベルの話です。

清水富美加の父に借金5000万円か 出家との因果関係は不明

 出てきたのが出家した清水富美加の父親が借金あったよ話。「幸福の科学」への出家と因果関係は不明とされつつも、そもそも金額自体も微妙だし、22歳になって父親の借金返済のようなプライベートな内容が出てくるのも不思議な話です。本当に売れる女優に成長していく過程ならば、正直5000万円程度の借金ははした金でもあるし、別に教団でなくとも事務所も用意したことでしょう。清水富美加の両親が熱心な「幸福の科学」の信者だったとするならば、その信仰の過程で教団に渡したお金なのかもしれないし、ちょっと触りづらい話なんですよね。

清水富美加、月5万円“奴隷契約”の真相 「脱毛エステ代など年1000万円は事務所が負担」

 こちらは『週刊新潮』(新潮社)。置屋話の取材力にはとても定評があります。いわゆる芸能事務所がタレントや女優を卵のうちから先行投資をして育てる話の根幹に位置する話ですけど、いわば「売れるまでは」マンションもマネージャーもつけて衣食住安心させて囲っておくシステムについて、語っております。とはいえ「奴隷に着せている服はいいもんだぞ」と捉えられかねない内容ですから、本来なら慎重になるべきところですけどさすがは『週刊新潮』、容赦ありません。

 振り返ると、レプロエンタテインメントについては能年玲奈(現・のん/23)やマギー(24)、そして今回の清水富美加と、いわゆる「若い女性のハンドリング」に苦労している節があります。私もデイリーニュースオンラインでも過去に記事にしましたし、ジャーナリストの田崎健太さんもこの方面のネタはきちんと両論併記されています。

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■対策は「ガラス張り」

 一方、冒頭に述べた通り芸能界が長い坂上忍も「俺も若いころは月給5万円で働いた」と番組内で述べ、だからおまえ(清水富美加)も働くのは当然だ的な言論につながるような、一般社会と芸能界の慣行の間の埋めがたい溝のようなものはどうしてもあるのだと感じます。

 それは、いわゆる単なる“下積み論”ではなくて、芸能人が売り出され、売れていく過程は、本人の資質や能力だけでなくバックアップする芸能事務所の力関係やノウハウ、受け止めるテレビ局などメディアや製作委員会の持つ作品とか番組の巡り合わせなど、いろんなファクターが介在しているのでしょう。

 これは私もテレビで述べましたけど、芸能界がいままでやってきたいろんな慣行は、芸能界は「夢を売る商売だから」とか「芸歴や年齢での上下関係をしっかりと守る世界だから」という本質が、一般社会の常識とかなりズレてきているから起きている現象なんじゃないか、と感じます。もしもこの問題を「受けた仕事は最後までやれ」というような精神論ではない側面から解決しようとするならば、それこそ契約条件を統一し、かかった経費はいちいち関係の深いメディアにリークしなくても良いようにある程度ガラス張りにして、アメリカがそうであるように俳優・女優の労働組合でもつけて大人が見守りチェックする仕組みがなければ改善されないのではないかとさえ思うわけです。

 何しろ、本当に芸能人と芸能事務所の関係を普通の雇用契約にしてしまったら、一番最初に吉本興業や松竹芸能あたりが死ぬわけで、舞台レッスンも雇用だとなれば深夜にも及ぶリハーサルやトレーニングをやるため未成年者の労働問題でジャニーズもエイベックスも死ぬでしょう。みんな死ねばいいんだ。いや、死にたくない。

 芸能界であれゲーム業界であれ、基本的には「やりたいやつはゴマンといる」世界ほど、不合理な大人の世界で生き抜こうとする、若い人を買い叩く仕組みが温存されるという状況はあるんじゃないでしょうか。ビジュアルの良さ、演技や才能があるだけでは駄目で、気に入られて売り出されてナンボという世界だとするならば、精神的に向かない人はどうしても不安定になるのは間違いありません。

 じゃあどうするか、と言ったら、ガラス張りにするしかないんじゃないですかね、というのが私の結論です。ギャラや所得とか個人的な問題は別として、労働条件など契約関係や資金の使途を厳密に区切って、第三者の弁護士を入れて管理する的な。若いころから芸能界に入ってちやほやされているところに、売れているからと言って多額の現金を渡したらどうなるか分からない世界だと言われればそうかもしれないし、華やかな世界を求めて芸能界に足を踏み入れる本人も、またそういう未成年の我が子を送り出す親も、ひょっとしたらいろんなタイプの、まあ、ややこしい感じの、話の通じない風の、人たちもいるかもしれない。

 それこそ警察も弁護士もどんな業界であっても不祥事はあるので100%は無いとは思う一方、時代に合わせて業界の体質を改善していく努力は、どこかで図っておくのが良いのではないかと思うわけですね。

 ある程度そういうところを綺麗にしていく努力を払っていけば、それこそ高須クリニックの高須克弥せんせ(72)が受けたという某芸能事務所からの「接待」を思い切り西原理恵子女史(52)が漫画にしてしまうような世界も減っていくのではないかと思う次第です。

 ハニートラップは本当に怖ろしいかもしれませんが、他のあらゆる業界と同じく、時代に合わせた良い働き方を提供できる業界であってほしいと願っています。私もきちんと家庭を大事にして来年も愛妻バレンタインチョコレートをもらいたいです。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/デイリーニュースオンライン presents 世の中のミカタ総研

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