究極の美を求めて?あるいは何らかの目的が?頭蓋骨を変形させた「人工頭蓋変形」10の例

カラパイア

究極の美を求めて?あるいは何らかの目的が?頭蓋骨を変形させた「人工頭蓋変形」10の例
究極の美を求めて?あるいは何らかの目的が?頭蓋骨を変形させた「人工頭蓋変形」10の例

[画像を見る]

 いつの世も人類は美しくありたいという願望があるようだ。それはまさにDNAに刻み込まれているといってもよいだろう。これまでの人類の長い歴史の中で、美しく見せるために人は体をさまざまに改造してきた。

 太古の昔からあってもっとも広く行われていたのは、頭蓋骨の形を変形させることだった。幼児の柔らかな頭蓋に手を加えることから始まるこの技術は、人工頭蓋変形として知られる。もちろん美以外の目的があったかもしれない。

 昔はこれだけ流行っていたのに、現代社会ではほとんどお目にかかることができない人工頭蓋変形。だがもしかしたらファッションという名目で、人々がもういちど頭蓋骨を変形させる始めるのも、時間の問題かもしれない。

・10. トライロトラカンの女性


[画像を見る]

image credit:Sci News

 ティオティワカンの太陽のピラミッドのすぐ近くで、考古学者たちが興味深い頭蓋骨を発掘した。35歳から40歳くらいの女性で、人工的に頭蓋を長くしてあった。さらに、門歯に黄鉄鉱がかぶせてあり、失われた下の歯の跡に蛇紋石で作った義歯が入っていた。

 この地域で、1600年前のこんな頭蓋骨が見つかることは極めてまれだ。専門家たちは、この「トライロトラカンの女性」は外国の貴族だと考えている。

 人工的に頭蓋を変形させる習慣は、南メキシコや中米の拠点であるマヤではごく一般的なことだったが、メキシコ中部に位置するティオティワカンでは非常に珍しい。この女性と共に供物が納められた19の壺が埋葬されていた。長い頭蓋や装飾が施された歯を含め、富と高貴な身分を示していると思われる。・9. カルパティア盆地のフン族


[画像を見る]

image credit: Molnar

 ハンガリーのカルパティア盆地から、人工的に変形させた9つの頭蓋が見つかった。5~6世紀にさかのぼる、あの悪名高きフン族のものとわかった。これら頭蓋は男女とも変形していて、3つのはっきりした変形スタイルが見られた。

 変形頭蓋の伝播は、ロシア南部のカルムイキア草原からクリミア半島を経由してヨーロッパへとたどることができ、フン族の移動時期と一致している。

 専門家たちは、変形の目的はふたつあると見ている。身分を示し、民族を識別するため。侵略者フン族のご機嫌をとろうとするほかの民族は、この習慣を取り入れた。頭蓋変形の痕跡は、アラン人、サルマティア人、ゴート人など、ほかの多くのゲルマン民族にも見ることができる。しかし、この習慣を最初に生み出したのはフン族ではないとされていて、彼らが誰から会得したのかは謎のままだ。・8. シャニダール洞窟の頭蓋骨


[画像を見る]

image credit:Erik Trinkaus

 人工頭蓋変形の始まりは少なくとも1万年前にさかのぼると言われてきたが、最近の発見ではもっと古いことがわかった。

 イラクのシャニダール洞窟で、ネアンデルタール人の頭蓋ふたつが見つかり、4万5000年前から頭蓋変形の習慣があったらしいことがうかがえた。

 シャニダール1と5には、両方とも人工頭蓋変形の痕跡があり、もっともはっきりした特徴は、前頭部が平らで、後頭部に不自然な湾曲があることだ。シャニダール5の平らな前頭部は、母集団平均に比べて4.5の標準誤差があった。

 これらの頭蓋骨が、この地域独特の変形を表わしているとは思えない。ほかの西アジアの種族はごく普通の頭蓋をしている。もっともわかりやすい説明は、意図的に頭蓋変形が施されたというものだが、この頭蓋はまだほとんど研究されていないネアンデルタール人の美意識を反映している。頭蓋変形の行為を死者の埋葬儀式の出現と結びつける者もいるが、いずれにしても現生人類にだけつながる昔の行動様式を反映しているといえよう。・7. アルザスの高貴な女性


[画像を見る]

image credit:Denis Gliksman

 フランス、アルザス地方の発掘で、6000年前の墓と遺物が発見された。中でも、保存状態のいい1600年前の女性の長い頭蓋が興味深い発見だった。

 豪華な装飾品に囲まれて埋葬されていたため、彼女は貴族だと思われた。装飾品の多くは東からのもので、この埋葬地がアジア出身の兵士やその家族にあてがわれた場所である可能性を示すものもいくつかあった。

 実は、20世紀始めまで、人工頭蓋変形はフランスでは普通に行われていた。不測の衝撃から守るために赤ん坊の頭を布できつく包む習慣は、地元ではバンドー(ヘアバンドの意)と言われ、これがトゥルーズ型頭蓋変形につながった。

 このアルザスの高貴な女性の変形とは違い、トゥールーズの習慣は農民の間で広くひろまった。彼らの伝統は、高貴な人の頭蓋変形を起源としたものなのか、かすかでもわかるだろうか?・6. 大量虐殺の頭蓋骨


[画像を見る]

image credit:The Ancient Standard

 ニューメキシコの人里離れた峡谷で、大量虐殺の痕跡が発見された。発掘された7体の骨は、ガイナス人のものだった。彼らは1000~1200年の間に北西ニューメキシコに住んでいたが、その文化は謎に包まれている。7体の骨はすべてひどく傷つけられた跡があり、男も女も子どもも惨殺されていた。発見されたガイナス人の遺体の9割が非業の最期をとげたことがわかる。

 ガイナス人の頭蓋骨には、意図的に変形させられた痕跡がはっきり見られた。後頭部が不自然に平らになっていたのだ。美しく見せるためのものか、文化的な身元識別のためか、実用的なことのためか、はっきりしていない。

 いずれにしても、この頭蓋の形でほかの部族とは識別ができたが、逆に標的にされやすかった可能性もある。この時期、この地域が深刻な旱魃にみまわれたことがわかっている。限られた水源を巡って、新しくやってきたガイナス人たちが敵対視された可能性はある。あるいは、彼らのせいで旱魃が起こったと憎悪の対象になったことも考えられる。・5. マンベトゥ族
 北西コンゴのマンベトゥ族は、頭蓋を人工的に長くする習慣があることが知られていた。リポンボというこの習慣は支配者階級のステータスシンボルで、長い頭蓋は、美と権力と知性の証だった。彼らは長い頭をそびえたつような凝ったヘアスタイルで強調した。

 この風習は、多くの写真に記録されていて、1950年にベルギー政府が禁止するまで続いていたという。

 マンベトゥ族とは、民族の名前ではなく、支配階級のことをさす。19世紀、近隣の部族を取り込み、多くの習慣を採用した。リポンボもそうした文化交流の一部と思われる。

 生後一ヶ月の乳飲み子の頭を布できつく包み、頭を長くする。この過程で脳がダメージを受けることはない。常に圧力をかけ続けることで、頭蓋にスペースができて脳が柔軟に成長する。目的は厳密に美容のためだ。・4. ソノーラの頭蓋骨


[画像を見る]

image credit:Virtual Museum

 1999年、メキシコ北部ソノーラ州で、作業員が思いがけない発見をした。不自然に長い頭蓋をもつ13の遺骸が埋まった古代墓地「エル・セメンテリオ」が発掘されたのだ。しかし、実際に調査されたのは、2012年になってから。遺骨は1000年前のもので、さらにペンダント、鼻輪、宝石類が出てきた。

 なぜ、頭蓋が意図的に変形させられていたのか、その理由はわからない。この北の果てではそうした記録はほとんどないため、専門家たちはメソアメリカ文化の影響の範囲を考え直さざるをえなくなった。

 さらに、同じように長い頭蓋をもつ幼児の遺体がたくさん見つかったため、この習慣は不適切で危険だったのではないかと考える者もいる。しかし、頭蓋の変形は世界中で長い間、普通に行われてきたため、これが衰退の原因とは考えにくい。・3. コフナの頭蓋骨


[画像を見る]

image credit:The Sunday Times

 1925年、オーストラリアのコウ湿地で、謎めいた頭蓋骨が発掘された。骨は原人のホモエレクトスの特徴を示していたが、1~3万年前のものだったため、このふたつの矛盾が長い間激しい論争や憶測を引き起こした。

 現生人類であるホモサピエンスが世界中のさまざまな地域で単独に発生したという間違った多地域仮説の主眼となったが、これは科学的な人種差別の省略表現にすぎなかった。

 今では、多くの専門家は、この頭蓋骨の浅くて広く長い額は、人工的な変形の結果だということを知っている。

 しかし、この頭蓋は、この先もずっと謎めいたものとして残りそうだ。特徴の多くは、ホモエレクトスによく似ているが、頭蓋変形については説明がつかない。歯と口蓋は平均的なアボリジニの頭蓋よりもかなり大きい。のちに現われ、ソロ・マンとして知られるインドネシアのホモエレクトスと関係があるかもしれない。あるいは、記録されるのを待っている未知の人類かもしれない。・2. パラカスの頭蓋骨


[画像を見る]

image credit:Marcin Tlustochowicz

 ペルー、リマから南へ4時間、パラカス半島の海に面した砂漠で、1928年、いまだに議論の多い頭蓋骨が発見された。

 現場からは、変形した頭蓋骨が300も見つかっており、南米ではこうした習慣は普通のことだったようだ。では、なにがここの頭蓋骨を独特なものにしているかというと、それは、ここの人々は生まれたときから、頭蓋が長かったというのだ。

 頭蓋を変形しても頭の容積は変わらないのに、パラカスの頭蓋骨は、平均的な頭蓋骨よりも25%も大きく、60%もずっしり重い。しかも、ふつうならふたつある壁側板がひとつしかない。

 この種族の頭蓋骨は明らかに異常で、それが頭蓋骨がエイリアンのものではないかという大胆な憶測につながった。信憑性の低い疑わしいDNA分析が、この噂をさらに突拍子もないものにしていった。

 パラカス族は、確かに母親から独特な特性を受け継ぐ。陰謀論者たちが、その特性を反論できない証拠にしてしまい、彼らが未知の種族であるという、おもしろいがありえない説をでっちあげてしまった。・1. コムコムリ酋長の頭蓋骨


[画像を見る]

image credit:Charles Marion Russell

 北米太平洋岸北西部のチヌーク族の間では、人工頭蓋変形はごく普通のことだった。頭を板ではさんで、変形頭蓋をつくる。

 コロンビア川流域の原住民と南米で見つかる種族の間には多くの類似点が見られる。19世紀、チヌーク族の酋長コムコムリは一帯の実力者で、その勢力を東へと伸ばそうとしていた。ルイス・クラーク探検隊がコロンビア川河口に到達したときに、出迎えた人物でもある。

 1830年、天然痘の大発生でコムコムリが死んだ。4年後、ハドソンズベイ社のドクター・メレディス・ガードナーがコムコムリの墓をあばいて、変形した頭蓋を盗み出した。

 遺体の首を切断して、イギリスへ送ったのだ。頭蓋骨はそのまま117年間もの間、英国海軍博物館に所蔵されていた。最終的に頭蓋はスミソニアンに送られたが、コムコムリの子孫が返却を求め、現在は先祖の地に埋葬されている。


via:10 Skulls Deformed For Fashion/ translated konohazuku / edited by parumo



画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
「究極の美を求めて?あるいは何らかの目的が?頭蓋骨を変形させた「人工頭蓋変形」10の例」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る