高齢者に限らぬ孤独死”おひとりさまの死”が普通になる未来|やまもといちろうコラム

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Photo by Georgie R(写真はイメージです)
Photo by Georgie R(写真はイメージです)

 山本一郎(やまもといちろう)です。このところいろんな社会保障ネタから財政までお話しする機会があります。先日も東京都西部の自治体に呼ばれたところ、現地で「こんな現象あるんですよ」と聞かされていたのが、この「おひとりさまの死」であります。

 もちろん、ポッとそれを聞くだけでは何だかよく分からないでしょうが、ちょうどこの原稿を書いているさなかに扶桑社の『日刊SPA!』が興味深い記事を掲載していました。

大量のエロ本に囲まれて孤独死…死後1か月以上経過した部屋のすさまじさ|日刊SPA!

 興味のある人は「特殊清掃」の単語で検索していただければ、見たいものから見たくないものまで様々出てくるわけなんですけど、問題となるこの孤独死については目下件数が激増しているという報告があります。というのも、これらの突発死については傾向として「必ずしも高齢者とは限らない」「発見されるまで死後かなりの日数が経過している」「個人的な遺留品の処理に困るケースが多い」といった特徴があります。

 よくネット掲示板などでも「うっかり死んだらハードディスクの中身を見られる」というネタが出るわけなんですが、これらの孤独死は多くの場合不審死として扱われるため、一通りの手続きを踏んで処理をすることになります。その際には、当然のことながらその人の趣味や経歴、直近で連絡を取った人や内容なども洗うことがあって、お世辞にも名誉なこととは言えない話が多数飛び交うことになったりもするのです。

 だからこそ生きているうちにそういう気まずいものは整理しておいてね、でカジュアルに総括することができないのは、死後かなり経って発見される残念な孤独死の割合が、40代から50代が半数弱を占める自治体があったりするからです。まだ元気であるはずの年代がひっそりと死んで問題となるには理由があります。もっと高齢になると病気がちになり、行政の目があったり定期的に通う病院があったりで、死んでもおかしくない前提で周囲も見ています。

 逆に、ある程度まっとうに生活していれば突然の死去など想定しない年代の人ほど、地域との繋がりが薄かったり、親族と交流が無かったりという「切り離された人々」であったりもするのでしょう。そして、実際に30代から50代にかけて起きる事例では、亡くなられた死体が腐乱して匂いはじめて、初めて周辺の住人が気づくということになるわけです。

■身近に潜む突然死のリスク

 男として思うのは、そのぐらいの年齢になって結婚せず一人暮らしをしていると、当然のことながら掃除は行き届かないばかりか、自分の好きなことに没頭する時間が長いこともあって、人にあまり見せられない趣味の類が部屋中に積み重なっていても何も不思議ではないということです。

 これは、良いとか悪いとかではなく、現代人として生きていくために認められているプライバシーや個人の権利を享受して暮らしていると、一定の割合でそういう問題も起こし得る人がいる、ということになります。突然死は全部が全部本人の責任ではないでしょうし、防げるものであれば不幸な事例を減らしたいのは人情です。でも、コンビニや郵便局などでもコミュニケーションを取りたがらない傾向が強い人がいるのも現代です。うっかり挨拶するとむしろ怪訝な顔で見られる社会において、とりわけ都市部で起こす比較的若い年代の孤独死が何を意味するのかはよく考える必要があります。

 そして、傾向としての晩婚化、非婚化で、家族との関わり合いもない、身寄りのない個人が今後激増することが分かっています。

 内閣府の調査でも、非婚割合の増大は問題だとしつつも、現代社会において現代人が合理的な選択をした結果、若いころに結婚をしないという判断をしたものの、中年、高齢になって本格的に誰も身寄りがいない、身許を引き受けようがないという事例がすさまじく増えている実態を憂いています。

婚姻・出産等の状況

 結婚しなかった、できなかったという理由は個人によって千差万別ですが、望まない死は避けなければなりません。

 一人で暮らしていて、突然凄い頭痛が襲ってきた、胸が苦しくなったという状況から自力で救急車を呼ぶまでの間に意識を失い、そのまま亡くなるケースは、やはり家族が不在である個人にとって最大のリスクにもなります。自分は健康は大丈夫、自分にはそういう悪夢は起きないはずだ、という思い込みや願いとは別に、何かこういう問題を救済できる仕組みがあるといいのですが。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/デイリーニュースオンライン presents 世の中のミカタ総研

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