西部警察を巡る「石原裕次郎・渡哲也」の激情バトル(1)「映画のため局の移籍を決意」 (2/2ページ)
「視聴率が落ちても、日テレが石原プロを養ってくれるんですか? 映画を撮らせてくれるんですか? 義理だ筋だというのは男同士の話であって、組織対組織は非情なもんでしょう。組織は社員を養っていく義務があるんじゃないんですか?」
渡は二人のやりとりを黙って聞いていた。どちらも一理ある。夢は男の宝だという。だが、夢を食っては生きてはいけない。夢を実現するためには越えなければならない壁があるのではないか。ジレンマを感じながらも、
(いずれにしても、俺は社長についていくだけだ)
と腹をくくっていた。
二人が帰った後、裕次郎は自問自答を繰り返す。「映画を撮る」を合言葉に社員たちは身を削るようにしてがんばっている。彼らの苦労を思えば、自分がこだわる義理や筋はちっぽけなものかもしれない‥‥。
裕次郎はテレビ朝日への移籍を決断する。
作家・向谷匡史