WELQ問題の真相を読み解く(1)「DeNAだけが謝って終わる問題だったのか?」~山本一郎×古田大輔×三上洋特別鼎談

デイリーニュースオンライン

やまもといちろう、WELQ問題の真相を読み解く(1)「DeNAだけが謝って終わる問題だったのか?」
やまもといちろう、WELQ問題の真相を読み解く(1)「DeNAだけが謝って終わる問題だったのか?」

『デイリーニュースオンライン』が送る、総合オンラインサロン「世の中のミカタ総研トークイベント」。4月6日(木)は、ホスト役を務める山本一郎、三上洋に加えて、BuzzFeed Japanの創刊編集長を務める古田大輔さんをゲストに迎え、DeNAの「WELQ」に端を発し、「Mery」などの他サイトにも波及したキュレーションメディア問題に関して同社が公表した、合計306ページに及ぶ「調査報告書(キュレーション事業に関する件)」の要点を読み解いた。

キュレーションメディアに関する疑惑は果たして払しょくされたのか、そして、DeNAのメディア事業が抱える本当の「闇」は何だったのか。ネットメディアに精通した識者の面々が、報告書の文面に隠された真実を明らかにする模様を、全3回の連載形式でお届けする。

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山本)改めて今日はよろしくお願いいたします。ということで、『世の中のミカタ総研』とは? というところから。

三上)(編注:プロジェクターに映った自分のプロフィール写真を見て)なんでこの写真から始まるんですか(笑)。

山本)なんか、かっこよくないですか? これ、鼻を切る前の。

三上)ITジャーナリストの三上と申します。このあいだ飛行機で貧血を起こして倒れましてですね、絆創膏をしております。

普段テレビ出ても、街角で指摘されないんですよ。でもこのあいだ三上さんですか?って、眼鏡かけていないのに気が付かれたんです。なんでわかったんですか? って聞いたら、ある番組で、“絆創膏をつけたジャーナリスト”としてツッコまれてしまったため。絆創膏をキャラクターにしていこうかなと…

山本)ありがとうございました。まったくこの会の説明になっていない気もしますが、よろしくお願いいたします。そして今日、ゲストにお越しいただいたのは、BuzzFeed Japanの古田編集長です。

古田)BuzzFeed Japan創刊編集長の古田と申します。よろしくお願いいたします。

山本)今日(古田さんに)来ていただいた大きな理由というのがあって、今回、(問題となった)キュレーションメディアを扱うにあたって、BuzzFeed Japan(の取り上げ方)が大きかったなと思っています。また、DeNA問題を提起した朽木誠一郎さんがBuzzFeed Japanに転職されるとか?

古田)4月にうちに入社して。

三上)あの人!BuzzFeed行ったの!?

山本)そうです。ギャラに惹かれて行ってしまいました。

古田)心意気で。

山本)心意気で。あっ、はい。そういうのもありつつ、今日は中間報告的、総括気味に話をしたいなと思っています。まず、キュレーションサイト問題って何だったんだっけ、という内容なんですが、今夜はDeNAの事例について、細かく内容を読み解いていきながら、適宜古田さんや三上さんのお話を伺いたいなと思っています。

本件第三者委員会報告書ですが、3月13日に、DeNAが第三者委員会の報告書を受け取った後、記者会見を行い発表しました。この中で、責任者に対する一部処分内容も表明しているわけですね。

ただ、この処分内容は、まだ履行されていないものがあります。まだ中川さん(※子会社である株式会社ペロリの代表取締役中川綾太郎氏)も、村田さん(※執行役員メディア統括部長兼Palette事業推進統括部長村田マリ氏)も、この報告書では「A氏」「B氏」になっていますけれども、きちんとした形で処分が履行されたという発表はまだありません。

まだ引き継ぎ等があるということで、広報の方からお話をいただいている状態なんですけれども。なので、今回はあくまで第三者委員会の報告書が出て、DeNA本体が経営的にこれからメディア事業をどう判断するか、というところでしかない。一ヶ月くらい経つんですけれども、まだそういう状態なのかもしれません。

今日はその報告書の中身を見ながら、これって何なんだっけね、ということをお話していきながら、解説をしていきたいと思っています。是非よろしくお願いいたします。

古田)よろしくお願いします!

三上)よろしくお願いします!


山本)これから何の話をするかっていうことを言うと、そもそも「キュレーションサイト問題って何でしたっけ」というキーイシューのご説明をした上で、報告書の中身を細かく読み解いていきたいと思っています。

いろんな角度から今回検証がされているんですけれども、冒頭で申しておきますが、これはものすごく問題をかかえた報告書です。自分らもダスキンやゼンショーといった社会問題を起こしたいろんな第三者報告書を読んできた人間として、今回のDeNAに関する第三者委員会報告書はあまりにも語られていることが少ない。

分量は277ページと厚いんですが、知りたいと思う事柄に関する記述が少ないこともあり、いくつか致命的な問題を抱えた報告書だろうと思っています。いわゆるその弁護士の間の勉強会とかでも、これで大丈夫か? っていう意見が出ちゃうくらいに気になる内容です。もちろんきちんとヒヤリングをしていていいものもたくさん指摘されてはいるんですけれども。

三上)知りたいはずのことが記述されていないのでは、報告書として厳しい部分があるとは業界内でも語られていますね。

■もくじ
1)DeNAキュレーションサイト問題ってなんだっけ
2)第三者委員会の調査報告書が出た内容を読み解く
3)今回の問題で、DeNAが積み残したこと
4)質疑応答

山本)DeNAキュレーションサイト問題の経緯をまず追っていきたいと思います。

我らの朽木誠一郎さんが昨年の9月10日に、キュレーションサイトの問題点として、WELQを名指しで取り上げました。

簡単にいうと、医療系のサイトで、医療的な裏付けがない記事を書いていいんですかという、ごく全うな指摘だったんですけれども、これがいろんな人の心にヒットしてですね、そうか、DeNAの「WELQ問題」というのがあるんだ、という話になってきました。

これが後の展開に関わってくるんですけれども、実はWELQ 問題はWELQだけの話に矮小化されてしまいました。確かにWELQは滅んだんですけれども、問題のある他のいろんなヘルスケアサイトというのが、温存されてしまったという部分があります。これは今回、この問題を認識して騒いで、DeNAだけがごめんなさいをしたっていうところに結構課題を残した、という風にもいえると思います。

有体に申しますと、巷で流れているヘルスケアや医療、健康を標榜するサイトについていえば、他にも死ねと思うところはいっぱい出てくるんですね。とはいえ、じゃあ彼らのどこに問題があるのか。そういう問題のあるサイトが横行するメカニズムと、それを支えるビジネスモデルそのものを第三者委員会がどう検証したのか、っていう重要な部分が、実はあまり出来ていないんです。

WELQは、たまたまある人の指摘で出火することになるんですけれども、SEO界では神といってもおかしくないという辻正浩さんが、「死にたいというワードの検索1位がDeNAのWELQだ」ということを指摘しました。これで朽木さんのまいた油に1本のマッチが擦られて落とされ、DeNAが大炎上していくんですけれども、このあたり、BuzzFeed Japanとして気づいていたことなんか、ありますか? 

古田)そうですね、僕らも、朽木さん、もううちの会社の人間なので朽木っていいますが、朽木が記事を書いた段階で、僕はあの時初めて気づいたんですね。なんかヘンなサイトあるんだねって言っていたら、社内でもやっぱりあの記事に注目した人間が何人かいて。そもそも一部では話題だったじゃないですか。見慣れないサイトがSEOで急激に1位にあがってくる、と。ただ、僕らは医学的な知識がなかったのでよくわからなかったけど、朽木の指摘をうけて本格的に取材しようという流れになったんです。

辻さんの指摘もまさにリアルタイムでみて、コレはもう、本当にやばいサイトだと。それで情報収集を始めたと。その時、僕らがいちばん最初に記事を書いた時の壁が何だったかっていうと、「我々はキュレーションプラットフォームで、一部のライターさんが書いたものについては責任を持てません」というプロ責法(プロバイダ責任制限法)で自分たちを守るという防御壁を築いてきたと。その防御壁をどう崩していったか、というのが僕らの展開だったんです。

山本)まさに、そこからDeNAがずるずると後退をしていく。途中で、「あなたの肩こりは霊の仕業かもしれません」っていう素敵な記事が堂々と出て、これは「肩凝り」で検索した時に検索で6位に出てくるんですね。除霊しましょう、みたいなのが出ちゃう。そのあたりから火がついていくんですけれども、その後なんだかんだいってWELQが陥落したのは2016年11月29日です。

で、この前に、WELQをたたむかたたまないかというのは、広告代理店さんにはその2週間ほど前から、11月15日ですね、ある種内示のような形で「問題になっているので、キュレーションメディアの広告営業をメニューからおろしてもいいですか」っていう話がありました。

この段階で、WELQおよびいくつかのDeNAパレットのサイトで問題が発生したというところで、掲載している広告に関してはお金をお返しします、もしくは企画が進んでいるものに関しては、キャンセルしますという申し入れがありましたと。もう一つあるのは、この会場にもちらほらアドテクをやられている方もいらっしゃいますが、陥落の29日の前に、アドネットワークでデジタル広告を配信する先としてWELQが消えます。

つまりこの時点から、DeNA側が問題を察知して、組織全体で対処しなければならないと認識したという事になります。さらにその後、12月1日、MERY以外DeNAパレットの8媒体が陥落します。これは当時「非表示」といいました。「表示を見合わせます」という言い方をしていたんですけれども、11月30日、8媒体陥落の前日ですね、このタイミングで、DeNAさんから広告代理店に対して、その他の媒体に関しても営業を停止しますという通達がされていました。ただしこれはMERY以外です。

もちろん、DeNAとしては問題のあるサイトなのだから非表示にして解決の道筋を示せば営業再開できるだろうと穏当に考えていたんじゃないかとは思います。

そして12月7日。MERY陥落の話が出ます。同日、12月7日にDeNAが謝罪会見をします。ここからキュレーションメディア全体が後退をしていくっていうことになります。

調査委員会報告書にもありますけれども、この段階で、特損(特別損失)を積み増す、という事をジャッジしたという風に書いてあります。38億円を計上します、というところにようやく来ました。最初朽木さんが書いてから、おおむね3ヶ月でDeNAのキュレーションメディア事業はほぼ全焼という事です。

ただ冒頭に申し上げましたけれども、WELQだけが問題だったんでしたっけ? と。様々な法律上の問題もありますけれども、WELQだけが問題だったのか。もしくはDeNAだけが謝って終わる問題だったのかという議論も出て然るべきだったのですが、そこまでの話にはなかなかなりませんでした。いろいろとくすぶるものがありましたが、第三者委員会を立てるというので、じゃあその中身を見てからDeNAの決意や物事の是非を判断しようか、となるわけですね。

業界に対する影響とは具体的になんなのかっていうと、Webにはいろんなゲスサイトもあれば、2ちゃんねる系まとめサイトもあり、さまざまなジレンマを抱えざるを得なくなるようなメディアが跋扈しています。そうすると、BuzzFeed Japanみたいにデマを潰しに行くぞというサイトもあれば、逆に記事タイトルで釣ったりデマ上等でやっているサイトもたくさんあるんです。そこらへんを見た時に、DeNA騒動っていうのは本当に意味がある騒動だったのかということを、本当は総括しないといけない。

古田)まさにその通りですね、WELQは悪目立ちした。SEOで上にいくために、毎日100本の記事を出していたと。膨大なコンテンツ量があるし、ありとあらゆる検索でWELQが1位に来てしまうから、目立って潰れた。けれども、それが消えた後に何が上に来ているのかというと、やっぱりこれまた、信用ならないサイトの情報が上に来ている。

法律的に問題がなくても、そもそもダメな情報っていっぱいあるはずで、そこらへんが片付いていない。しかもそれが医療・健康情報に留まらないんだと。医療・健康情報というのは薬機法(※医薬品医療機器等法。旧薬事法)というのがあるから、法律的にも問題があるけれども、法律的に問題がなくても、そもそもダメな情報っていっぱいあるはずで。そこの問題は、まだ全然片付いていないんですよね。

山本)第三者委員会を組んで調査報告書を出します、と謝罪会見の中で言うんですけれども、実際には、この段階でデマを流す情報サイトの問題はウェブでのメディア全体が取り組むべき課題であるはずがDeNAの問題という風に取られちゃったというのは、ジレンマだ思うんですよね。

まさに古田さんが仰ったように、薬機法、医療行為にひっかからない情報ならいいだろう、ということで憶測記事を大量にネットに流通させるのは、本当に大丈夫なのかということです。スキンケア、ライフハック系のところっていうのは、大体零細のメディアさんがやっていると。

たとえばlivedoorであったりとか、Yahoo!ニュースであったりとか、スマートニュースといったところに記事を配信することによって、別のブランドでもう一回記事が流れるといった時に、零細メディアであるにもかかわらず「Yahoo!ニュースで配信されてきたぞ」とアプリやウェブで読んで信じる人が出るんじゃないかという、別のところにも問題は波及していくべきだっていうところが、DeNAが派手に謝っちゃったもんだから、DeNAの問題じゃん、みたいな形になっちゃいました。DeNAは善意でしょうが、業界全体からするとこの流れはちょっと辛いんじゃないかと思うんですよね。

三上)(キュレーションの問題が)「WELQ問題」というメディアの取り扱いになっちゃったので。メディアが取り上げる時って、いろんな局面がありますよね。薬事法の問題、ウソの問題、SEOの問題、いろんな問題があるので、ものすごいぼやかされて、なんかわかんなくなっちゃうというところは確かにあった。

山本)そもそも何が法的に問題だったのか。あとできちんとご説明しようとは思うんですけれども、12月7日の謝罪会見のなかで、第三者委員会を組成して、調査を行いますっていうところまで言明します。そのときに名前が出たのが、岡村久道先生という、著作権ではいろんな意味で有名な弁護士の先生です。いろんな意味で有名な。著作権ではいろんな意味で有名な先生が来られて色々やられたんですけれども。

そして、3月13日。第三者委員会の報告書がでて、DeNAトップ会見がありました。喪服を着た3人(※DeNA代表取締役CEO 守安功氏、代表取締役会長兼執行役員 南場智子氏、DeNA執行役員経営企画本部長 小林賢治氏)が並ぶんですね。

第三者委員会の報告書を受け取りました、社としての処分を行います、ということに対してコミットするトップ会見であったと。会見の内容は、DeNAの誠意が読み取れる、良いものであったと思います。

ただし、具体的に処分としてコミットした内容でいうと、社長に守安功さんが留任になったし、中川さん(ペロリ代表取締役)と村田マリさん(執行役員メディア統括部長兼Palette事業推進統括部長)については(それぞれ)辞任の意向であって、これは解任ではありませんという話になりました。問題を認めて当時の責任者を解任するという話ではないとしたにもかかわらず、彼らの責任の追及を行うという謎な話になるんです。

そうだとすると、このキュレーションメディアに関する事柄は、別の問題として出てくるのかなと思います。そして伝説へと。なんで伝説としたかというと、実は問題はまだ終わっていないからです。

古田)どういう体制で再開されるのかというのが、疑問ですね。僕は正直いってMERYが好きだったんですよ。MERYの世界観であったり、コンテンツの作り方、中川綾太郎さんが仰っていた、“欲しいものが見つかる”というコンセプト、まるで友達に語りかけるようなコンテンツっていうやり方自体は非常に素晴らしかった。

あそこで誤っていたのは、著作権に対する認識の低さと、一部ではものすごく適当な記事があった。そこのクオリティコントロールが出来ていなかったということ。

じゃあ、なんで著作権とクオリティのコントロールが出来なかったのかというと、事業のコンセプトとしては素晴らしかったけれども、編集のプロがいなかったからですよね。じゃあ編集のプロをいれるの?と。

編集のプロを入れてコンテンツチェックを始めたら、今までみたいなコンテンツの制作スピードは保てないですよね、そうしたらそんなに儲けないですよと。儲けない事業をDeNAさんがメディア事業として頑張ってやるっていう判断を下せるのかというところですよね。

■経緯、発表など振り返り
1) 撤退が小出し
2) 関係会社への配慮
3) 初動の関係者の処分は適正だったか?
4) 各メディアのキュレーションサイト問題に対する報じ方は?

山本)経緯などを振り返りますと、撤退が小出しだったんじゃないかと。WELQが撤退するにあたって代理店さん、タイアップやネイティブ広告を切って、ここまでやれば大丈夫でしょうと思ったらほかのDeNAパレットの各サイトが燃えて、同じように広告を切って…と。

あと、忘れてはならないイシューとして、クラウドソーシングにまつわる話ですね。文字通り、SEOのためのクソ記事量産エンジンだったわけじゃないですか。クソがクソを呼ぶ展開になっていて、ある意味でSEOに最適化されたビジネスのゴールデンルールになっていたことは、報告書でも書かれていた通りです。これを合理的かつ効率的にDeNAがやっていたということになると、クラウドソーシング会社や広告代理店など、関係会社に対してやはり重大な配慮をしなきゃいけなかったんじゃないかと思います。

単純にいうと、広告主に対してPV保証をしていた可能性は高いのに、報告書では触れられていません。取引先に関する、とりわけ契約に関する事実関係は全くと言っていいほど報告書には書かれていないのです。ただし、周辺の代理店が証言していたように広告記事でクライアントに保証されているPVに対して、表示されるページが良質ではないコンテンツだったら、これは本来なら返金しなくてはいけない。

クラウドソーシングによる低質な記事によるSEOでかき集めたPVとは別に、ちゃんとした記事を社員やバイトが用意していたのかもしれませんが、良く分かりません。何故書かなかったかはわからないですけれども、報告書には書いていないので周辺の状況で類推するしかないのです。

加えて、関係者の処分は適正だったのかと。端的に申し上げれば、守安功さんが社長に留任する形になりました。報告書であれだけ責任を追及されておきながら、最終的には減給処分のみであって、社長のポジションは留任されると。責任を問うという言い方でしたけれど、これは適正だったのかと不思議に感じます。

問題の最後に、各メディアのキュレーションサイト問題に対する報じ方はどうだったのかというのはどうしても残ります。ウェブにかかわる我々メディア全体の問題だと言ったメディアがあったのかと。BuzzFeed Japanは書かれていましたし、例えば三上さんが読売新聞で書きましたけれども、読売新聞がその他でこの問題を取り上げるにあたって、我々ウェブに情報を上げる業者全体の問題ですって言いましたか?

三上)言っていないですね。

古田)本当にそのとおりで、特に今回、新聞系の記事は、“インターネットメディアがダメなんだ”という書き方でかなりまとまっていたんですよね。僕BuzzFeed Japanで記事を書いたんですけれども、朝日新聞さん、僕が前いたところですね、その朝日新聞さんが「キュレーションなるものがあるらしい」とツイートをしていたんですよね。ちょっと待ってください、僕朝日新聞にいたときにキュレーションやってましたけど、って思ったんですよ(笑)。

山本)大爆笑的展開ですね。

古田)僕、朝日新聞デジタルっていうところで、キュレーションという手法をやっていたわけで。キュレーションって、それ自体はなんの悪でもないわけですよ。ちゃんと著作権とかに配慮していれば、別に世の中で、BBCだってCNNだってガーディアンだって、みんなやっているわけです。だから朝日新聞でもキュレーションをやればいいじゃん、っていうことで、やっていたんですよね。

でもそれを新聞社のなかにも知らない人がいっぱいいて、あれはもう、インターネットメディアの人には全然倫理観がないに違いない!みたいな書きっぷりをしているところが多かったですね。

山本)結構もう、悪玉として、DeNAのような悪徳企業が進出したWebメディアが派手にやらかしたくらいの論調で大体統一されていたと思うんです。例えば東洋経済オンラインなど、経済メディアさんでは、非常に強い論調でDeNA批判をするんですけれども、キュレーション問題をいわゆるガバナンス問題に置き換えたものが多かったですね。もちろんDeNA固有の企業ガバナンスの問題ではあるんですけれども、何故それを成立せしめる体制ができちゃったのかとか、ビジネスモデル上どうだったのかという踏み込みはほとんどしていない。

これには理由があって、彼ら自身もプレイヤーであるといった時に、あそこはあの広告代理店が入っていたからダメなんだ、あるいはPR会社に起用してもらうためにはこのぐらいの媒体価値がどうしても必要だ、というようなことが起きていたのかもしれません。当然、ウェブメディアもモノ言えば唇寒しであって、お前が言うな批判を受けることもあることを考えると、ものが言いづらいのではないか、と。

そうなると、なかなか東洋経済オンラインであれ、ダイヤモンドであれ、DeNA問題があるからといって、それに関わっている代理店ごと真っ二つにすることはできません。もしくはPR会社、芸能プロダクションさんごとぶった切ることはできないので、じゃあもう一連のカルマは全部DeNAに背負わせようという動きが合ったように見えてしまう。

読売でも、三上さんの発言としては出しても、社としてキュレーション問題にどう取り組んでいくかというところはついぞ出なかったんですよね。

三上)読売は、社会部がこの問題をやっていましたけれども、結局自分たちの振り返りはまったくしていないですね。

山本)大手新聞社で言えば、読売新聞は比較的物事を冷静に判断されていたとは思います。ほかの新聞社にしても、本当は、今回のDeNAのキュレーションサイトに関しては、実際の収益構造はどうなのか、誰が売り上げをつけていたのかというところまで書きそうな気配はあったんですけれども、最後結局書かなかったというのはちょっとどうかなっていうところはあります。このあたり、産経さんとか朝日さんとかも、大体似たような論調でまとまってしまった。

最後は日経ビジネスですね。ここは井上理先生が「DeNA問題、もみ消された社内からの警告」として書かれています。ここでは組織内の問題ってことで、悪い言い方をすると暗礁化する、良い言い方をすると問題の核心を突こうとする。

最後にインターネット系、Tech Crunch Japanは第三者委員会の報告書を公表という事実関係を述べて、一部所見を述べるところもあったと。書いているのは(副編集長の)岩本有平さんですけれども、岩本さん自身も業界事情には詳しいので、どうしても矛先としては起きたことの解説というほうへ向かざるを得ないというところはあります。

一方、BuzzFeed Japanですね。たくさん書かれていましたけれども、これはもうウェブメディア全体の問題じゃないかとはっきり書かれていました。まだ書かれ足りないところがあるんじゃないかっていうくらいに興味をもって僕らは読んでいました。この問題に非常に詳しい方がライターにいらっしゃったりして、ほかのメディアとかなり論調は違うなというふうに感じたんです。このあたりいかがですか?

古田)そうですね。書き足りないことはいっぱいあって、まだ書き続けるつもりなんですよね。それは二軸あって、ひとつはDeNA社の対応に関しても、まだ話として終わっていない部分がありますよねっていう話と、今山本さんから何度もご指摘があったように、メディア全体の問題として、DeNAだけに背負わせてはいい問題ではないですよね、という問題です。

前者に関しては取材を続けていますし、後者に関しては、日本だけじゃなくて、もう、世界で爆発している状況にあると。もうアメリカでも爆発しているし、ヨーロッパでも爆発していると。同じことは日本でも間違いなく起こっているんだから、日本でもやっぱり、今アメリカとかヨーロッパとかで起こっていることに関して、僕らは取材を続けていて、少しずつ出していこうと。

ただ、1社だけやってもこれってダメだと思うんですよね。やっぱりステマ問題のとき、何でステマ問題で世の中を動かすことができたかっていうと、いろんな方が、それはもう山本さん、三上さんもそうですし、いろんな社が一斉に書いた。ああいう風になっていかないと、なかなか変わっていかないのかなというふうに思っています。

山本)今回、DeNA問題が出てくるまでに実質上3ヶ月近くかかったわけじゃないですか。いちばん最初、いち早く朽木さんが問題提起を入れて、そのタイミングが少し早かったのかな、と僕らは当時思ったくらいだったんです。で、一斉に書くってなかなかやっぱり難しくて。同じ問題を一斉にやろうとすると、僕らでいうとコンプガチャ問題があったんですよね。一般メディアから業界媒体まであのくらい横に一斉に書くとさすがに変わるんですよ。

でも変わらせるための落とし所を業界全体で考えようということを器用にできないと関係省庁は動かないし、ほかのメディアさんも同じ目線で問題について取り上げない。

三上)タイミング命、なところもありますよね。ほかに大きいネタが出てきてしまうと、やっぱり盛り上がってはくれない。当局も対応しないとなると、騒ぎ損になってしまう恐れもあるわけです。

【第一回了】

WELQ問題の真相を読み解く(2)「買収の経緯に関して極めて不透明」~山本一郎×古田大輔×三上洋特別鼎談

WELQ問題の真相を読み解く(3)「キュレーションメディア『的なもの』は悪だったのか?」~山本一郎×古田大輔×三上洋特別鼎談

古田大輔

バズフィード・ジャパン創刊編集長。1977年福岡生まれ、福岡育ち。早稲田大政経学部卒業後、放浪生活を経て、2002年朝日新聞入社。京都総局を振り出しに、社会部記者、東南アジア特派員、デジタル版編集などを担当。2015年10月にBuzzFeed Japan創刊編集長に就任。趣味は仕事。
https://twitter.com/masurakusuo?lang=ja

山本一郎

個人投資家、作家。1973年東京都生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一報、高齢社会研究や時事問題の状況調査も。「ネットビジネスの終わり(Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など著書多数。介護を手掛けながら、夫婦で子供三人と猫二匹、金魚二匹を育てる。
http://lineblog.me/yamamotoichiro/

三上 洋

セキュリティ・ネット事件・スマートフォン料金を専門とするITジャーナリスト。テレビ・ラジオ・雑誌などでの一般向け解説多数。読売オンライン「サイバー護身術」、アスキー「5分でわかる時事セキュリティ」などを連載。Ustream、ニコニコ動画などネット動画のプロデュースも手がけている。
http://www.sv15.com/

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