生物が海から陸にあがった理由は目の進化だった可能性(米研究)

カラパイア

生物が海から陸にあがった理由は目の進化だった可能性(米研究)
生物が海から陸にあがった理由は目の進化だった可能性(米研究)


 そもそももともとは海暮らしのアリエッティで、進化の過程を経て陸地へと移動していったらしいじゃん、地球内生命体とか。

 だがあまりにも昔すぎてその全貌は解明されていない。これまで、地球内生物が海棲から陸棲へと進化していったの理由として、手足を獲得したからだという説が有力だったが、ノースウェスタン大学とクレモント・マッケンナ大学、スクリップス・アンド・ピッツァー大学の最新の研究によると、実はそうじゃなくて、視力の発達が原因だと言う。
 
 ワニのような生物が、まず最初に陸にいる獲物を見つけることができるようになり、それから手足が発達して陸に上がるようになったというのだ。


Our short-sighted inner fish: Vision explains why our fish ancestors came on to land

・目が大きくなり視界が広くなってから脳の発達へとつながった

 ノースウェスタン大学の神経科学者でエンジニアのマルコム・A・マクルヴァーと、クレモント・マッケンナ大学の進化生物学者で古生物学者のラーズ・シュミッツは、化石の記録を調べ、水中から陸上に上がったあとではなく、その前に目の大きさが3倍近くになっていたことを発見した。

 目が大きくなると同時に、目の位置も頭の側面から上になり、水上の視野が広くなった。これが、結果的に陸生脊椎動物の大きな脳の発達へとつながり、魚のようにものに単純に反応するだけでなく、計画をたてて行動することができるようになったという。

なぜ、わたしたち生物は3憶8500万年前に陸上にあがったのか? それは視力が関係しているのではないかと、初めてわたしたちは考えました

 とマクルヴァーは言う。

陸に上がる前から、脊椎動物の視力が格段に良くなったことがわかりました。わたしたちの仮説はこうです。ヤスデ、ムカデ、クモなどまだ手つかずのエサが陸上にたくさんいるのが、水中から見えたのがすべての始まりではないかと。その後、ヒレから手足が発達することになったのです

 ちなみに無脊椎動物は、わたしたちの祖先の脊椎動物より5000万年早く陸に上がっている。

 目が大きくなったことは重要なファクターだ。水面に目が出るだけで、魚は水中から見るよりも70%も遠くを見ることができる。目の大きさが3倍になれば、視界は100万倍にも広がる。これが、陸に生物がはびこる何百万年も前に起こった。

1_e15


・大きな目は水中でなく陸上で優位

 「大きな目は水中では役に立ちません。すぐ目の前にいるものに視野が大きく制限されるからです」と、シュミッツ。

しかし、大きな目は空中を見る場合はとても価値があります。進化の過程においては、相殺取引が生じることが多々あります。目が大きくなることによって起こる代謝の損失は果たして水生生物にとって価値があるのでしょうか? なにが決め手になるでしょう? それは、陸の獲物を探すことができることだと考えています

 結果的に大きな目になったとしても、水中ではそれほど視野は広がらないことはわかっている。実際、陸に上がった後であらわれた生物の中には、水中生活に戻ったグループもある。そうした彼らの目は現在の魚のようにまた小さくなった。

 この「陸生脊椎動物の誕生に先立つ視界の飛躍的な広がり」という論文は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に3月7日付で掲載された。

2_e9


・視覚能力の向上により、認知能力を向上させていった

 視覚の能力があがったことで、手足をもつ初期の生物たちがより複雑な認識力を発達させることができた。

 視界が限られた水中では不可欠だった、瞬時に反応するスピードはそれほど必要なくなり、予測認知といった人間がもつ能力へと進化することになった。つまり、未来を見越した選択肢を比較検討して、戦略を選ぶ能力だ。

 マクルヴァーとシュミッツは、水中から陸上へ移行する前の時代、移行中の時代、移行後の時代の59の化石標本を調べた。

 そして、それぞれの生物の視界環境をコンピューターシミュレーションした。(例えば、昼間の澄んだ水や淀んだ水、昼間や夜間の水上など)それによると、目が大きくなることのメリットは、生物が水中からではなく空中を見ているときに実現できることがわかった。

5_e9

 化石の眼窩の大きさと頭部の長さを測って、そこから目の大きさと、その動物の体長を割り出した。すると、陸上に上がる前は、眼窩の直径は平均13ミリだったが、陸上に移行した前後のものは36ミリだった。

眼窩の大きさが3倍になるのに、1200万年かかったのです。この進化の時間のスケールの壮大さに驚きを隠せません

 ふたつ以上の学問分野にまたがって研究を進めることによって、マクルヴァーとシュミッツは、わたしたちの水生の祖先が広い視野で陸上に豊富な食べ物を見つけたことによって、情報のジップライン(高い地点から低い地点へ移動すること)をたどったことを示した。

 わたしたちの祖先を水中から陸に移動させたのは、手足ではなく目だったのだ。


via:.northwesternpnassciencedailyなど/ translated konohazuku / edited by parumo
「生物が海から陸にあがった理由は目の進化だった可能性(米研究)」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る