台湾で起きた日本人像「首切り事件」の闇

まいじつ

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台湾の烏山頭(うさんとう)ダム建設の功労者である日本人技術者の八田與一(はった・よいち)氏の銅像が、4月16日早朝に頭部を切り落とされる形で破壊された。

このニュースは台湾で大きく報じられ、翌17日になって中台統一を目指す中華統一促進党の元台北市議会議員の李承龍が犯行を自供し、当局に出頭した。

すると今度は、4月22日に台湾の台北市北部陽明山にある公園付近で、台湾初代総統で国民党の最高指導者だった蒋介石の銅像の頭部が切り取られ、赤いペンキが掛けられているのが見つかった。壊された蒋介石像の台座には《国民党が住民弾圧した2.28事件の元凶、殺人魔》と落書きがされていた。

八田像の損壊で容疑を認めている李承龍は、「日本統治時代の歴史が“美化”される一方で、蒋介石の歴史的貢献への評価が無視されていることへの反発からやった」と述べた。李は、台湾独立阻止と沖縄独立をもくろむ中国とつながりのある統一促進党員だ。

台湾内部に存在する2つの民族閥

「李は、『中華民族琉球特別自治区準備委員会』という、中国政府の息がかかっている組織とのつながりも指摘されています。統一促進党が、日台の絆の象徴である八田與一像を破壊。これに反発した勢力が“報復”として蒋介石の銅像を破壊。親日派対親中派という、ある意味分かりやすい構図です」(在日台湾人ジャーナリスト)

台湾は東日本大震災の折、200億円もの義援金を贈ってくれた親日国家だが、内情は複雑である。

「台湾には、大きく2つの勢力が存在しています。日本統治以前から台湾に移住して定住していた人と、その子孫(本省人)。もう一方は、中国大陸での毛沢東率いる中国共産党との内戦に敗れて、蒋介石とともに台湾に移住した国民党の要人と、軍人らの子孫(外省人)です。台湾に襲来した国民党軍は、日本統治時代に作られた水道水に驚き、壁に穴を開け、蛇口を取り付けたものの、水が出ないのを『何で?』と不思議がりました。水道敷設という技術を知らなかったのです。八田與一氏は、台湾のこうしたインフラ整備に貢献した、台湾人にとっては大恩人なのです」(同・ジャーナリスト)

国民党は中国と手を結びたい。一方、現在与党の民進党は、どちらかというと親米親日だ。両者のせめぎ合いをよく現した事件である。

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