33度のニューヨーク経由で来日も…。アイルランド代表の不安と決意。

ラグビーリパブリック

スピードあるラン、低いプレーのFLジョシュ・ファンデルフレイヤー。(撮影/松本かおり)

 これくらいの気温だったら大丈夫かな。

 先週末のツアー初戦、アメリカとのテストマッチのため滞在したニューヨークも暑かった。だからFLジョシュ・ファンデルフレイヤーは、冒頭のような感覚だった。

「ニューヨークは暑かった。試合の日は、息をするのも辛いぐらいでしたから」

 6月17日に静岡で、翌週24日に東京で日本代表と戦うアイルランド代表が6月12日(月)に来日し、13日には軽い練習とメディアセッションに臨んだ。雨の降る12日の東京は肌寒い天気だった。

 55-19と快勝した6月10日のアメリカ代表戦。ニューヨークにて、その準備を進めた日々の中には33度の日もあったという。それに比べたらマシだな。雨降る東京の午後にそう感じたファンデルフレイヤーだったが、今週末のむし暑さはこんなものじゃないと伝えられると、「またタフなゲームになる。チャレンジャーにならないと」と苦笑した。

 ファンデルフレイヤーは強豪レンスターのFLとして活躍するバックローで、テストマッチには2015年ワールドカップ後におこなわれた、2016年のシックスネーションズでデビューした。以来、8キャップを積み上げた185センチ、98キロの24歳は、自身も出場した先のアメリカ戦を「FWがプレッシャーをかけることができて9トライを奪うことができた」と話した。

 ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズのニュージーランド遠征に主力11人が帯同しているため、来日スコッドには若手が多い。しかしファンデルフレイヤーは、チームはよくまとまっていると話した。

「ワールドカップを経験しているベテランも何人かいますし、アイルランドには4つのプロヴィンシャルチーム(地域代表)しかないので、普段からともにプレーしている選手も多ければ、(対戦相手として)よく知っている者ばかり。だから結束できています」

 ジャパンがルーマニアを33-21で破った試合の映像は見た。ボールがなかなか止まらぬ素早い展開が印象に残った。スピードも。だから、「これから強度を上げた練習をやって、試合でもそれを続けたい」。

「(NO8アマナキ・レレィ)マフィとリーチ(マイケル/FL)のふたりのバックローはいい選手ですね。(同じ3列の自分にとって)タフなチャレンジになると思います」

 報道陣の前に姿を見せたHOナイアル・スカネルも「時差と長旅に疲れているが、試合までにシャープにしていきたい」と話した。そして、「スクラムやラインアウトが勝敗の大きな要素となる」。

 6月17日のエコパスタジアム。グリーンの塊がホームチームに襲いかかることは約束されている。

 キッキング&スキルコーチを務めるリッチー・マーフィー氏は、中核を多数欠くメンバーも、全勝で母国に戻るつもりだし、その自信はあると言った。アメリカ戦で期待の若手、SOジョーイ・ベーカーが負傷して来日せぬまま母国に帰るアクシデントはあったが、補充選手のないまま戦いに挑む。

「若手が多いとはいえ、インターナショナルスタンダードに近い顔触れが揃っています。2019年の(ワールドカップ)スコッドに入る可能性がない選手はひとりもいません。ライオンズ組の穴を埋めるベテランより、これからの可能性を秘める若い選手たちです」

 アイルランドでは16歳からタレント発掘に力を入れ、4つのプロヴィンスのアカデミーで育成し、トップチームに引き上げるシステムが、同国代表の強さを長く支えてきた。それぞれのカテゴリーでS&Cやスキルをみがき、土台を確かにすることが、のちの飛躍を呼ぶ流れを生んでいる。

「例えば今回のスコッドの中のLOジェームズ・ライアンは15歳から育成システムの中で才能を伸ばし、20歳になりました」

 203センチ、108キロのビッグボーイは、先週末のアメリカ戦でテストデビュー。日本でもキャップを増やすかもしれない。

 そんな若き才能を多数抱えてジャパンと対峙するアイルランドだが、先ばかりを見て戦っていくつもりはないと、マーフィー・コーチは言った

 2019年のワールドカップで使用するスタジアムを使って戦えるのは幸運も、本当に重要視しているのは2年後に向けての視察という要素ではなく、ツアーの残り2試合に勝つ結果。若い選手たちも、それを手にすることで押しも押されもせぬ存在になることに集中する。

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