シンシン出産でから騒ぎ? 中国の外交武器パンダに秘められた密命 (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

■中国の外交武器パンダで兵糧攻めも?

 中国のいわゆる<パンダ外交>は、日中戦争期に宋美齢が米国に二頭を送ったのが始まりとされる。国民党指導者(蒋介石)の妻として対米宣伝工作を担った彼女は、パンダ贈呈で米国を中国へと接近させ、対日参戦へと誘うことが目的だったのだ。

 以降、外交や条約において親中国の姿勢を見せた国に送るなど、完全にパンダは中国外交の武器となっていく。もちろん中国と各国に友情と絆が生まれるならば、それはそれで結構なこと。中国が国際社会の中で優しく友好的に振るまってくれれば、慣れない国に行かされたパンダも本望だろう。

 だが、

「基本的にはレンタルが多く、中国がパンダを<くれた>わけではない。日本の場合もシンシンらの所有権は中国にあり、レンタル料金として年間で一億円近くを支払っている。またパンダの赤ちゃんが成長したら、中国への返還義務が生じる。つまりパンダが中国以外で増えないようコントロールしているわけです」(外交ジャーナリスト)

 単なる友情では無いし、中国の気に入らないことをすればパンダを召し上げ、次の供給はしない。いわば<パンダ兵糧攻め>で、人権問題で軋轢があったドイツには長く貸与されなかった(注5)。パンダ狂の日本なぞ、もし枯渇させられたらパンダ欲しさに尖閣諸島くらい差し出してしまいそうだ。

 ——誰もがシンシンの赤ちゃんが健やかに成長して、愛らしい姿を見せてくれることを待っている。が、その陰には大国のエゴや狡猾な戦略があることへの注意も必要だ。そして何よりも、本来はチベットの動物であるパンダがなぜ中国のものになってしまったのか……を考えなくてはいけない。

(注1) シンシン前回の出産…5年前。
(注2) 圓生とランランの訃報…圓生は1979年9月3日の夜半。ランランは4日未明だったが、新聞には同日に出た。
(注3) クマ科…クマ科ジャイアントパンダ属ジャイアントパンダ種。
(注4) 竹や笹だけ…野生のパンダは、まれに羊や牛を食することもある。
(注5) ドイツへのパンダ貸与…5年前に最後の一頭が死んでから放置されてきたが、今年7月のドイツG20に合わせてパンダが来る模様。

著者プロフィール

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コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ

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