豊田真由子女史の暴行騒動を一個人の問題で終わらせて良いのか|やまもといちろうコラム

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豊田真由子女史の件、一個人の問題で終わらせて良いのか(写真はイメージです)
豊田真由子女史の件、一個人の問題で終わらせて良いのか(写真はイメージです)

 山本一郎(やまもといちろう)です。仕事柄、いろんな変わった人と遭遇したり観察したりする機会が多いのですが、テレビでも自民党からの離党を表明した豊田真由子女史の「このハゲーーーーッ」には驚愕の声が集まっておりました。確かに身の回りのヒステリー持ちに困惑させられる機会のある身としても、やられたときの心臓がキュッとする感じを思い出して冷や汗が出る思いです。

衆議院議員 豊田真由子 公式ホームページ

 常識的には、経歴の素晴らしさや志の良さだけでは議員バッジを維持することはむつかしいかもしれません。ほとぼりが冷めるまで心身症で入院しつつ、気持ちの整理がついたころに謝罪会見、流れによってはそのまま議員辞職して補選になるかどうか、といったところでしょうか。これが上西小百合女史のように維新からの離党後も元気よくほうぼうでネタを振り回る感じでもなさそうな豊田女史は、そのまま消えていってしまうんだろうか、と思ったりもします。

 豊田真由子女史の顛末については、学生時代からの同窓を名乗る田中女史とかいう変わった感じの女性がセカンドレイプ気味の記事を書いたりして、読む者に「こういう馬鹿にしゃしゃり出られて、豊田女史も可哀想」という気持ちにさせるプレイが見られました。また、その豊田女史の秘書だった田中慧さんが寄せているコメントが興味深い内容でしたので、興味のある方は併せて御覧いただけるといいなと思います。

豊田真由子さんと私の関わり

 今回の件は、国会議員である豊田女史が部下、秘書に強い叱責をしたということでその人間性が話題になったわけですが、実際のところ、官公庁や地方自治体の仕事をしていると、このような問題にブチ当たることはままあります。というのも、特定の政策や事業などで地元の説明会を開くと、かなりの割合で「訳の分からないことを言う住民」に遭遇することになるからです。

 一番恐ろしいのは、遠巻きに立ち会っている当方が身の危険を感じたり、説明している公務員が殺されるんじゃないかと感じるほど、どうしようもない殺気だった状況に陥るケースです。説明を聞いている側がいきり立って、いまにも壇上で説明する公務員に殴りかかるんじゃないかというぐらいの状態になるのを見ると、こりゃ容易じゃないぞと思うわけですね。

 私個人の経験で言えば、以前復興庁の仕事を少し手伝った際に、いまひとつ根拠のない不安に駆られた地元住民が「お役所はデータを隠している」と説明会の最中に怒り始めて、議事の進行を妨害して必要な説明が充分にできなかったという事例がありました。こう書くとなんか大変だったんですねぐらいの話に見えてしまいますが、それはそれは会場全体が怒りと困惑に満ちていました。人生を振り返って、債権者集会のようなまだカネの繋がりでああだこうだ失敗した経営者に文句を言うレベルはまだマシだったと感じるぐらいです。会議室が熱気というよりは殺意で満ちていました。

 それも、説明の場に立っている地方公務員は、もちろん責任者ではあるんでしょうが、彼に怒りをぶつけてもどうしようもないのです。また、怒る住民の側も生活の安全を脅かされた思いも、明日から家族を抱えてどうしようという悩みも両手いっぱいに抱えていますから必死です。普段の日常生活であれば、誰かを傷つけたり殴ったりするようなことなど絶対にしなさそうな人たちが、自らが不当な場に追いやられていると思い込んだときの負のエネルギーというのは凄まじいものがあります。ずーっと、罵倒して叫んでいますから。声を枯らして。

■問題に直面したときの人間性

 最近だと、築地移転について不満を抱える仲卸業者への都庁職員や市場問題対策プロジェクトチームの説明に対して、ほとんど人間性さえも否定するかのような暴言めいた罵倒を重ねる質問者が後を絶ちませんでした。もうね、相手が社会人であるとか、人間の品性品格などというものをすべて捨て置いた、ガチの誹謗中傷を堂々と公務員の前で投げつけるわけです。

 こういうのを見ると、現代社会にもいろんなところに豊田真由子的なブチ切れワールドという小さな宇宙が存在していて、都度都度部下や秘書や公務員や立場の弱い人たちに鬱憤を晴らすような酷い言葉を荒々しく叩きつけることになるのだろうと思うわけですね。

 そして、それは日常的に何か問題があるたびに起こっていることであって、ある意味でそういうものをうまく捌くのが政治だ、行政だ、みたいな不文律すらも感じさせる事態になっているのでしょう。

 そういう悪辣なことを言う連中は議事妨害の内容をすべて文字に起こしてバンバン裁判を起こしてしまえばいい、という気持ちもなくはないですけど、先にも述べた通り怒りを表明している人は正義だと思い込んでいるわけです。豊田真由子女史も、田中慧さんが解説する通り悪しき政治を志した人とはとても思えません。問題に直面したとき立場の弱い人に何を言うかという人間性の問題であり、そういう問題を爆発させるのが政治の場である以上、官僚や公務員、政治家の秘書といった「公僕やそういう類の仕事の人」は良いやられ役になってまとめ切れて一人前みたいな社会になってしまっているのかも知れないのです。

 個人的には、そういう問題も乗り越えて、豊田真由子女史には開き直ってほしいし復活してほしいと思います。いや、別にハゲって罵られたいわけじゃないけど。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

やまもと氏がホストを務めるオンラインサロン/デイリーニュースオンライン presents 世の中のミカタ総研

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