バニラエアでの障害者搭乗、炎上でしか物事は動かないのか問題|やまもといちろうコラム (1/2ページ)

デイリーニュースオンライン

バニラエアでの障害者搭乗、炎上でしか物事は動かないのか問題|やまもといちろうコラム(写真はイメージです)
バニラエアでの障害者搭乗、炎上でしか物事は動かないのか問題|やまもといちろうコラム(写真はイメージです)

 山本一郎(やまもといちろう)です。幸いにしていまは自分で立てるほど回復はしているんですが、一時期親父お袋義父が揃って闘病中に車椅子という事態となりまして、ベビーカー合わせると4台同時稼働ということで家族で移動するにも用立ててもらった専用マイクロバスで、みたいな時期がありました。バリアフリーというのは非常に大事だなと思う一方、そういう車椅子での生活の利便性というのは周囲の理解や豊かさといった包含するものがしっかりないと、成立しないのだなということを痛感したわけであります。

 東京都はその点では、公共交通機関を無理に使わなければまあ何とかなるぐらいのインフラはかなり行き届いていた一方、車社会は当たり前の地方都市ほど、車椅子ではにっちもさっちもいかない場所がかなりあったのが印象的です。療養で三浦半島や房総半島に足を向ける機会があり、その際は病院施設周辺と、交通機関ぐらいしか実質的なバリアフリーは存在していなかったんですけど、周辺の人たちの助けがあってどうにかなったという事例を思い出すにつけノーマライゼーションとは何かと思ったりもします。

 今回のバニラエアの件なんかは典型例ですが、私はバニラエア側が設備を用意できていれば問題なかったという点で、バニラエアの対応に落ち度はあったろうと思います。問題となったその奄美大島では来月から導入する設備が入れば対応できたのだそうですが、さすがにちょっとね。ということで、既存マスコミではバニラエアの対応が悪いということでバッシングの対象となって、謝罪することになったわけであります。

 ただ、管轄の国土交通省からはバニラエアに対する注意に留まり、具体的な業務改善についてはすでにバニラエアが計画を進めている途上だったこと(来月には設備が入る)、またもともとの設備計画自体は平成32年(2020年)までに義務付けられているものであって、バニラエアは実質前倒しして対応をしていたわけですから、大きな問題となりませんでした。もちろん、この背景にはバリアフリー新法の話もあるのですが、それ以上にすでに高裁で一定の判断が出ていて、その中では最重要なものとして安全な航空機の運航を実現できることが前提となっています。

 当たり前のことなんですけど、障害者だバリアフリーだといって、積載可能な車椅子や障害者、通路幅なども考慮に入れねばならず、一口にノーマライゼーションといっても事前に航空会社に準備を要請することが必要だという現実路線は当然に敷かれておるわけです。アメリカでもAir Carrier Access Act(米国航空アクセス法/ACAA)の事項として(14 CFR Part 382)「事前に特殊な連絡を求めてはならない」一方、「48時間以内に必要とされる連絡は行う」よう求めているのが実情であって、必ずCRO担当者(連絡責任者)に連絡するよう求められているという実情はあります。

 障害者を差別してはいけませんという当然の内容に対して、しかし現実問題としてその準備は常に万全とは限らないという業者側への負担が青天井にならないような配慮はなされている、ということでもあります。

身体障害者の航空機搭乗についての一考察

「バニラエアでの障害者搭乗、炎上でしか物事は動かないのか問題|やまもといちろうコラム」のページです。デイリーニュースオンラインは、バニラ・エア炎上やまもといちろう連載などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧