静寂感の強い侵略を受ける異質映画「散歩する侵略者」 (1/2ページ)

まいじつ

静寂感の強い侵略を受ける異質映画「散歩する侵略者」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『散歩する侵略者』

松竹、日活配給/9月9日より新宿ピカデリーほかにて全国公開
監督/黒沢清
出演/長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己、小泉今日子ほか

“散歩”と“侵略者”の組み合わせが、一風変わったニュアンスを醸し出すこの“けったいな”題名に思わず惹かれてしまうね。オリジナルは劇作家・前川知大の率いる『劇団イキウメ』の同名人気舞台で、その映画化を長澤まさみ、松田龍平、長谷川博己、前田敦子、小泉今日子などの豪華キャストで行うなら期待は倍増する。おまけに、監督は黒沢清。近年も『岸辺の旅』(2014年)、『クリーピー 偽りの隣人』(2016年)などがあるが、個人的にはサイコ・スリラーの『CURE』(1997年)が大好きだった。その年のベストワンにもした。そんな黒沢“不条理”ワールド再び! だが、ヒロインの長澤まさみも大好きなので、これはもう見に行くしかないでしょう。

不仲だった夫(松田龍平)が、数日間行方不明になったあと、自宅に戻って来たが、妻(長澤まさみ)は明らかに以前とは違う印象を持つ。どうやら、夫は“地球を侵略しに来た宇宙人”に乗っ取られてしまったようだ…。一方、街で起こった一家惨殺事件を追うジャーナリスト(長谷川博己)も取材の過程で“異変”に気づく…。

ジャンル分けすると“宇宙人地球侵略もの”なのだろうが、ハリウッドのアホみたいなSFスペクタクル大作のドンパチとは全然ニュアンスが違う。ここでは“侵略”の形が“人間の概念を奪う”というユニークなもの。確かに破壊もある、炎上もある、パニックもあるのだが、騒然というよりも、どうも静寂感の方が強いのはなぜか。“いつの間にか骨折”があるように、これは“いつのまにか侵略”ではないのか。そして、人間はいっそ既成概念を奪われた方が、案外シアワセなのかも知れない? という逆説が面白い。

三十路になった長澤まさみの演技に期待

それにしても、長澤まさみはいいね。そこはかとない大柄感、スケール感、天衣無縫性がたまらない。

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