本好きリビドー(171) (1/2ページ)

週刊実話

◎快楽の1冊
『今こそ、韓国に謝ろう』 百田尚樹 飛鳥新社 1296円(本体価格)

 21世紀とはいかなる時代か? やや大袈裟な問いをその5分の1もまだすぎぬ現段階で無理やり立てるとすれば、筆者なら「パ・リーグと韓国が気が付けばお洒落になっていた時代」と答えるだろう。ただ前者はさておき後者に限っていえば、洗練されたのはドラマや映画、そして人海戦術のごとく似たような顔の面々が大量生産されて次々とデビューを飾るアイドルグループなどといったいわば文化的な外ヅラだけの話。
 最終かつ不可逆的なはずの一昨年末の日韓合意を完全に無視した上、もはや偏執狂的としか形容しようのない世界各地への慰安婦像建立運動、対馬から盗まれた仏像の未返還を裁判所が正式に認める無法ぶり、「日本海でなく東海と呼べ」に象徴されることあるごとに難癖を付けてくる国を挙げて筋金入りのストーカー状態に顕著な政治的劣化と迷走は加速度を増して目を覆うばかりだ。
 と、こう書くと必ずさかし気に“日本も決して人のことをとやかく言えた義理ではない”と当たり前のお説教を垂れる輩が出現する。そういう手合いがかつて朴槿恵が大統領に当選した際に“それに比べてまだ女性指導者が出ない日本の後進性”を嘆いてみせる、この茶番にもいい加減うんざりなところだが、だからといって本書は巷にあふれるいわゆる嫌韓本の類とは厳しく一線を画す。
 著者はタイトルに極めて忠実に、歴史的事実のみに即して、むずかる幼児を滔々となだめ論すような筆致で、韓国に対して日本への「誤解」をひとつひとつ解きほぐしてゆく。半島統治の以前、以後を笑いながら学べると同時に、終章に到って涙を催す読者もいるかもしれない。
 おもろうてやがて哀しき、絶頂期の松竹新喜劇を想わせる至芸だ。
(居島一平/芸人)

【昇天の1冊】
 裏社会に生きる人々にはとかく暴力のイメージがつきまとうが、心理戦にもめっぽう強い。口八丁手八丁の話術や、相手から反論を奪う論理的な会話法、さらに威嚇と脅迫など交渉術は巧みだ。
 そうした手練手管の談判テクニックを解説したのが『裏社会の危険な心理交渉術』(総合法令出版/1300円+税)だ。著者の内藤誼人氏は心理学者。

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