プロレス解体新書 ROUND67 〈新旧スターの“魔性”対決〉 変幻自在のムタに猪木がマジ切れ (1/2ページ)

週刊実話

 1994年5月、新日本プロレスによる福岡ドーム2度目の大会『レスリングどんたく in 福岡』が開催された。メインイベントでは、引退を控えたアントニオ猪木と日米を股にかけるトップヒールのグレート・ムタが激突。多くのファンが心躍らせて見守る中、新旧スターの対戦は意外な展開を見せることになった。

 プロレスに限った話ではないが、スター選手がそろえば必ず好勝負、名勝負が生まれるというものではない。互いに守るものが大きいからこそ、逆にそれぞれの持ち味を出し切れないまま凡戦に終わるというのは、往々にしてあることだ。
 「総合格闘技のPRIDEで、その草創期にとある看板スター選手が“顔はダメだよ”と言ったなんて噂もありました。何でもありと言いながら“勝ち負けはともかく自分は顔も売り物だから、顔だけは殴らないでくれ”と、対戦相手に注文をつけたというんですね」(スポーツ紙記者)

 スター同士の対決ということで戦前から観客の期待が高いぶん、凡戦に終わったときの落差は余計に大きなものとなる。
 1994年5月1日、福岡ドーム(現・福岡ヤフオク!ドーム)でのアントニオ猪木vsグレート・ムタの一戦も、そうした試合の一つと言えるだろう。
 今さらその偉業を並べるまでもない“生ける伝説”の猪木が、遠くない将来に迫る引退に向けたファイナルカウントダウンの第1弾。対するはアメリカでトップを張ったスタイルそのままに、新日マットでも一大旋風を巻き起こしていたグレート・ムタである。

 まさに新旧トップスターの激突とあって、当日の会場には遠くから飛行機代をかけてまで、足を運んだファンの姿も多く見られた。
 「マッチメーカーとしても、人気絶大の2人を並べた上に猪木の引退までの記念試合と銘打てば、万事OKという考えだったのでしょう。実際、それで客が入ったのだから、その意味では正解だったわけですし」(プロレスライター)

 共に千両役者だけあって、入場時から早くもムードは最高潮。大歓声を背にリングに向かう猪木をムタが花道で待ち受け、会場全体に緊張が走ったところでムタがさっと身を引くと、ロープを広げて猪木をリングに誘う。
 猪木は奇襲に備えて視線を切ることなく、ファイティングポーズをとったままリングに足を踏み入れる。

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