日本人の精神そのもの…中国人が神社参拝から学んだ”神道の本質”とは?

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神道は日本人の精神そのもの (C)孫向文/大洋図書
神道は日本人の精神そのもの (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家・孫向文です。

 2017年8月29日、僕は日本の友人の紹介で関東某所にある神社を訪れました。この神社に祀られている神は、日本神話の主神であるアマテラスの弟・スサノオノミコトと妻であるクシナダヒメです。つまり夫妻を祀っているため、この神社のご利益は夫婦円満、安産、家族繁栄、縁結びとされています。この神社は1500年以上の歴史を持つといわれており、これは神道が古より日本の人々に愛され大切にされてきた証拠です。

 それに対し、中国の歴史では王朝が交代するたびに、「易姓革命」の名の下に前王朝が築き上げた文化遺産は徹底的に破壊されました。それは宗教的建築物も例外ではありません。神道、その統治者である天皇家が連綿と受けつがれている日本は、2000年以上前から統一した歴史が継続しています。

■日本人になりたければ神道を学ぶべき

 僕は今の時点(2017年9月現在)から約2年間日本に滞在すれば、帰化申請の権利を取得できます。その思いは2017年8月18日に刊行した近著「日本人に帰化したい!!」(青林堂)内で詳しく記述したのですが、今後日本人となる以上、日本の精神の根源である神道を理解する必要があると思ったのです。外国人が日本への帰化を希望する場合、まずは神道や天皇を学ぶべきです。

 2008年、当時中国に住んでいた僕は、日本に観光旅行に行った際に購入した「神道いろは」(神社本庁教学研究所)という書籍を読んでいたので、神道についての基礎知識はある程度把握しています。神社を訪れた当日、神職のNさんに案内していただきました。

 Nさんの話によると、神社に仕える人々の仕事は平日と祝日や年末年始では全く異なるようで、平日は境内の掃除やお手水の浄化が主な作業になるそうです。これは「穢れ(悪しきもの)を祓う」という神道の思想に基づいたものでしょう。街の道端にゴミが落ちていない、家の掃除を毎日行うなど、日本人は世界でも突出して清潔な民族ですが、それは神道の思想が影響しているためかもしれません。

 神社の境内に祀られる神に捧げられるお供え物は毎日交換されますが、米、酒、魚、野菜とその種類は多種多様です。神道は禁忌となる食物がほとんど存在しないのが特徴です。「不殺生」をとなえる仏教では獣や魚肉を捧げることは禁止され、宗派によっては食べることすら禁じられます。

 一方、神道では「慰霊」を行い、食物となった動植物やそれを生み出した自然に感謝します。一見、仏教の方が慈愛に満ちた思想に感じられますが、自然界には「食物連鎖」の法則があり、一部の動植物が食べられることなく大繁殖してしまったら生態系のバランスは大きく崩れます。あらゆるものを分け隔てなく食する神道の思想こそ、自然の摂理に近いものと言えるでしょう。

 穢れを避ける神道では、数少ない禁忌として、三ヶ月以内に法事に参加した者、血液が付着した者や生理中の女性が境内に立ち入ることは敬遠されます。しかし、動物の死体はお供え物として持ち込むことが可能です。これは人間と動植物を区別しない神道ならではの発想といえますが、神職に就く人々は神事を行う3日前からは飲酒と肉食を控えるそうです。ちなみにNさんの話によると、平日と年末年始、祭日ではお供え物の内容が変化するそうです。

 神社内で一番位の高い神主になるためには、大学の神道学科、もしくは神職養成所で学び、神社側から直接任命される必要があります。古くから続く神社は一族代々が世襲で神主を担う例が多いようです。

 以前の僕は神主には生粋の日本人、それも格式の高い家柄で育った人物しか担うことができないと思っていたのですが、資格さえ満たせば外国人ですら就任可能であることをNさんから教わりました。後で調べたところ、実際に外国人が神主を行う神社が存在するそうです。日本のいわゆる「萌え作品」の影響により、巫女に憧れている外国人女性は少なくないと思いますが、彼女たちも神道の精神をある程度理解すれば実際に巫女になれるのです。

 最近、「日本には人種差別がはびこっている」、「社会が排外主義化している」と日本の左派層は主張していますが、神道の姿勢を見ればそれが全く嘘であることは明白です。

 僕が中国・杭州市の企業に勤務していたころ、出張で杭州市に訪れた日本人と食事を共にする機会があったのですが、その方は「日本の神社は国家から税金を支給されて運営している」と語っていました。

 しかし、それは昔の話のようで、現代の神社は氏子からの贈呈や、お守りやおみくじの販売、賽銭など民間からの寄付金を主な収入源にしている例が一般的であるようです。しかし、日本全国に数多くの神社が所在するにも関わらず、経営難で倒産したという話は聞いたことがありません。これは日本の多くの人々が神道を愛し支えている証拠だと思います。

 僕を含め、外国人にとって神道の一番不思議な点は御神体の存在です。仏教の仏像、キリスト教のマリア像など、宗教では信仰の対象をかたどった像を制作し、信者はそれを拝むのが一般的ですが、「かみしろ(神社)」と呼ばれる神道の御神体は境内の中心部に収容され、一般公開は神に対する不敬とみなされ、神主ですら閲覧されることを禁じられます。

 日本の漫画などで得た知識によると、かみしろは木や石で作られていることが多いようですが、実物を見たことはありません。後日、日本の知人に聞いた話によると、アニミズム(精霊信仰)を元にする神道には、神とは「目に見えない存在」、すなわち自然そのものが神であるという思想が根底にあるそうで、神が形あるものと見なされるようになったのは、仏教など外国の宗教の影響であるそうです。

 そのため、神道では神の姿形は重要視されないのです。その説を受け、僕は日本人の傍らには自然、すなわち神がいつでも存在し見守っていると確信しました。日本の製品が精密で耐久性が強く、日本人がものを大切にするのは、そこに神が宿っているからです。

 神社の参拝は、現代では自分の願い事を神に実現してもらう行為とされていますが、本来は「日頃、神に見守っていただいていることに対しての感謝」という意味合いであるそうです。日本人は無意識のうちに神に見守られ、またそれを感謝しているのです。

 台湾、ハワイ、グアムなど、近代になって日本人が移住した土地には大抵小規模な神社が建設されていますが、その行為により地元の宗教との対立が発生したという例は皆無です。

 自然崇拝的な面が強く、あらゆる意味で寛容な精神を持つ神道は日本人の精神そのものです。宗教ですらないという学説が存在するようです。僕は平和、民主的な思想の神道に非常に共感します。

 日本に帰化後、僕がもし入籍できた時は神前式で結婚式を挙げることを希望しています。その願いが叶うように、僕は神社の取材時に縁結びのお守りを買いました。神の前で結婚を誓った時、僕は身も心も日本人となるでしょう。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。

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