吉田豪インタビュー:西野亮廣・中編「実はアンチいないんじゃないか説が最近出てきている」

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吉田豪インタビュー:西野亮廣・中編「実は西野にアンチいないんじゃないか説が最近出てきている」
吉田豪インタビュー:西野亮廣・中編「実は西野にアンチいないんじゃないか説が最近出てきている」

 プロインタビュアーの吉田豪が注目の人にガチンコ取材を挑むロングインタビュー企画。お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣さんをゲストに迎えた第2回では、西野VS吉田の因縁のエピソードからスタート。その他、『はねるトびら』出演時に感じていた焦り、実はアンチいないんじゃないか説、『ゴッドタン』や『アメトーーク!』でイジられることで見えてきた自分の立ち位置などについて語っていただきました。

「吉田豪を蹴とばしてやる!」事件

──そんな西野さんはボクとはいろんな因縁もあったりするわけですけど。

西野 どういう話でしたっけ?

──10年ぐらい前、ボクが出ていたTBSラジオの『ストリーム』という番組で、ボクが出る前のコーナーが『M-1』の優勝者予想で本命にキングコングを挙げてたから、ボクのコーナーで「キングコング本命はないですよ」って言ったんですよ。そしたら司会の小西克哉さんが「キングコングってなんだっけ?」って聞いてきて。ちょうどその2週間前に芸人さんがモテる技術について語る『モテもん』(2007年/祥伝社)っていう本を番組で紹介してて、そのなかでアイドルに手を出してた人が2組いたんですけど、その2組ともが「アイドルに手を出すわけないじゃないですか。だって仕事仲間ですよ?」みたいな綺麗事を言ってたいけすかないヤツだ、とか言ってたんで、「あれですよ、アイドル食いのいけすかないヤツですよ」って言ったのを偶然西野さんがタクシーで聴いていて、「あいつ蹴とばしてやる!」と激怒したという事件。

西野 はい。ありました。もう9年前ですか? あれ、もうあのタクシーが地獄みたいな空気だったんですよ(笑)。ドライバーに「あ、西野さん」とか言われたあとにその話が出たから、恥ずかしいなと思って。

──単純に気になるのは、あの頃の西野さんはすごい荒ぶってたじゃないですか。何にそんなにイラついてたんですか?

西野 まだ『はねる』とかやってた頃ですよね。いまはけっこう好き勝手やれてるんですよ、こんなこと言いたいとかあんなことやりたいとか。でも、『はねる』は難しくて。チームプレイなんで、一番真ん中でふつうの人をやらなきゃいけないから、勝手なことができなかった。もっとあれ言いたいしこれ言いたいってうのがあって、その抑えつけが強かったんで、それに対するストレスはあったかもしれないですね。ひとりでライブするっていっても『はねる』のことは考えなきゃいけなかったし、嫌われ芸人みたいなことになってしまうと具合が悪いし。

──まだ嫌われキャラとして腹を括るまでもいってない時期で。

西野 はい、そうですね。

ゴールデンに進出してもあせりを感じていた

──『M-1』で結果を出そうとしても出せず、いろんなイライラがあった時期だったとは思うんですよ。

西野 一番溜まってたかもしれないですね。1年目とか2年目って、もちろんおもしろさみたいなことは先輩に負けてるは負けてるんですけど、ただ自分たちの1年目ってどういう状況だったかっていうと、あのときダウンタウンさんみたいな漫才がウケてたんですよ。ダラッと出てきてボソボソッとしゃべって、テンションも上げないで「これがセンスだ」みたいな。それを先輩方がやられてる中で、自分たちは「イェイイェイ!」みたいなことをやってたんですね。とにかくボケ数だけでいくみたいな。おもしろさはもちろん先輩方のほうが上だったんですけど、自分らは自分らで絶対に負けてないな感はあったんですよ。先輩方とはぜんぜん違うことしてたんで。でも、やっぱり時間が経っていろんな芸人さんが漫才のテンションも上げてきて、テンポも上げてきて、気がついたらボケの手数論みたいなことまで語られるようになってきて、ほかの芸人さんも同じ闘い方をするようになったとき、そこで勝てないんですよね。「うわ、負けてた!」と思って。そのときのイライラはすごかったですね、テレビに出てるのとかが恥ずかしくて。『はねるのトびら』もゴールデンでやってるけど、これたぶんおもしろいと思われてないな、みたいな。

──おもしろいと思われてない!

西野 深夜のときはまだちょっとあったかもしれないですけど、ゴールデンに上がってからは、これおもしろいって誰にも思われてないなと思ってて。なんとなくテレビを点けられてるだけで、事実そのときってライブの集客も減ってたんです。どこか一部にも「西野がおもしろいんだ」って言ってくれる人がいたら何か変わったかもしれないですけど、そういう人もいなかった時期かもしれないですね。だから、『はねる』がゴールデン上がったときはとにかく焦ってました。

──それでスターになれると思ったらぜんぜん違ったし。

西野 なれないし(笑)。『はねる』がゴールデンに上がったときの焦りはすごかったですよ。夜11時放送のときぐらいからちょっとヤバいな、みたいなのはあったんですけど、ゴールデンになってからが決定的ですね。ライブの集客が減って、スタッフのファンもいない。一応ゴールデンで出てるから使ってくださるけど、そんな命を懸けて西野を応援するみたいなスタッフもファンもいないという、そこの焦りで。

──そんなときにラジオで悪口を言われたら腹立ちますよね(笑)。

西野 精神的にやられてるときですよ! だから、いまとは状況が違うかもしれないです。一部だけでも支持してくださる人がいたら、「俺はこっちだから」みたいなことが言えたんですけど、それもなかったですね。だから精神衛生上、一番落ち込んでるときで。

炎上するけどアンチは存在しない?

──そこからの紆余曲折はリアルタイムで見てきてるわけですけど、よくここまで来たと正直思いますよ。そもそも最初の頃の炎上騒ぎって、まったく計算もない状態だったじゃないですか。

西野 そうです! いわゆる炎上ですね、

──最近は明らかに狙いすました炎上なんですけど(笑)。

西野 ハハハハハハハ!

──もしくは炎上でもないのに本人だけが騒ぎ立ているタイプの炎上。

西野 ……実はアンチいないんじゃないか説が最近出てきてるんですよ。

──ボクも最近そう思ってます。

西野 ハハハハハハハハ!

──「西野はいけすかないけど嫌いじゃない」って感じになってるんじゃないかと思って。

西野 アンチもしかしたらいないんじゃねえかみたいなことを言われたんですよ、「アンチいるっておまえしか言ってない」みたいな。それはそれでちょっとヤバいんですよね。なんとかしなきゃと思ってるんですけど。

──嫌われ芸人としてきれいに受け身を取りすぎて、意外と好感度が上がっちゃったというか。

西野 『ゴッドタン』がちょっとよくないですね(笑)。でもありがたいですよ、ああいうの。『ゴッドタン』と『アメトーーク!』の好感度低い芸人で口に出して言ってくださったのはデカかったですね。要は「西野の扱い方なんてようわからんぞ」っていうときに加地(倫三)さんとか佐久間(宣行)さんが、「これは嫌われって言っちゃっていい」「好感度が低いって言っちゃっていい」って取説を作ってくださったのはデカいですよね。あのふたつの番組はデカかったです。あれがないと自分の立ち居振る舞いがちょっとわかんなかったですもんね。

──痛いと思われているのが前提の人になれて。

西野 はい。そこからは意外と楽しいですね。あんまり落ち込むこともべつにないですし。たしかにあのときが一番落ち込んでたかもしれないな。

西野亮廣=リック・フレアー説!?

──しかも、西野さんって「吉田豪を蹴とばしてやる!」とか言っておいて、イベントとかで会ったらふつうにフレンドリーだったりするじゃないですか。

西野 ハハハハハハハハ!

──ちゃんとこっちの攻撃も受けてくれるし、すごいやりやすいんですよね。

西野 だからザ・ネット弁慶ですよね(笑)。ネットだと強くなるっていう。そう考えるとダサいんですよ。実際に会っちゃうとヘコヘコしちゃうんですよね。

──アメリカンプロレスの世界にリック・フレアーっていう選手がいるんですけど、それを思わせるような受けっぷりなんですよね。オーバーアクションで髪とかかきむしりながらウロウロ歩いたりとか、イライラの表現の仕方とかがアメリカンプロレスなんですよ。

西野 (手を叩いて)ハハハハハハハハ! なるほど。最近わかってきて、もう工夫するのやめました。ツッコミとかも「やめろ!」「やめてくれ!」しか言わないですね。。たとえツッコミとか得意じゃないし、「やめろ」だけでいいなと思ったんですよね。

──そこを工夫し始めたら山里(亮太)さんとかには勝てないですからね。

西野 はい、そういうのが得意な人がいるじゃないですか。「やめろ」でいいかなって、それはやられてるうちに思いましたね。しかも、まぐれでうまいこと返しちゃうと、そこでやり取りが終わっちゃうんですよね。でも、やられ続けてるとどんどんすごい技をかけてくださるので。たとえば熱いお湯とかをピャッてかけられたときに、ひと言目に「これナントカナントカのナントカナントカじゃねえかよ!」ってきれいにツッコんじゃうと、こいつ熱くないんじゃないかって思われちゃうじゃないですか。だから、これ最初は「熱っ!」でいいと思ったんですよ、そして、「やめろ」でいい。あとは優秀な人がいっぱいいるから、頭をかきむしって「やめろ」だけ言ってたらご飯を食っていけるなって思うようになりましたね。

──いろいろ悩んだ結果。

西野 はい、そこになりました。もうちょっと上手にツッコむヤツになれればよかったですけど、ここは居心地がいいですね。

あえてカッコつけ切った『革命のファンファーレ』

──これだけ悩んでこれだけ苦労してきて、劇団ひとりさんから尻の穴に指を突っ込まれるだけでこれだけ笑いを取れるようになったのって複雑だと思うんですよ。

西野 たしかに。『ゴッドタン』はひどいんですよね。イジり方がいきすぎて工夫がなくなったんですよ、服破るとかケツの穴に指入れるとか。これがいいのか悪いのか、クレームが一切来ないんですよね。

──「かわいそうだ!」みたいなクレームが(笑)。

西野 ふつう来ると思うんですよ、服を破られたりケツの穴に指を突っ込まれたら、ファンの方とか誰かが「あんなのよくない、イジメだ!」ってクレームを入れてもおかしくない。ところが、僕をイジメてもクレームが1件もないんですよね。

──むしろ「ありがとう、よくやってくれた!」ぐらいの(笑)。

西野 そうなんですよね、あれ変なことになってるよな、なんでああなったのかな……。

──それでお互い損してない感じがするからなんでしょうね。

西野 ああ、なるほど。僕も得してるってことがみんなわかってるってことですか。でも、あれ助かりますね。3~4ヶ月にいっぺん『ゴッドタン』に呼び出されて処刑されることが決まってたら、あとはこっちではさんざんっぱらカッコつけたほうが効いてくるなと思って、ためらいもなく迷いもなくまっすぐカッコつけられるんで。そっちのほうがお笑いにもなるし、カッコつけるのを求めてるお客さんにも刺さるし、これはいいなと思って。

──『革命のファンファーレ』の表紙がこれだけキメキメなのも、やり切ったほうが絶対にいいってことですね。

西野 やり切ったほうがいい。こっちのほうが東野(幸治)さんとかにも捕まるしっていう(笑)。ちょっとおちゃらけてたら捕まらないんで、やり切ろうって、そこは東野さんとおぎやはぎさんと劇団ひとりさんを信頼してカッコつけ切るっていう、そういうことになりましたね。ぜんぜんこんな未来は思い描いてなかったんですけど。『はねる』がスタートしたときに描いてたのは、ダウンタウンさんとかナインティナインさんとかウッチャンナンチャンさんとかそっちだったんですけどね。

──いわゆる芸人とは違うジャンルにいきましたもんね。

西野 はいはいはい、ぜんぜん違うところにいっちゃいましたね。

<次回に続く>

プロフィール

西野さん3

芸人

西野亮廣

西野亮廣(にしのあきひろ):1980年、兵庫県出身。1999年に梶原雄太とお笑いコンビ「キングコング」を結成し、『はねるのトびら』などに出演。独演会の開催、イベントのプロデュース、本の執筆など、個人としての活動も盛んに行なっている。2016年に発表した絵本『えんとつ町のプペル』(幻冬舎)は、ネット上での無料公開などの手法が賛否両論を呼びつつ、大ヒットを記録。最新刊『革命のファンファーレ 現代のお金と広告』(幻冬舎)では、そうした西野自身の体験から導き出された成功するためのノウハウが明かされている。

プロフィール

プロインタビュアー

吉田豪

吉田豪(よしだごう):1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズなどインタビュー集を多数手がけ、コラム集『聞き出す力』『続 聞き出す力』も話題に。新刊『吉田豪の“最狂”全女伝説 女子プロレスラー・インタビュー集』が発売中。

(取材・文/吉田豪)

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