大森南朋&鈴木浩介&桐谷健太の3兄弟愛憎映画「ビジランテ」

まいじつ

大森南朋&鈴木浩介&桐谷健太の3兄弟愛憎映画「ビジランテ」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ビジランテ』

配給/東京テアトル テアトル新宿ほかにて全国公開中
監督/入江悠
出演/大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太、菅田俊、篠田麻里子ほか

田舎町に生きるラッパーのほろ苦い日々を描いた『SR サイタマノラッパー』(2009年)とそのシリーズや、今年公開された藤原竜也主演の『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』で知られる入江悠監督の最新作。『サイタマノラッパー』と同じく田舎町(今回は架空の埼玉県渡市)を舞台にした男たちの剥き出しの人間ドラマだ。

地方都市の暴君な父親の元に育った三兄弟。長男(大森南朋)は幼いころ家出し、次男(鈴木浩介)は市議会議員となり、三男(桐谷健太)は地元のデリヘルの雇われ店長となっていた。父の死去に伴い30年ぶりに、ヤバいことに手を染めた風な長男が遺産目当てに戻ってくる…というあたりから、因縁の三兄弟の愛憎が交錯してゆく。外国人集落に対する差別やショッピング・モール建設に潜む利権といった近年の地方特有の問題が絡み、さらには横浜の暴力団までが乗り込み、事態は凄惨な方向に暴走してゆく…。閉鎖的でろくでもない地方都市の事象や、土地や家族から逃げられない兄弟の惨めな姿を、入江監督は容赦なく描いている。

血縁、家族の持つ呪縛が悲劇を誘発

大森が暴力性、鈴木が俗物性、桐谷が屈折性をそれぞれ演じ、同じ兄弟でもこれほど違うことを見せつける。ドストエフスキーやシェークスピアなどの古典を持ち出すまでもなく、“兄弟愛憎ドラマ”に興味は尽きない。血縁、家族の持つ呪縛が悲劇を誘発するのは、古今東西変わることがない。地方都市ならなおさら顕著、と埼玉県深谷市で10代を過ごしたという入江監督は濃厚に思うのだろう。

ちなみに、この映画のロケ地はその深谷市である。

心情的には、父親を嫌いながらも、その地盤を受け継ぎ議員になって、強気な嫁に尻をたたかれる鈴木浩介の悲哀が切ない。この嫁を演じるのが元『AKB48』の篠田麻里子というのも話題だろう。野心満々で、女を武器に世渡りする覚悟アリで、夫より政治家向きみたいな女性像を演じていたのは意外だった。まあ、AKB時代もお姉さん的存在だった、と言われれば納得もするが。

濡れ場に関しては、大森とその情婦(間宮夕貴)とのシーンが激しくエロいのだが、篠田も夫とカー・セックスするシーンがある。ただし、こちらはあっさり終わる(夫が“早打ち”という設定もあるが)ので肩透かし気味。このへんの描写は粘り足りないが、桐谷が焼き肉店でリンチされるシーンや、鈴木の要職就任の挨拶するシーンはじっくり、しつこい。しつこ過ぎてウンザリするほど。作り手の熱い思いが空転するところもあるが、それもまたこの力作の魅力かもしれない。

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