サイバーエージェント「AbemaTVはどこまで観られているのか」を巡る補助線|やまもといちろう

デイリーニュースオンライン

Photo by j0sh(写真はイメージです)
Photo by j0sh(写真はイメージです)

 昨年末、SMAPを脱退しジャニーズ事務所を契約終了した三人が登場したAbemaTVの番組の視聴者数を巡り、広告業界で大きな騒ぎとなりました。AbemaTVをサービスするサイバーエージェントが公表した「7,400万」という視聴数を、ビデオリサーチが「207万」という視聴実数の推測でリリースを出したため、かなり一触即発の事態となりました。

 結局、ビデオリサーチが「調査方法の不備があった」という形でこのリリースを取り下げて、いったんは解決したかに見えたのですが、異論がその後も続出します。

「AbemaTV」の元SMAP出演番組、視聴者数の真相

http://trendy.nikkeibp.co.jp/atcl/pickup/15/1003590/122001509/

7400万対207万、元SMAP出演AbemaTV、リリース取り下げ騒動を読み解く 日経デジタルマーケティング

http://business.nikkeibp.co.jp/atcldmg/15/132287/121900421/

 コピーライターの境治さんもヤフーニュースでこの問題を取り上げ、年を明けたいまも、業界内で問題が収まる気配を魅せません。

AbemaTV「72時間ホンネテレビ」視聴数7400万回と視聴者数500万人強のギャップ(境治) - Y!ニュース

https://news.yahoo.co.jp/byline/sakaiosamu/20171222-00079595/

 そもそも長時間の番組でデバイスごとも繰り返し視聴もブラウザF5(リロード)も1視聴となりかねない「視聴数」でしかサイバーエージェントが発表しないこともさることながら、広告業界からは「AbemaTVに動画広告を出稿しても、公表される視聴数の割には広告効果が安定しない」という理由でさほど評判が芳しくない状況にあるのも気になるところではあります。

 一方で、ネット放送のアクセス回数を厳密に図ることがどれだけの意味があるのかは不明であって、AbemaTVの番組制作の企画力やブランド構築力を評価する声もあり、広告業界ではかねてから言われる「広告効果か、ブランド効果か」という宗教論争が再び巻き起こっているのは興味深い印象です。

 このネタに前後して、abemaTVの赤字額が191億円に上り、そのほとんどが番組企画制作費であることが明らかになっています。ネットで動画を観るというライフスタイル定着のために、サイバーエージェントとしてはかなり攻めているんだなということは分かります。

Cygamesは黒字133億円、AbemaTVは赤字191億円 サイバーエージェント子会社決算まとめ - ITmedia NEWS

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1712/18/news069.html

 しかしながら、地上波各キー局のテレビ番組の企画制作費は、地上波やBS、CSなど一切合切合わせて900億円前後で推移しており、テレビ東京ですら400億円を制作費で使っているのが現状です。

番組制作費を削減し続けるフジに未来はあるのか (3/3) - ITmedia ビジネスオンライン

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1705/24/news026.html

 また、ネット配信大手のネットフリックスは、番組制作費の中でもオリジナル制作に対し、2018年だけで総額7,600億円の資金を拠出すると発表され、日本国内での制作予算は450億円前後ではないかと見られています。

Netflixは2018年に配信コンテンツに7600億円以上の大金を費やす - GIGAZINE

https://gigazine.net/news/20170820-netflix-7billion-2018/

 AmazonやHulu、FODなど、ネット配信での動画コンテンツの拡充はもはやオリジナル優先で顧客の囲い込みのできる企画の奪い合いになってきているのが現状です。その点で、AbemaTVらしさをどう構築しようとするのかは見ものですが、制作費を先行投資しても売り上げをAbemaTVとして回収できないようだと息切れしたところがゲームの終わりになりかねません。

 その点でも、AbemaTVの年末年始はさすがに重量級の地上波の正月番組に押されてさほどの話題にはなれず、本当に激戦を勝ち抜くのであれば「7,400万回視聴された」元SMAPの番組のようなキラーが毎週毎月のように打ち出される必要があります。

 まだまだ勝負を張り続ける覚悟であることには変わりないでしょうが、いわゆる競馬必勝法のような「将来の高倍率引き当てを狙って穴馬を買い続ける」なら、もう少しバケツに日銭が貯まるような仕掛けも併せて設けておかないと勿体ないような気がします。

 AbemaTVはナイスチャレンジである分、他の実力のある合理的な業者との正面からの戦いになっていることも加味して戦略を練る必要があるとも思いますので、突然死しないよう固唾を飲んで見守りたいと思います。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

文・やまもといちろう

※慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数。

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