出会い系サイト強盗殺傷事件を描くエロチックな実録悪女映画 (1/2ページ)

まいじつ

出会い系サイト強盗殺傷事件を描くエロチックな実録悪女映画

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『愛の病』

配給/AMGエンタテインメント シネマート新宿ほかにて全国公開中
監督/吉田浩太
出演/瀬戸さおり、岡山天音、佐々木心音、山田真歩、藤田朋子ほか

“実録犯罪映画”に興味は尽きない。かつて新聞の社会面、三面記事を揺るがしたおぞましい犯罪・事件が、映画というフィルターを通して再現される。まさに映画館という暗闇で鑑賞するに相応しい題材だと思う。暮れに起こった富岡八幡宮“女性宮司”殺人事件などはいずれ映画化されてもおかしくはなさそうだし。

往時でいえば、石井輝男監督の『明治・大正・昭和 猟奇女犯罪史』(1969年)とか、今村昌平監督の『復讐するは我にあり』(1979年)などをゾクゾクしながら観た記憶がある。近年では東電OL殺害事件を描いた『恋の罪』(2011年)や茨城連続殺人事件に迫った『凶悪』(2013年)などがあり、これらの系譜の延長線上として和歌山出会い系強盗殺傷事件を取り上げたのがこの新作だ。

“犯罪の陰に女あり”ともいわれるが、この映画では陰どころか、女が前面に登場する。出会い系サイトで知り合った男から金を巻き上げるため「わたしは組長の娘、組長に月20万円払えば結婚を認めてくれる」と持ち掛け、男の全財産をむしり取る。味をしめた女は今度は強盗殺人を仕向け、ひとりを殺害、ひとりに重傷を負わせた…こんな女の真っ赤なウソにだまされる男も男だと思うが、実際の事件がそうなのだから仕方がない。確かに、カモにされやすい男はいるし。

男も女も心の闇を増幅させて惨劇を引き起こす

この映画の最大の特徴は前記の映画の多くが、事件そのものを克明に描いているのに対して、むしろ事件に至るまでのヒロインを中心としたバックグラウンドに照準を当てていること。地方都市の退屈で鬱屈した日常、それを突破したいがために男も女も心の闇を増幅させ、惨劇を引き起こす。人はいかにして、もう引き返せない犯罪への迷宮に迷い込むのか、その魔の刻とはいつ? という命題に斬り込んでいる。『女の穴』(2014年)などインディーズ系作品で、エロチックな題材を得意にしている吉田監督ならでは。

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