不安の中で自由に笑う表参道の交差点 #東京と働く。 (2/2ページ)

マイナビウーマン

最寄りの表参道駅と明治神宮前駅から出ている全ての終電時刻はだいたい24時半すぎ。24時15分を過ぎたあたりからモントークカフェからはどんどん女子会にキリをつけた人たちが引いていく。代わりにヒゲをはやした男性と丸いメガネの女性、といった風貌のどこかの出版社かアパレルに勤めているんだろうと思われる人たちが少しずつ集まってくる。東京の人たちだ。

私たちは、この街から帰らなくていいんだ。 そう思いながら飲むもう一杯のコーヒーはなんて華やかな味がするんだろう。無愛想な店員が置いていった茶色い角砂糖をゆっくりコーヒーの表面に近づけて、じわっとコーヒーが含まれていくのを見たりする、時間が無限にあるみたいな贅沢さ。無機質な仕事の合間に生まれたエアポケットみたいな終電過ぎのモントークカフェが好きなんだ。さっきからこいつら何時間いるんだよって思われてるだろうけど、そんなのはどうでもいいんだよ。

胃が荒れるほどコーヒーを飲みまくって、いよいよ帰宅する午前2時。タクシーなんてどこから拾ってもいいのに、ちょっと歩きたくなる誰もいない表参道の交差点。何時に帰ってもいいし、これから手をあげて拾うタクシーに払うお金も自分のお財布から出せる。帰って飛び込むベッドも真っ白なシーツも全部自分で買ったもの。

働くことは楽じゃない。 フリーランスなら明日お金が入ってくるかどうかもわからないし、会社勤めなら蛍光灯ピカピカのオフィスにいくのはハゲそうなほどめんどくさい。だけど、終電逃したあと最初に頼むコーヒー、このタクシーをとめて行き先を告げるその瞬間、いくらかかりますかなんて聞かないでバックシートで目をとじるその瞬間、タバコ臭くなった服のまま倒れこむ思い通りの色のシーツ、バカ高いこのハイヒール、その全部を自分の労働でまかなってること。

大切にしているいろんなものをぽろぽろこぼしながら働いて稼いできた一万円札を、バカ高いコーヒー代にヒリヒリしながら気前よく出すのが東京なんだ。

そりゃぁもう不安だから笑うしかない。いつもより派手に、いつもより自由そうに。深夜2時の表参道の交差点。あのとき憧れた東京にいる大人の笑顔を、きっと今、私たちはしているんだ。

(半蔵もん子)

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