ヤミ民泊に白タクなど事件多発のシェアリングエコノミーがもたらす社会変革|文◎やまもといちろう

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ヤミ民泊に白タクなど事件多発のシェアリングエコノミーがもたらす社会変革(写真はイメージです)
ヤミ民泊に白タクなど事件多発のシェアリングエコノミーがもたらす社会変革(写真はイメージです)

 起きるべくして起きた痛ましい事件がありました。

■大阪・女性監禁:ヤミ民泊 名簿不要 不明女性は英語堪能 - 毎日新聞 https://mainichi.jp/articles/20180225/k00/00m/040/174000c

 確かにシェアリングエコノミーの最右翼として、使われていない部屋などを宿泊希望者に貸し出す民泊は、いわゆる民泊新法も含めて法制化されたわけなんですが、これはあくまで民泊をあっせんする業者を登録するものにとどまっており、肝心の「どこに誰が民泊として泊まっているのか」は分からないため、今回のような事件に対してはなかなか歯止めにはなりません。

■民泊新法が閣議決定、Airbnbなどの民泊サービスは登録制に | TechCrunch Japan http://jp.techcrunch.com/2017/03/10/minpaku-new-law/

■解禁新法に規制上乗せ…京都市の民泊条例成立 住居専用地域、営業は閑散期の2カ月限定 - 産経ニュース http://www.sankei.com/west/news/180223/wst1802230105-n1.html

 とりわけ問題になるのは民泊前提で管理規約が組まれているわけではないマンションなどの集合住宅であり、管理組合が民泊禁止を取り決め、管理費などで対応するゲストルームや共有部分を民泊利用者が使用することに対して「この人たちは本当に民泊の人なのか」が尋ねるまで分からない、というのが難点になっています。

 実際、私の住むマンションでも外国語を話す見慣れないスーツケース集団がマンションロビーに屯していて、尋ねると住民ではないと分かることは一再ならずあります。しかし、多くの民泊サイトではどのマンションの部屋が貸し出しされているのか登録するまで分からないために、自分の住むマンションの部屋が他の住民の収益のために貸し出され、違法民泊の拠点にされている可能性を検証することは不可能です。

 その結果として、宿泊者の確認はこれらの登録されたサービス業者経由でしか分からず、適法性のある民泊もそうでないものもごっちゃになっているのが現状であるため、不明な宿泊者は名簿記載されていないという一点で治安上の問題を起こすのも当然です。

 もちろん、殺人事件まで重篤な問題が起きると警察が介入するわけですが、外国人旅行者など訪日客が増えると、外国で日本の物件が民泊として貸し出される事例が後を絶ちません。日本語や英語しかできない日本人が海外のサービスを経由して契約される民泊を割り出すのはほぼ不可能であるため、やはり民泊に限らず日本に訪れる外国人がどこに宿泊する予定であるのかを確認するような手続きをどこかに入れておかないと、この手の話が野放しになる恐れはあるでしょう。

 さらには、昨今は白タク問題が増えているのが現状です。先日摘発しましたが、タクシー行政において認可されていない車両が営業として金を取り客を送迎することは禁じられているのですが、白タクは文字通り横行していると見られ、イタチごっこであり収拾がつきません。

■「中国式白タク」摘発、訪日客向けに運行容疑 在日中国人4人逮捕 大阪府警 - 産経ニュース http://www.sankei.com/west/news/171031/wst1710310070-n1.html

 これも、海外の白タク配車業者がアプリなどを経由してモグリ営業している事案であるため、国内の業者だけ監視しても見つかるはずがありません。

 きれいごとを言えば、日本の観光業界の手が行き届かず、中国語ほか諸外国の言葉に対応した旅館、ホテルやタクシーが気軽に呼べないため、何度も日本に来た経験のある外国人は日本に住む外国人にお金を払って移動や宿泊を手配することがとても一般的になっている、とも言えます。

 ただし、日本の場合は互恵的な制度や業界秩序を守る前提で組まれている制度や行政が行き届いています。日本の保険制度にタダ乗りして安い値段で日本の高度な医療を受ける医療ツアーが流行するのも、構造としては同じです。

■中国人が日本の医療にタダ乗り!高額のがん治療で | DOL特別レポート | ダイヤモンド・オンライン http://diamond.jp/articles/-/129137

 一番の問題は、日本社会が日本人や外国人をどのくらい行動把握させるのが望ましいか、あまり統一的な議論や見解のないまま、ヤミ民泊が増えれば対応し、白タクが問題になれば対策を打つといった、場当たり的な政策になりやすいという点です。外国人による日本の土地売買も医療タダ乗りも、問題が起きて一般化して事件まで起こしてどうしようもなくなってから対応する、というのでは、真面目に保険料を払い生活している日本人ほど損をすることになるのです。

 人口減少して働き手が少なくなったから移民を増やそうという話も含め、この国、社会の向かうべき先をもう少しきちんと議論できる仕組みがあるといいのですが。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

文・やまもといちろう

※慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数。

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