女性は土俵から降りて…相撲よりも”相撲協会”が最高の老害観察エンターテイメントに|文◎やまもといちろう

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女性は土俵から降りて…相撲よりも”相撲協会”が最高の老害観察エンターテイメントに|文◎やまもといちろう(写真はイメージです)
女性は土俵から降りて…相撲よりも”相撲協会”が最高の老害観察エンターテイメントに|文◎やまもといちろう(写真はイメージです)

 相変わらずいろんなことで揉めている相撲協会ですが、ネットでもリアルでも話題沸騰になっているのが「救急処置をしようと土俵に上がった女性たちに『女性は土俵に上がらないでください』と場内アナウンスされ、女性たちが土俵から降りた後で大量の塩が撒かれ、相撲協会の八角理事長が謝罪する」というエクストリーム感です。

救命女性が降りた土俵に大量の塩まく 複数の観客が目撃:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASL453VCJL45PLZB006.html

 もはや、相撲という伝統ある国技を尊敬して観覧するという行動様式よりも、角界や相撲協会が次々とやらかす問題に右往左往しているさまを娯楽として受け止めるという流れになってしまい、心を痛めるのであります。もう、いろんなことが次々に起き過ぎて、何が何だか分かりません。ゴルフクラブやアイアンで若い衆をぶん殴っていた春日野親方が「自覚を持って、言動を注意してもらいたい」と訓辞を垂れていたり、立場上しょうがないのでしょうけれどももう少しやりようがあったのではないかと思わずにいられないような話がてんこ盛りです。

 まあ、もともと相撲は祭事であって、観覧さえも男性のみの世界であったものが女性も国技館に入れるようになったのだが土俵は依然として神聖なものとして女子禁制なのだとか、余計な知恵が相撲協会の問題が起きるたびに仕入れられて、これはこれで面白いわけでありますが。

 この手の「日本の伝統」が現代社会に移り変わっていく中で変容した常識とぶつかるというのは日本社会のそこら中にあるわけでして、以前であればオイコラ上等の体育会系組織が業績不振に見舞われて早期退職制度を作ってみたらみんな若い人が辞めてしまって年寄りだけの会社になってしまったとか、笑えるようで笑えない話ばかりが存在するのであります。

 そういう社会の変化を捉えてさっと変わるのがマネジメントだと言いたいところなのですが、社会の風を敏感に感じて態度を変えることができるのはむしろフリーランスなど個人事業主ばかりで、いまやベンチャー企業など新興企業なのに大企業病みたいになっている企業さえも沢山あるのが現状です。

 自分の行動や態度を改めたり、企業の社風をもう少し開放的にしようと思ったときに見比べるのがやはり相撲協会のような旧態依然とした組織のようであってはならないという他山の石であります。また、東芝や財務省といった、一昔前だったら文字通り大変な金看板だった組織の失墜を見ていると、ああ調子に乗るのはやめよう、もっと脇を締めて、部下に優しく、良い社会人であろうという立ち居振る舞いを考えずにはいられません。パワハラなどもってのほか、賃金や残業代はきちんと支払い、取引先には腰低く丁寧に… と、思い至る反省点はたくさんあります。

 相撲協会だって、叩かれよう、批判されようと思って滅茶苦茶なことを続けてきたわけではなく、いままで自分たちが育ってきた業界環境にあまり疑問を持たずに「やられて育ったから、やっているだけ」なのかもしれません。それが、時代にそぐわなくなったときにどう対処すればよいのか、自分で考える癖がなかなかついていないので、女性が倒れた市長を救急介護しているところに「土俵に上がらないでください」とアナウンスしたり、女性が土俵から降りたら塩を撒いたりするのでしょう。人命救助とお前らの伝統とのどっちが大事なのだという基本的な問題もさることながら、ただでさえ太った男性同士がぶつかり合い、それを珍重する中高年や老人の観客が多い地方巡業なのだから、救護の医師の現場での派遣を取り付けておくとか、心停止して危険な状態になった人のためのAEDを近くに準備しておくとかやるべきことはたくさんあったと思うんですよね。

 それって、社会と伝統の折り合い方として相撲こそが率先して取り組んでいかなければならないことだったのでしょうが、取り組んでいることが「弟子をゴルフクラブで殴ったり、宴会でビール瓶で殴ったりしないようにする」というレベルから始まり、「問題が起きたときはまず組織内で揉むので警察には通報しないようにしよう」などの話が出てしまうとなると、これはもうエンターテイメントだと思うんですよ、角界・相撲周辺という界隈全体が。

 ネットでも「相撲はデブが全力でぶつかり合う世界なんだから、脳みそがおかしくなっても仕方がない」という中傷も乱舞していますが、我が国の国技であり、実力と人格を兼ね備えた人物を輩出する組織としてきちんと出直してほしいと願っています。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

文・やまもといちろう

※慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数。

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