国際社会を蹂躙する中国「シャープパワー」の脅威

まいじつ

(C)breakermaximus / PIXTA(ピクスタ)
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自らの方針に反する海外企業や国家を屈服させる、中国のやり方に対する懸念が広がっている。

2017年11月に、アメリカの研究機関『全米民主主義基金』(NED)という組織に所属するふたりの研究者が、中国とロシアという独裁国家の戦略を“シャープパワー”と名付けた論文で発表した。

これを欧米のメディアが取り上げるようになり、シャープパワーという言葉は相手国の社会制度や文化伝統などを鋭利な、すなわちシャープな刃物で切り裂くように分断し、自国に有利な状態を作る戦略として注目されるようになった。日本でも昨年末、日本経済新聞が『中国のシャープパワーに対抗せよ』というタイトルでイギリス紙エコノミストの翻訳記事を掲載し、産経新聞上海支局長も今年2月6日に『中国のシャープパワー』という論説を書いたことから日本でも認知度が広まっている。

そんななか、中国マネーと移民が目立ってきたオーストラリアで身の毛もよだつような事件が起きた。

「中国政府が台湾やチベットの地位について、“中国であること”を海外企業にも順守させる方針を強めるなか、海外に展開している中国系住民のあいだで中国政府に呼応する“チャイナ・ファースト”の動きが顕著になっています。オーストラリアののシドニーにある中華料理店の中国人オーナーが、台湾を中国の一部とする『ひとつの中国』の原則に反発した台湾人ウエートレスを解雇したことが発覚しました。このように中国人ナショナリストは、進んで自国の政府方針を押し付ける役割を担い、反対する者を物理的、心理的に追い込んでいるのです」(豪州在住日本人会社員)

ノルウェーに向けられた「シャープパワー」

中国当局はウェブサイトなどで台湾を“国”と表した外資系企業を調査し、次々とクレームをつけている。アメリカのホテル大手マリオット・インターナショナルなど、世界的な企業も巨大な市場を背景にした中国政府の圧力に押され、謝罪を表明したほどだ。

2010年のノーベル平和賞は中国の人権運動の活動家で、当時獄中にあった劉暁波(リウ・シャオポー)氏に贈られ、ノルウェーのノーベル委員会は国家政権転覆扇動罪で収監されていた劉氏の釈放を中国に求めた。ところがこのとき、ノルウェーに向けてシャープパワーが行使されたのだ。

「中国政府はノルウェーから輸入していた養殖サーモンの輸入制限をするなど、経済制裁を実施したのです。これに慌てたノルウェーのエルナ・ソルベルグ首相は、2017年4月に中国を訪問して習近平国家主席と面会し『今後、中国の核となる問題については批判しない』という声明に署名して、ようやく関係が修復されたのです」(日本在住中国人ジャーナリスト)

日本の隣には怖い“切り裂きジャック”が棲んでいるのだ。

【画像】

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