【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第7話 (4/6ページ)
西国に向かう途中、義経がかつて壇ノ浦で滅ぼした平知盛と一族の怨霊が義経への恨みを晴らすべくヒュードロドロと出てきちまったてえわけだ」
画像:国芳「平知盛亡霊と弁慶(部分)」ボストン美術館蔵
「この怨霊がべらぼうに強くてよ!刀で斬っても斬れねえ、人の技が到底効かねえんだ。ホラ、亀井重清の太刀が怨霊に掴まれちまった」
画像:国芳「平知盛亡霊と弁慶(部分)」ボストン美術館蔵
「それでどうなったの義経は」
みつは恐ろしそうに黒目を潤ませて訊いた。
「霊は是が非でも義経を海に沈めようとどんどん舟に近づいてくる。義経はテメエで霊をやっつけようってんで、太刀を抜こうとした。家来たちは義経に刀を抜かせめえとザッと前に躍り出る!ここぞとばかりに弁慶が数珠をザラザラ揉んで五大尊明王に祈る!するってえと、不思議な話だが弁慶の祈りが通じてやがて亡霊たちはスウーッと消えてっちまった。