NTTコム・池田悠希、長い手でつかむかジャパンの座。

ラグビーリパブリック

 池田悠希は、炎天下のグラウンドで80分間フル出場。ラストワンプレーで持ち味も活かした。

 6月30日、千葉・アークス浦安パーク。関連企業の集まるラグビーのNTT大会があった。入り口付近には出店が並び、2つあるグラウンドのうちクラブハウスから見て奥側では子どもたちが遊ぶ。

 手前側のグラウンドで組まれた試合のうち最後の一戦では、国内トップリーグで上位を目指すNTTコミュニケーションズが同リーグ再昇格を目指すNTTドコモを49-29で制した。

 勝利チームのアウトサイドCTBには池田が入り、チームの看板たるワイド攻撃を機能させた。8月開幕の国内トップリーグでも存在感を示し、日本代表入りへの道筋を描きたい。

「トップリーグでもスタートで出たいですし、そのあとNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド=代表予備軍の強化機関)、サンウルブズ(スーパーラグビーに日本から参戦するクラブ)へも呼ばれたい」

 昨季の公式データで身長184センチ、体重98キロとサイズに恵まれ、手足が長い。防御を引き付けては周辺のランナーへパスをつなぐなど、グラウンドの右中間、左中間でのチャンスメイクを得意とする。

 幼少期は高崎ラグビークラブ、大和ラグビースクールで楕円球を追うかたわら、バスケットボールも楽しんだ。持ち味はバスケットで培ったようにも映るが、当の本人はこう話したことがある。

「僕自身、バスケットは意識していないですけど、そういうふうに見てもらえます。自分では気づいてないだけで、そうなのかもしれないです」

 高校時代を過ごした大阪では、ラグビー部が強い東海大仰星高に入学。バスケット部の門を叩くことも検討したが、「皆の雰囲気、勝ちたいという思いを感じて、ラグビー部に入りました」。東海大入り後は2年時からレギュラーとなり、NTTコム入りを勝ち取るに至った。

「大学の時よりもコンタクトが激しく、試合展開もスピーディー。練習、試合を通して対応していけるようにしたいです」

 

 NTTドコモ戦では、向こうの防御方法に対応して動きを工夫した。

 この日は自陣から左右へ大きく振るNTTコムに対し、NTTドコモは大外の防御が鋭く飛び出しインターセプトを狙っていた。もっとも、そのエリアで球を回す池田は「前半でそういうの(NTTドコモの動き)を感じたところがあった。(接点から)ボールが出る前に外のディフェンスを確認しながらやっていました」という。

 14-7とリードして迎えた前半17分、自陣22メートルエリア左中間でパスを受け取ると、さらに左大外へ球を回すそぶりを見せる。そのままラン。

 インターセプトを試みる防御をかわし、スルスルと前進する。改めて左へパスをつなぎ、WTBの石井魅のトライを演出した。

 以後もエリアを問わず攻め続けるなか、「ボールを触れる回数が多い。パスミスがあると、チームとしてうまく展開できないことになる。精度を上げていきたい」。収穫と課題を感じながら、戦いを優位に運ぶ。ちなみに試合前、首脳陣にはこう発破をかけられていたという。

「自分がこれと判断したことは、思い切りやれ」

 そして、ほぼ勝負を決めていた後半ロスタイム。敵陣中盤右中間から右へ移動しながらパスを受け取ると、防御網の亀裂を突き破ってゴール前へ抜け出す。最後の追い手を引き付け、WTBの鶴谷知憲のフィニッシュを促した。

 池田の目指す日本代表のアウトサイドCTBには、海外出身者が並んできた。2015年のワールドカップ・イングランド大会ではニュージーランドのマレ・サウが4戦中3戦で先発。今年6月のテストマッチ3連戦では、ウィリアム・トゥポウ、ラファエレ ティモシーがその座についた。

 今後も骨格や身体能力に優れた選手の台頭が予想されるが、池田は「自分も大きい方だと思う」。海外勢への争いにもひるまない。

「外国人、日本人というものは関係なくやっていきたいです」

 トップリーグで活躍し、国際舞台への挑戦権を得たい。

(文:向 風見也)
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