男女が性転換し成長する異色の王朝文学「とりかへばや物語」にはさらに古い原典があった! (2/2ページ)
「無名草子」(校注・訳:樋口芳麻呂「新編日本古典文学全集」/小学館より)
女君はすばらしいと評しつつ、「もとどりゆるがして子生みたる」つまり、女君が男姿で髪を男のように結ったまま子どもを出産するなんて、と酷評。「月ごとの病」、月経の描写もかなり汚らしかったようです。
そのほか、女君が一度死んだのに生き返るようなシーンもあったらしく、それが大げさだとも言っています。
読者には評判が悪かったらしい「古とりかへばや」の評については、冒頭から
また、「『とりかへばや』こそは、続きもわろく、もの恐ろしく、おびたたしき気したるもののさま……(後略)」
「無名草子」(校注・訳:樋口芳麻呂「新編日本古典文学全集」/小学館より)
と「続き具合が悪くて内容も恐ろしく、大げさな感じがする」と評価しています。その後に「歌がいい」「四の君(女君の妻)がいい」などほめる要素もありますが、手放しに傑作、とはいかなかったようです。
「今とりかへばや(現存本)」については「もとにまさりはべるさまよ」と、原作よりも優れた作品と評価されています。原作「古とりかへばや」は大げさで現実的ではない要素が多く酷評されていましたが、「今とりかへばや」はそういうところがなく自然に描かれていると評価されています。
古典作品が写本を含め散佚してしまうにはさまざまな要因が考えられますが、改作本である現存本が今の時代まで伝わっているのは、読者にどう受け入れられたかも関わっているのかもしれません。
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan