武士の肝試し:幽霊なんか怖くない?頼光四天王「平季武」の肝試しエピソード(上) (4/4ページ)

Japaaan

朝(つとめて)行テ可見(みるべ)シ」

そして早々に出発しましたが、先ほど口論した者の中に

季武がちゃんと川を渡れるか(どうせ腰を抜かして逃げ帰ってくるだろうが)見てやろう

原文:季武ガ河ヲ渡ラム一定(いちじょう)ヲ見ム……

と、若い武士たちが三人ばかり、季武を尾行して川までやってきて、ススキの草むらから様子をうかがう事にしました。

さて、彼らがどんな光景を目にしたのか、『今昔物語集』にはその様子が活き活きと描写されています。

九月下旬の月もない真っ暗闇の中、季武は川をざぶり、ざぶりと渡っていき、早々に向こう岸へ着くと、濡れた行縢(むかばき。下半身を保護する腰巻)の水を払うと矢を突き立てて戻ってきた。すると、川途中に赤子を抱いた女が現れて「この子を抱きなさい、抱きなさい」と言ってきた。その赤子は「いがいが」と泣き、辺りに生臭い風が吹き渡る……
※原文略。
(いがいが、とは泣き声の擬音。現代なら「おぎゃあおぎゃあ」でしょうか)

出現した「産女」の幽霊、そして季武は?

鳥山石燕『画図百鬼夜行』より、姑獲鳥(うぶめ)。

生臭い風が吹くのは、幽霊や妖怪が出現する時のお約束……この女こそ、噂の「産女」に違いありません。

ススキの草むらから様子をうかがっていた三人の若者たちは、

原文:頭毛(かしらのけ)太リテ怖(おそろ)シキ事無限(かぎりな)シ。何況(いかにいわん)や、渡ラム人(=季武)ヲ思フニ、我ガ身乍(なが)ラモ半(なから)ハ死ヌル心地ス

と、もう他人事ながら髪の毛が太る≒震え上がるほどに恐ろしく、生きた心地のしない様子。

さて、産女に出くわした季武はどうなってしまうのでしょうか。

その続きは、また次回に。

※参考文献:森正人 校注『新日本古典文学大系37 今昔物語集 五』岩波書店、1996年1月30日 第一刷

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