腸と脳をつなぐミッシングリンクを発見か?腸に神経伝達物質の存在が示唆される(米研究)

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腸と脳をつなぐミッシングリンクを発見か?腸に神経伝達物質の存在が示唆される(米研究)
腸と脳をつなぐミッシングリンクを発見か?腸に神経伝達物質の存在が示唆される(米研究)


 マウスを使った研究によって、腸と脳との関係についての理解が大きく進展したかもしれない。

 大切な用事がある直前にお腹が痛くなったり、ごちそうを食べた後でぼうっとしたことがあるなら、きっとあなたも腸と脳に何らかのつながりがあることをご存知だろう。

 実際に科学者らは、過剰な食欲や不振、肥満、関節炎、うつ病などのさまざまな症状が腸からまず始まっているのではと疑っている(該当記事)。

 しかし、この”第二の脳”と呼ばれる腸が、脳にどのようにしてメッセージを送っているのか明らかではなかった。

・脳と腸をつなぐチャンネル解明への道

 昔は血流の中のホルモンが腸と脳の間接的なチャンネルではないかと推測されていた。だが最近の研究は、ホルモンによる伝達よりももっと直接的で迅速な伝達経路がある可能性を示唆している。

 脳は、皮膚や筋肉の下に張り巡らされている長い神経繊維を伝わる電気信号によって五感からの情報を受け取る。

 これらの信号が伝達される速度は非常に速い。そのために、家のドアを開けた瞬間に、キッチンから漂ってきた美味しそうな匂いに気がつくといったことができる。

 だが、生存に不可欠な空腹を感じる役割を担うことを考えれば、腸は五感に匹敵する重要な感覚器官と言えるというのに、これまで専門家はその信号は複数の段階を経て、ゆっくりと間接的に送られるのだと推測してきた。

 つまり食事を済ませてから数分~数時間かけて腸の中の栄養がホルモンの放出を促し、それが血中に入り、最終的に脳に知らせるというプロセスだ。

 この説は部分的には正しい。たとえば、食事に含まれているトリプトファンは、眠気を誘う脳内化学物質セロトニンに変化することで悪名高い。


・腸細胞は神経回路を利用している可能性

 しかしアメリカ・デューク大学のディエゴ・ボオルケス氏らは、腸内に並ぶ感覚細胞が舌や鼻にあるものと同じような性質を持っていることに気がつき、もっと速い伝達経路があるのではないかと考えていた。

 自身のランドマーク的研究となる2015年に『Journal of Clinical Investigation』で発表された論文では、腸細胞にはシナプス(神経の末梢)が存在し、ある種の神経回路を利用していることを示唆している。

 今回の彼らの研究では、その回路のマッピングが試みられた。

 まず緑の蛍光色を付加した狂犬病ウイルスをマウスの胃に入れ、腸から脳幹までたどり着く経路を調べた。するとウイルスは迷走神経を経由していることが判明。これが脳へいたる直接の回路だったのである。

 次にマウスの腸内の感覚細胞を迷走神経と一緒に培養して、腸・脳間神経回路を再現。すると迷走神経は腸細胞に結びつき、発火して信号を生み出すようになることが確認された。

 さらにそこに糖を入れると、発火速度が上昇した。糖からの情報が伝達された速さは、驚いたことに、100ミリ秒にも満たなかった――つまり瞬きよりも速いのだ。

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・神経伝達物質が関与

 このことは、味や匂いなどの感覚を伝えるグルタミン酸塩のような神経伝達物質が関与している可能性を示唆している。

 それを裏付けるかのように、感覚腸細胞のグルタミン酸塩の放出を阻害すると、信号は送られなくなった。

 ボオルケス氏によれば、これは新しい感覚の基礎になる発見だという。脳がお腹いっぱいであることを知る仕組みであるとともに、第六感としての直感(英語で”腸の感覚(gut feeling)”という)が確かに存在することの裏付けにもなるそうだ。

 本研究は『Science』に掲載された。
References:futurity/ written by hiroching / edited by parumo
追記(2018/9/26): タイトルならびに本文の一部を修正して再送します
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